持続可能な食糧供給システムが未来の地球環境や食糧危機を救う 持続可能な食糧供給システムが未来の地球環境や食糧危機を救う

Nov.09 2017

持続可能な食糧供給システムが未来の地球環境や食糧危機を救う

利便性と持続可能性

人口が増加する地球では、人々の生活が便利になる一方、温暖化や食料危機など様々な環境問題が発生している。地球温暖化は、干ばつ、洪水、暴風雨のほか、生物種の絶滅や農作地の減少を引き起こし、長期的な視点に立てば食糧安全が保障されているとは言いがたい。


AGCは、創業時から現在に至るまで環境問題と向きあってきた。その解決方法のひとつが、F-CLEAN®という製品だ。F-CLEAN®は透明性・耐久性に優れたフッ素樹脂フィルムで、農業用グリーンハウスのほか、太陽熱を利用した海水脱塩システムや食品乾燥システムなど、幅広い用途で太陽エネルギーを有効に活用することができる。

自然と調和した新しい生活ができる仕組みを

ドイツを拠点にエネルギーコンサルタントとして活動している、EBF GmbH社代表のFranz Schreierさん。物理学者でもある自身は、これまで企業や団体に対してエネルギー関連のコンサルティングを実施。そして、地球環境に配慮した持続可能な食糧供給システムを普及させるべく、F-CLEAN®を製造、供給するAGCと何年にもわたって協働を続けてきた。


「多くの企業は長年に渡り、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に頼ってきました。これら化石燃料はとても便利で扱いやすいですが、一方で地球温暖化の原因になっているCO2排出などが問題視されてきました。地球温暖化は年々加速していますし、そのような気候変動は生活条件を危険にさらします。ですから私は、化石燃料に頼らないエコロジーシステムを開発しようと決心しました。F-CLEAN®は太陽光エネルギーの活用の幅を、様々な用途で広げられる素晴らしい素材です。F-CLEAN®とAGCのおかげで、自然と調和した豊かな生活を支える、食糧とエネルギーを統合したシステムを共同で開発することができています。

AGCとビジネスの関係を強める一方で、私はAGCの企業概念にも感銘を受けました。旭硝子財団刊行の『生存の条件』を、アムステルダムにあるAGCのヨーロッパ支部で見つけ、財団の環境問題に対する考えを読み取ることできたのです。さらに、AGC Chemicals が掲げている Chemistry for a Blue Planet というビジョンに私の思想との共通点を深く感じられたことも、協働を続けてこられた理由のひとつとなっています」

植物と魚が同じシステムで共存する栽培システム

産業界はエネルギー密度の高い化石燃料を好んできた。扱いやすく、いつでもどこでも手に入る上、小スペースでも大きなパワーを生み出せるからだ。一方、地球に射す太陽光エネルギーは化石燃料よりエネルギー密度が低く、広大なスペースが必要になってしまう。そこで、Franz Schreierさんは、再生可能エネルギーをもっと有効に活用する方法を模索することとした。


「広大なスペースを活用し、太陽光エネルギーを得ることに長けた業種として、私の頭に浮かんだのは施設園芸農業でした。また、グリーンハウス農業や施設園芸の従事者であれば、環境にやさしい、巨大な太陽光エネルギー集約施設の建築についても深い知識を持っているはずだと考えました。「園芸」にこそ、環境にやさしい施設の建て方のヒントがあるのではないか、と。


ところが、実際にグリーンハウス農業や施設園芸の従事者と話してみると、彼らがグリーンハウスの温度、湿度、光量を一年中保つために、化石燃料に依存していることが分かりました。つまり化石燃料がなければ、十分な食物を生産できないのです。そして、化石燃料は長期的に見れば枯渇すると言われています。こうした状況を解決するために最初の目標として定めたのが、化石燃料に頼らない栽培システム。願わくは、野菜と魚を育てながら太陽光エネルギーを得ることのできる生育システムをデザインすることでした」


その言葉が示すように、Franzさんは化石燃料がなくても食物生産ができる新システムの開発に着手。そして、約10年前に辿り着いたのが、アクアポニックス(アクアカルチャー/養殖× ハイドロポニック/水耕栽培、養液栽培)を活用するアイデアだった。太陽光エネルギーを利用した温室栽培が、再生可能エネルギーによる生育に必要な環境を実現した。

「アクアポニックスは養殖と水耕(無土壌)栽培が共生する複合システムです。魚の排泄物が含まれた水槽の水を水耕栽培に与えることで、植物の生育に活用します。植物の根が魚の排泄物(栄養素)を吸収して、水を浄化。そして、浄化された水が再び水槽へと戻っていくという仕組みです。水槽はグリーンハウス内にあるため、魚を飼うだけでなく、熱量力学的にも大きな利益を生みます。水は熱を多く溜め込むこともできるので、冬でもグリーンハウス内の環境は穏やか。化石燃料がなくても凍害に悩まされることがありません」

