Paper6. Combustion Gas Analysis of Ethylene-
tetrafluoroethylene Copolymer
玉置明宏*・田邉紀子**・米森重明**
Akihiro Tamaoki, Noriko Tanabe and Sigeaki Yonemori
 Fluoro - resins have been investigated and widely used in industry based on their
unique characteristics. However, the study on the gas generated from fluoro - resin in
exposure to high temperature or combustion is rarely reported. In this study, the
combustion gas analysis is performed for ethylene - tetrafluoroethylene copolymer on the basis of JIS K7217 (analytical method of plastic combustion gas). With some
modification in the generation and trap of hydrogen fluoride, and analytical technique
for organic components, we have succeeded to develop the method of combustion gas
analysis for fluoro - resins.

*中央研究所(現京浜工場環境安全保安室)**中央研究所
 

目次
  1. 緒 言
  2. 実 験
  3. 結 果
  4. 結 語

 
1.緒 言
1.1 背 景 フッ素樹脂はその優れた特性によって、近年各種 工業用品のほか家庭用品に至るまで極めて広範囲に 使用されてきている。しかし、フッ素樹脂は高温で の加工時や燃焼時には、フッ化水素のような腐食性 の強いガスが発生したり、炭化水素系の樹脂とは異 なる有機ガスが発生する可能性があり、これらを分 析することは安全性の確保や環境汚染防止の点から 重要である。
 一方、高分子化合物の高温時の発生ガス分析法と しては、不活性ガス雰囲気での熱分解装置による手 法が一般的であるが、この手法では、酸素下での分 解でないため、必ずしも燃焼時や成型加工時の熱分 解を再現しているとは言えない。
 著者らは既に、雰囲気ガスを任意に変えられるよ うに市販装置を改造したサーマルデソープション法 を用い、空気雰囲気でのフッ素樹脂からの加熱発生 ガスの分析を報告してきた(1 )。しかし、フッ素樹脂 の燃焼時の発生ガス、およびその分析法はほとんど 知られていない。そこで、最も一般的なプラスチッ ク燃焼ガスの分析方法であるJIS K 7217 に準拠した手 法で、フッ素樹脂フィルムのうち、炭化フッ素部分 と炭化水素部分を併せ持つエチレン−テトラフルオロエチレン樹脂を対象として、燃焼ガス分析改良して分析法を確立し、燃焼ガスの分析を行ったので報告する。
 
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2.実 験
2・1. 試 料
 フッ素樹脂フィルム(商品名アフレックスフィル ム厚み50 μm :エチレン−テトラフロロエチレン (以下ETFE と略)共重合体(旭硝子(株))を約5mm 角に切断し、所定量を秤量した。試料中のフッ 素の含有量は炭酸カリウム加熱分解法(2)によるフッ素の定量から61.8wt%である。

2.2 装置と方法
 燃焼試験装置はJIS K 7217 に基づく、プラスチッ ク燃焼試験器((株)杉山元医理器)を用いた。試験 方法も上記JIS 法に準拠したものとし、支燃ガスはN2/O2 =79 /21 (vol%)の標準ガスを用いた。水溶性ガスであるフッ化水素の分析は、吸収液に0.1N NaOH 水溶液を用い、吸収管として装置付属の吸収 管以外に、市販の250ml 容積の吸収管(ウォルター式、市瀬式)を組み合わせて使用した。配管は、燃 焼管出口から最初の吸収管までは装置付属のテフロ ンチューブを、各吸収管の接続にはフッ素ゴムチューブ(ノートン(株)製フルランチューブF - 5500 - A )を 用いた。吸収液は吸収管ごとに、あるいは全部を合 わせて中和後、定容して、イオン強度調整用緩衝液 を加えた後に、フッ化物イオン選択性電極法により定量した(2 )
 有機ガスは、酸性ガスやススが捕集袋に混入する のを防ぐため、装置付属の円筒濾紙フィルターと蒸 留水を満たした吸収管を通した後、容量5リットル のテドラーバック(ジーエルサイエンス(株))に捕 集した。捕集したガスは、吸着剤(Tenax GR (ジーエルサイエンス(株))とCarbosieve G (シグマアルドリッチジャパン(株))を6 :4 の割合で2 層に充 填したもの)に、テドラーバック内のガスを100ml 通して有機成分を吸着させ、ヘリウムパージ後、サーマルデソープション(ATD −400 ((株)パーキ ンエルマージャパン)装置で脱離・再トラップ (濃縮)・再脱離したガスをガスクロマトグラフ(HP −5970A (Agilent ))および質量選択性検出器 (HP −5970B (Agilent ))で分析した。
 円筒濾紙フィルターに捕集したススは、酸素燃焼フラスコ法で燃焼し、燃焼ガスを水に吸収させて、フッ化物イオンをフッ素イオン電極法で分析した。Fig.1 にプラスチック燃焼試験装置概略図を示す。
 
