垂直引き上げ法
1901年にベルギー人のフルコールが開発した「フルコール法」は、溶解窯(ようかいがま)から板のままガラスを垂直に引き上げるという画期的なもの。この製造方法により、板ガラスを連続して製造する本格的な大量生産が可能になったわけじゃ。1928年にアメリカで開発された「ピッツバーグ法」も、垂直引上法のひとつ。また、1916年にはアメリカのコルバーンが、一度垂直に引き上げ、やわらかいうちに曲げ水平にして徐冷する「コルバーン法」を開発している。いずれも、窯から直接板になったガラスを取り出す点が共通しているのじゃ。
 
製造工程 垂直引き上げ法[フルコール法]のおおまかな流れを見てみよう。
 
 
   
 
 
製造工程ガラスを垂直に引き上げるしくみを見てみよう
 

 引き上げ室の下の部分には、溶解窯から流れてきた溶けたガラス素地がたまっている。この溶けたガラス素地の中にデビトーズ[狭いすき間の開いた細長い器具]という器具を浮かべる。すると、液状のガラスの表面張力により、すき間からガラスが板になってもりあがる。これを、ガラスの両端を小さなローラでつかまえて垂直に引き上げていく。垂直に引き上げるので、徐冷室は高く直立している。内部のローラーがガラスをはさんでゆっくりと引き上げながら、ゆっくりとガラスをさましていく。この徐冷によって、内部にゆがみのない板ガラスとなる。また、板ガラスの厚さは、引き上げるスピードによって調節することができる。徐冷が完了したガラスは、最上部まで引き上げられ、切断されて製品となる。

 
写真:垂直引上法[フルコール法]製造風景[昭和初期] 写真:垂直引上法[フルコール法] 製造風景[昭和初期]
垂直引上法[フルコール法]
製造風景[昭和初期]
 
 
 
「垂直引上法」には、現代の板ガラスと比較すると、次のような弱点がありました。
 1. 引き上げのときに、デビトーズ[耐火粘土のスリット]を通るため、ガラス表面がデビトーズにふれてしまい、火造り面の美しさがそこなわれる。
 2.ローラーを使って板の両端で引き上げるため、板のまん中の部分がどうしても垂れてしまう。そのために完全な平行平面ではなくゆがんでしまう。
とはいっても、当時としては、画期的な最先端技術。ガラスを板のまま次々と窯から引き上げることで、板ガラス製造の「連続生産」を確立したすごい製造方法だったのです。

 

 

 
 
エピソード&コラム
フルコール式とピッツバーグ式
フルコール法
フルコール法
ピッツバーグ法
ピッツバーグ法
 垂直引上法には、ベルギーで開発された「フルコール法」とアメリカで開発された 「ピッツバーグ法」がある。基本は同じだが、窯から板を引き上げるときの方法が少し違う。「フルコール法」はデビトーズという器具を使い、耐火粘土のスリットから もりあがったガラスを引っぱり上げる。「ピッツバーグ法」では、ドローバーという器具を使い、窯に沈めた耐火粘土によってもりあがったガラスを引っぱり上げる。 「フルコール法」では、スリットの制約上、薄い板ガラス作りには適していたが、厚 い板ガラスを作るには適さなかった。これに対し、「ピッツバーグ法」は、大版の厚 い板ガラスを作ることができた。
 アメリカで「ピッツバーグ法」が開発された背景には、シカゴやニューヨークでの ビル建築ラッシュがあった。ビルはより巨大に、高層になり、大きくて強度のある板 ガラスが必要とされた。「ピッツバーグ法」は、こうしたビル建設のニーズに応える 製造方法だったといえる。一方、日本の板ガラス製造に垂直引上法が導入されたのは 昭和初期のこと。旭硝子では1928年に「フルコール法」による板ガラス製造を開始し た。その当時の日本では、日本家屋の障子(しょうじ)に替わって、ガラスが普及し 始めていた。つまり、日本家屋の木製の建具にぴったりはまる、厚さ2ミリメートル 程度の薄い板ガラスが必要とされていた。薄い板ガラス製造に適した「フルコール法」は、日本家屋に板ガラスを普及させる大きな原動力となったのだ。ちなみに、住 宅用アルミサッシの窓が日本に登場したのは1960年代はじめ頃。
写真:障子枠にガラスが用いられた日本の家屋 写真:障子枠にガラスが用いられた日本の家屋
障子枠にガラスが用いられた日本の家屋
1.ガラスづくりのはじまり2.コアテクニック3.キャスティング(1)古代ローマの鋳造法4.吹きガラス技法5.クラウン法
6.キャスティング(2)ド・ヌーの鋳造法7.円筒法8.垂直引上法9.ロールアウト法10.フロート法