AGCと自身の想いが生み出したアクアポニックス一体型のソーラーグリーンハウス

数多くの試行錯誤が繰り返されたアクアポニックスだが、実現に向けて大きな手助けとなったのが、ハウスを覆うための素材として使われることになったF-CLEAN®だ。


「様々な調査の結果、中国でよく見られる日光温室が世界で最もエネルギー効率が良いことが分かりました。しかし、それらのハウスには弱点がありました。全体を覆う材質がポリエチレンだったのです。ポリエチレンは透明度が低い上、その機能も年月とともに劣化します。植物の光合成量が下がれば、植物も満足に育ちません。また、ポリエチレンは耐久性(強度)も低いため、4〜5年経つと交換が必要です。幸い、私はF-CLEAN®を見つけ、AGCに連絡することができました。およそ10年前のことです。

高性能フッ素樹脂フィルム F-CLEAN

私とAGCは試行錯誤の末、ソーラーグリーンハウスを使った効果的かつ包括的なソリューションにたどり着きました。ソリューションのカギとなったのは、やはりグリーンハウスを覆うフィルムの素材=F-CLEAN®でした。


私がF-CLEAN®に惹かれた理由のひとつは、紫外線レベルで太陽光を通す高い透過力です。紫外線は食物の成長にとって大切な要素。たとえば、紫外線で植物の病気に対する耐性が向上し、殺虫剤や殺菌剤の使用量が大幅に減ります。1%の光が失われると1%収穫を失うという事実を考えれば、F-CLEAN®は食物の生育にもっとも経済的です。


もうひとつは、正しく展張すれば、過酷な環境で20年使用してもほとんど劣化しない耐久性です。さらにF-CLEAN®は燃えないので、厳しい消防法の条件を満たすことができます。きちんと設置・メンテナンスをすれば、かなり長持ちすることでしょう。AGCのF-CLEAN®は、他のあらゆるフィルム素材を性能で上回り、プロジェクトの実現に大きく貢献してくれたのです」

どんな場所でも、最小限のエネルギーで食物を生産

再生可能エネルギーの有効活用と、健康的な食物の生産を同時に行うことができる、アクアポニックス一体型のソーラーグリーンハウス。年々、このソリューションの利用者が世界各地で増えているという。そして、そのインパクトをさらに広げる、いくつかの新しいアプローチをとることも可能だ。


「例えば、ソーラーグリーンハウスで適切なアクアポニックスの環境を作ることができると理解されれば、都会での地産地消が身近になり、このソリューションもアーバン・ファーミングのスタンダードになることでしょう。また、食物生産だけでなく、食物輸送における労力削減にも貢献できると考えています。


食品乾燥の工程にもF-CLEAN®を利用することが可能です。みなさんは米や麦などの穀物を食べますよね。しかし、生産地の一部では収穫後の乾燥システムが上手く機能しておらず、輸送前に腐らせてしまうという問題も起こっています。しかし、F-CLEAN®のソーラーグリーンハウスを応用した乾燥システムを使えば、食糧を無駄にすることがなくなるため、生産性も劇的に向上する可能性があります。


将来的には、家やビルなど建物の屋根全体をF-CLEAN®のフィルムにしてしまうことで、環境破壊を気にせず過ごせるような、快適な都市空間を構築できるかもしれません。とはいえ私たちは、都会に限らずどんな場所においても、最も少ないエネルギーで食物を生産できるような、より良い生活環境を創造・提供していく必要があると考えています。F-CLEAN®を活用したソリューションで、世界中の人々の生活に直接的な利益を与えることができると信じています」

平和な地球を、未来の子供たちへ

EBF GmbH社の代表であり物理学者であるFranzさんだが、5年前からF-CLEAN®の技術コンサルタントとしても活躍している。今よりもっと良い地球の在り方を実現するため、AGCと共に挑戦を続けていく。


「AGCは優れた資材だけでなく素晴らしいビジネスも提供する企業です。食物やエネルギーを世界中の人々が必要とする分だけ供給できる、ダイレクトなシステムソリューションを提供できると信じています。F-CLEAN®はそうしたソリューションのカギとなる素材。まさに今、地球が必要とする素材です。


この地球の未来のため、私は人と地球のかけがえのない関係、自然が無償で与えてくれた資源のきちんとした使い方を子供たちに教えていきたいと思います。


地球をすべての人が安心して暮らせる場所にすることができるかどうかは、私たちの手にかかっています。私たちが力をあわせれば、世界中の人に水や食物、エネルギー、住処が行き届いた環境を作りだすことができるでしょう。私はいつかこの夢をAGCと共に叶えられると、心から信じています」

この記事をシェア facebook x