Paper9. Use of a Transparent Conductive Thin-film on a Glass
Substrtate in Active Integrated Antenna Arryays
大島清志*・木寺信隆*・庭野和彦*・井川耕司*
Kiyoshi Oshima, Nobutaka Kidera, Kazuhiko Niwano and Koji Ikawa
 Active Integrated Antenna (AIA) arrays were fabricated on a glass substrate using a
conductive thin film, which was thin enough to be transparent to realize a transparent RFcomponent. It can be attached to a window glass keeping its visibility. This means a
potential to develop to new applications in microwave communication. The AIA arrays,
here, consist of CPW, double strong coupling and 2 - element array. For the oscillation
using the lossy transmission line, a backing conductor and a Partly Thickened Conductor(PTC) were used. It operated at 8.54GHz with the in - phase mode and EIRP was 14.3dBm.

Part of this paper presented in IEEE MTT - S Int.Microwave Symp.Dig., 2002, pp.1569 - 1572.
*中央研究所
 

目次
  1. 緒 言
  2. 設 計
  3. 実験と結果
  4. 結 言

 
1.緒 言
 マイクロ波帯の無線通信システムは、今後様々な分野で応用されていくことが期待されている(1)。特 にモバイルの利便性と、無線LAN の高速性を兼ね備 えた通信システムへ期待が高まっている。その中で も、ひとつのPDA 端末を使って、室内では無線LAN 端末となり、屋外ではアクセス端末となるような、 シームレスな通信環境が注目されている。
 ここで、室内と室外をつなぐ窓ガラスの積極的な利用が新しい応用を切り開くと考えられる。例えば、窓ガラスと一体化したアクセスポイントやリピーターを設けることによって、ガラスによる電波の減衰の問題を解消できたり、建物壁面によって生じる影の部分をカバーできるようになる(Fig.1)。この ように、窓ガラスへの実装を考慮し、窓本来の特性 である光の透過性を維持した透明な通信コンポーネ ントには、幅広い応用例が期待できる(2)
 本論文では、透明な通信コンポーネント実現のための検証例として、2 素子のアクティブ集積化アンテナアレーをガラス基板と透明導電膜を用いて作製し動作したことを示す。
 透明性を確保するために、伝送路はガラス基板上に透明導電膜を成膜しエッチングして作った。しかしながら、このように薄膜でできた伝送路は、高周波回路用としては損失が大きくアクティブ集積化アンテナの発振器において十分な発振出力が得られない。そこで、本論文ではループゲインを向上のため、部分厚膜と背面導体を導入した。
 
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2. 設 計
2.1 透明な伝送線路
 光の透明性を実現させるために、ガラス基板と透明導電膜を用いて伝送線路を形成した。伝送線路の構成として、マイクロストリップ伝送路でなく、CPW (Co - Planar Waveguide )伝送路を採用した。このことで、ガラス基板へのビア・ホール加工という難しい加工が不必要となった。ガラス基板は比誘電率6 .8 ,誘電体損0 .02 ,厚さが0.76mm のものを用いた。基板の片面にスパッタにより銀を26nm 成膜し、オーバーコートとしてZnO を40nm 成膜した。成膜後に4探針法によるシート抵抗と光の透過率を測定したところ、それぞれ1.9[ ohm/square] と47[ %] だった。次にフォトレジストの技術によりCPW パターンを形成し、スクリーン印刷による銀の厚膜印刷でCPW のストリップの一部を厚膜化した。


2.2 アクティブ集積化アンテナアレーの設計
 回路のアウトラインをReturn Loss (dB)Fig.2 に示す。直列帰還によるFET の発振回路で、ソースとゲートにはショートスタブが接続されている。2 つのアクティブ集積化アンテナを強結合ラインで結合し2 素子のアンテナアレーとした(3)(4)。強結合ラインはドレイン側とゲート側の両方に設け、ダブル強結合の構成とした(5)。このダブル強結合によって回路のQ 値が改善し、発振の相互同期が安定するものと期待される。FET はパッケージタイプのMGF4951A を用いた。
 アレーアンテナの理論に基づくと、グレーティングローブを防ぐために2 素子のアンテナ中心間距離は0.7 λ0 以下とする必要がある。この距離はガラス基板上では1.25 λg に相当する。CPW 給電のアンテナとしてはスロットアンテナが一般的だが、インピーダンス整合を容易にするためスロット長をλgにすると、2 素子のアンテナがほとんど接してしまう。そのため、本論文においては、より短い長さでインピーダンス整合の取れるフォールディッド・スロット・アンテナを採用した。そして、強結合ラインの長さが1.25 λg 以下という条件で発振器の設計・最適化を行った。フォールディッド・スロット・アンテナのリターンロスと放射パターンをFig.3 に示す。