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3. 結 果
3.1 分析法の検討
 まず、JIS 法の燃焼試験条件での測定を行った。そ の結果をTable1 のNo1 に示す。本試料の場合、燃 焼時の脱フッ化水素反応によるフッ化水素の発生以 外に、フッ化カルボニル(COF2)も発生すると考え られる。しかし、このフッ化カルボニルは水分(燃 焼時にも発生する)とすぐに反応してフッ化水素と なるため、フッ化カルボニル自体として検出することは困難である。
 このJIS 法の分解条件ではフッ化水素の回収率は 45%であった。ここで言う回収率とは、炭酸カプセ ル加熱分解法(2) により定量されたフッ素量を100%と した時の重量%である。同一条件で塩化ビニルホモ ポリマー(以下PVC と略)を測定してみると塩化水素の回収率は73%(理論量:581mg/g に対し、発生 量は427mg/g )で文献値(3 ) ともよく一致することか ら、測定操作等に問題はないことを確認した。
 一方、燃焼試験器の観察窓からの観察を通じて、 本試料の場合には、750 ℃の燃焼炉内でもすぐには 分解せず、まず溶融し、次いで標準の試料容器に開けられている穴から充填球に落下することが確認さ れた。これは、このフッ素樹脂の融点が270 ℃であ り、空気雰囲気での10%分解温度が396℃と他の炭化 水素系の樹脂と比べてはるか高いためであると考え られた。
 落下した試料は、着火のための電極から離れてし まうため、すぐには着火せず、充填球上で熱分解し、 次いでこの熱分解ガスが着火することにより、充填球上の落下物が燃焼する様子が観測された。この際 発生するフッ化水素あるいはフッ化カルボニルは充 填球のアルミナと反応してフッ化アルミニウムとなって捕捉されるため、フッ化水素の回収率が低く なったと考えられた。
 そこで改善策として次の2 点を主に検討した。
  (1 ) 試料容器を穴のないものに変更する(落下防止)。
  (2 ) 充填球をアルミナから石英に変更する(反応防止)。

 これらの改良を順次行った結果をTable1 のNo2 以降に示す。上記2 点以外に、電極をSUS 製から白 金製に変更し、吸収管を増やし、最適化した条件で測定した結果がNo7 、8 である。これらの結果から、 フッ素の回収率を上げるためにもっとも効果がある のは充填球を石英に変更することであり、アルミナとフッ化水素が反応していることがわかった。また、 吸収管によるフッ化水素の吸収効率は流速が早いた め予想していたよりも悪かった。濾過板式吸収管では内圧が高くなりすぎるため、ウォルター式や市瀬 式吸収管を用い、吸収管数の増加していくとフッ化 水素の定量値は増え、最終的に吸収管7本(液量 610ml )を用いることで完全に捕集できた。このよ剤(Carbosieve )に吸着されてしまうため、測定前に吸着管のヘリウムパージを10分間行うことにした。


3.2 燃焼状態とフッ化水素の定量
 Table2 に示した燃焼条件で燃焼を行った際、試 料は、装置に導入後約20 秒後に着火し、白煙を上げ て12 秒くらい穏やかに燃焼した。 フッ化水素の捕集については上記のように条件を最適化することで、フッ化物イオンの回収率が約 87%に向上し(Table1 )、フッ化水素として試料1g 当たりでは約570mg が検出された。