2.3 ループゲインの改善
 透明導電膜を用いたアクティブ集積化アンテナにとって、背面導体は発振に対して重要な役割を果たす。すなわち、発振回路において、CPWモードに加えてマイクロストリップモードも使いながらRF 信号をフィードバックさせることができる。
 発振強度を強めるための別のアプローチとして部分厚膜(PTC - Partly Thickend Conductor)も導入した。ITO など通常の透明導電膜では、伝送路としてロスが大きいために発振が得られない。そこで、ループゲインをアップさせるためにFET のソースとゲートに接続されたショートスタブ部分を銀の厚膜印刷で多重印刷し膜厚を厚くさせた。印刷された銀の典型的な厚さは約6μm である。また、この部分厚膜化によりソーススタブ部の寄生抵抗が下がるので、ゲートへのセルフバイアスのかかり方が浅くなる効果も期待される。最終的に、部分厚膜(PTC)化によってフィードバックが改善され発振強度と安定性が得られる。ドレインバイアス回路にも部分厚膜を適用し電圧降下を防いだ。また、2 素子間の同期を強めるためにゲート強結合ラインも部分厚膜化した。以上のように、部分厚膜化は必要部分のみに限定し、不透明な面積を最小限に抑えた。
 
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3. 実験と結果
 放射パターンの測定には、アジレント製スペクトラムアナライザ(8564EC )と8.0GHz において14.8dBの利得を持つ標準ゲインホーンアンテナを用いた。作製したアクティブ集積化アンテナアレーの写真をFig.4 に示す。


3.1 発 振 器
 まず、1 素子で発振器のみを作製し、得られた出力と発振周波数をFig.5 に示す。この時、背面導体を取り付けないと発振は得られなかった。


3.2 背面導体
 片側全面に銀をスパッタしたガラス板を1 枚用意し、これを背面導体としてアンテナアレーの回路側と反対の面に取り付けた。そして、このガラス板をずらしながらアンテナアレーからの放射を受信し、その電力からEIRP (Equivalent Isotropically Radiated Power )へ換算した。背面導体の配置は、 Fig.6 に示すように5 通り行った。それぞれの配置 でのEIRP をTable1 にまとめる。最大のパワーは、 Fig.6 に示したBC3 およびBC4 の時に得られた。スタブの長さなどパラメータを変更し、いくつかの異なる設計でサンプルを試作したが、いずれも背面導体を取り付けた時しか発振は得られなかった。


3.3 部分厚膜
 部分厚膜の効果を調べるため、3 種類のアクティブ集積化アンテナアレーのサンプルを作製した。すなわち、部分厚膜化したサンプルに対し、部分厚膜化を行わず全ての導体を薄膜だけで形成したサンプルと、全ての導体を厚膜印刷で形成したサンプルを作製した。全て厚膜印刷で作ったサンプルは、アクティブ集積化アンテナとして最大の出力を期待できる。しかし、完全に不透明なサンプルとなるため、透明性を有したデバイス開発としては参考値として位置付ける。これらのサンプルには全て背面導体を取り付け、パワーが最大になるように、そのポジションを調整した。測定されたスペクトラムをFig.7に示す。部分厚膜化することによりピークのパワーが2.8dB アップした。このピークパワーはEIRP にして14.3dBm に相当する。また、発振周波数は8.54GHzだった。Fig.8 に放射パターンを示す。放射パターンより2 素子が同相モードで同期したことがわかる。
 
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4. 結 言
 2 素子のアクティブ集積化アンテナアレーをガラス基板と透明導電膜を使って試作し、8.54GHz の発振周波数でEIRP=14.3dBm となる放射があった。また、2 素子が同相で同期しアレーアンテナとして動作した放射パターンも得られた。平面回路における全導体が薄膜だった場合では、発振出力も小さく2素子の相互同期も不十分だったが、CPW 伝送路における部分厚膜化により安定で大きな出力の発振を得た。また、発振に対して背面導体の影響についても示した。
 アレーアンテナとして動作したことから、今後、ビームステアリングなど、更なる機能を追加していく道が開けたといえる。
 このようにアクティブ集積化アンテナアレーを、光の透明性が維持された構成で組み上げ、トランスミッターとして動作させたことで、透明な通信コンポーネントの実現性が検証できたといえる。そして、窓ガラスを積極的に利用し、建物や自動車の室内と室外を結ぶ新しい無線通信システム実現への第一歩となったといえる。

−謝 辞−
本研究は東海大学電子情報学部電気電子工学科の川崎繁男教授との共同研究として先生のご指導の下、進められました。ここに感謝の意を表します。

−参考文献−
(1) Y.Qian and T.Itoh, IEEE Trans. on Microwave Theory Tech. , Vol.46 , [ No.11] , 1891 (1998).
(2) 園田龍太, 川崎繁男, 木寺信隆, 信学技報, MW2000 - 164 , 93,(2000).
(3) S. Kawasaki and T. Itoh, IEEE Trans. on Microwave Theory Tech. , Vol.41 , [ No.10] , 1838 (1993)
(4) S. Kawasaki, IEICE Trans. Electron, Vol.E80 - C , [ No.6] , 800 (1997)
(5) K. Kikuchi and S. Kawasaki, ISSSE2001,465 (2001).
 
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