3.3 ススおよび有機物の分析
 燃焼試験時に濾紙フィルターに付着したススの量は試料量1g 当たり約80mg で、酸素フラスコ燃焼法での分析ではこのススからはフッ素は検出されなかった。
  Table3 に燃焼有機ガスの分析結果を、Fig.2 にガ スクロマトグラムを示す。極微量の成分を除いて、 約40 種類のフッ素化合物を同定した。PVC の燃焼で はベンゼンが圧倒的に多く生成することが知られている(2 )が、本試料の場合には、際だって多い成分は 無く、低沸点側ではペンタフロロプロピレン(例:CF3 CF=CHF)、テトラフロロプロピレン(例: CF3CF=CH2、CF3CH=CHF)、トリフロロプロピレ ン(例:CF3CH=CH2)などのオレフィン類が、高沸点側ではジ - およびトリ - フルオロベンゼンが多く生 成していた。この結果から、脱フッ化水素により生 成するポリエン骨格から炭素骨格3個のユニットで 切断された場合に低沸オレフィン類が生成し、炭素 骨格6 個で環化したものが含フッ素ベンゼン類であ ると推測される。さらに、ジフロロベンゼンを標準試料として定量したところ、これらの成分は10ppb のレベル(5L テドラーバック中)であり、総発生 ガス量は約230ppb (5Lテドラーバック中)であっ た。テトラフルオロエチレン系のフッ素樹脂の熱分 解反応では解重合が進行しやすいと言われているが、この測定ではモノマー成分であるテトラフルオ
ロエチレン(CF2=CF2 )、およびテトラフルオロエチレン2量体の異性体であるパーフルオロイソブチレ ン((CF3 2C=CF2)は検出されなかった。以上の結 果をまとめてTable.4に示す。
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4. 結 語
 塩化ビニル、ポリオレフィンなどと耐熱特性の異 なるフッ素樹脂の燃焼時の発生ガスを分析する目的 で、JIS K 7217 法を、フッ素系発生ガスの分析に対応しうる燃焼条件および分析条件の検討を行い、 フッ素樹脂フィルムの燃焼試験分析法を確立した。 さらにこの方法において以下の知見を得た。
(1 )JIS 法に規定されている充填球のアルミナは、 フッ素樹脂の分解、燃焼により発生したフッ化水素 またはフッ化カルボニルと反応し、フッ化アルミニウムとなってフッ素を捕捉して、フッ化水素として の発生ガス量を低下させる。これは石英球を用いる ことで、充填球による捕捉を抑制できる。
(2 )ETFE 系フッ素樹脂の燃焼ガスは、二酸化炭素、 一酸化炭素およびフッ化水素が主であり、有機系フッ素化合物の発生量は極めて微量である。750℃における燃焼では、ポリマー中に存在するフッ素の 約87%がフッ化水素となり、その量は試料1g 当たり 約570mg であった。この値はPVCからの塩化水素量 の回収率73 %よりも大きく、ETFE の場合には交互 共重合性が高いことからフッ化水素が発生しやすい ことがわかった。
(3 )有機系の発生ガスは、40 成分以上と非常に多 種のガスが発生するが、総発生ガス量としては 1ppm 以下と極めて微量であった(5Lテドラーバック中)。有機系成分のほとんどはフッ素化合物であ り、CF3CF=CHFやCF3CH=CH2 などの不飽和HFC類 とジ - およびトリ - フロロベンゼンなどが主生成物で ある。

−参考文献−
(1) 玉置明宏,朝倉潤子,実桐幸男,米森重明,日本分析化学会第43 年会講演予稿集,488 (1994)
(2) 能代誠,鑓田富雄,布施美智雄,日化,6 ,1236 (1973 )
(3) 小瀬達男,プラスチックス,44 ,9 ,44 ,(1993 ).
 
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