![]() |
| 現代の板ガラスの代表的な製法がフロート法じゃ。1959年にイギリス・ピルキントン社が開発し、今では世界中に普及している。その原理は、溶かしたガラス素地を溶融金属[錫(すず)]の上に浮かべて、ガラスを板にするというもの。ガラスの比重が錫よりも軽いので浮かぶわけだね。この製法によって、磨きを必要とせず、両面ともほとんど平らな板ガラスが実現したのじゃ。フロート法で作られた板ガラスはフロート板ガラスといい、平行平面と火造りのつやを兼ね備えた優れたガラス。建物の窓、ショーウインドゥ、鏡、そして自動車や電車の安全ガラスの材料として使われるなど、ほとんどの透明板ガラスの幅広い用途に用いられているのじゃ。 |
| | ||
![]() |
||||||
|
|
|||||
![]() |
| | ||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
|
|
||
| 主原料の珪砂(けいしゃ)に、石灰石、苦灰石、長石、ソーダ灰、ぼうしょうなどを調合したものがフロートガラスの原料。これに、ガラスの製造工程で出るガラスくず[カレット]を混ぜ合わせる。 調合された原料は、原料投入口から投げ入れられる。調合も原料の投入も、すべてコンピューター制御によって自動化されている。 | ||||
|
| 原料を高温で溶かして透明なガラス素地にする工程が溶解だ。次々に投入される原料は、順ぐりに「溶解炉」へと運ばれる。耐火レンガで造られた溶解炉には、大きなものでは常に約2000トン以上のガラス素地がたたえられている。このため、溶解炉は、一度操業を開始すると耐火レンガの寿命[通常10〜13年]がくるまで、昼も夜も休みなく働き続ける。 溶解炉は、カーテン状の壁によって、ガラスを溶かす「溶解槽」と、ガラスの温度を下げ、内部の泡を抜くための「清澄槽」に区切られている。「溶解槽」の左右の壁には穴が開いていて、ここから吹き出すバーナー[燃料は重油]の強力な炎によって原料は溶かされる。その温度は約1600℃以上。炉の温度が均等になるように、左と右から20分おきに炎が吹き出すようになっている。左右交互に炎を出すのは、燃焼効率を高めることができるからだ。まず、片方のバーナーで重油を燃やして炎を出す。このとき高温の排気ガスが発生する。この排気ガスの熱をうまく活用することで、もう片方のバーナーで重油を燃焼させるときの効率を高めるのだ。 さて、1600℃に溶けたガラス素地は、溶解炉の中を進み、「清澄槽」へ押し流される。ここで素地の温度は、約1300℃〜1100℃に下がる。この段階の素地には少し粘り気が出てくる。そして押しつ押されつをするうちに混ざっていた泡を吐き出していく [泡ぎり]。さらに成型に適した温度操作[温調]を経て、フロートバスへ入っていく。溶解炉では、バーナーの火力、素地の温度調整など、厳密なコントロールが要求されるため、すべてコンピューターによって管理・制御されている。 |
|||||
|
| 清澄槽で約1100℃となったガラス素地は「フロートバス」に流れ込み、ここで板のかたちに成型される。フロートバスは密閉されたプールのようであり、溶融金属[液状に溶けた錫(すず)]が入っている。内部は密閉されており、錫を酸化させないための雰囲気ガス[窒素と水素を混ぜたもの]が充填され、天井には温度操作のためにの電気ヒーターが設置されている。 (1)ガラスを平面にする フロートバスに流れ込んだガラスは、ちょうど水面に油が浮かぶように、錫の上にひろがっていく。ガラスの比重[2.5]が、錫の比重[6.5]よりも軽いからだ。浮かんだガラスは、そこで自然と平面になる。錫と接する面は、錫の水平面を写しとるので、自然と水平になる。一方、ガラス上の面は重力により水平になる。こうしてガラスは完全な平行平面の板状となってフロートバスの中を流れ進む。この工程でもコンピューターによる厳密な温度操作が行われる。およそ1100℃でバスに流れ込んだガラス素地は、フロートバスの中ほどで約800℃になり、徐々に固まりはじめる。そして、フロートバスの出口では約600℃になる。また、フロート法では、固体に接することなくガラスを成型することができるため、両面とも自然のままの火造り面になる。 (2)ガラスの厚さ フロートバスの中では、ガラスと錫の重力、表面張力のつりあいによって、自然に約6.8ミリメートルの厚さになる。しかしこの厚さは、ガラスを引き出すスピードを調節することによって、約2ミリメートルから25ミリメートルまでの厚さの板を自由につくることができる。この調節もコンピューターによって正確に行われる。 (3)ガラスの幅・長さ ガラスの幅は、装置の制約上、最大約4メートルと一定だが、長さは、いくらでも長くすることができる。[工場から運び出し、運搬する制約上、現実的には最大長約13メートル] | |||
|
| 約600℃で固まった板ガラスは、フロートバスを出て、回転するロールに運ばれて「徐冷ライン」に入る。徐冷ラインは全長およそ200メートルあり、ガラス内部に温度差による力のひずみを生じさせないように、ゆっくりとガラスを冷やしていく。 | ||
|
| 徐冷を経た板ガラスは、さらにロールで次の工程へと運ばれていく。まず、温水で洗浄してから乾燥させる。その後、自動欠点検出器によって、板の厚さ、キズ、ひずみ、異物の混入などの各種検査が行われる。 | ||||
|
| 切断は、まずカッターでガラスに切りキズを入れ、その部分に下から衝撃を与える。するとガラスはキズに沿ってきれいに折れ、切断できる。ガラスは、一定の速度でラインの上を動いているので、カッターをななめに走らせることによって直角に切っている。またガラスの両端の部分は、搬送の跡がついているためカットされる。[ここで出きたガラスくずは、原料に加えて再利用される]もちろんこの工程も、すべてコンピューター制御により、機械が行う。 | ||||||||
|
| 切断された板ガラスは、サイズ別に仕分けられ、吸盤のついた機械でラインから取り出される。そして「パレット[ガラスを運びやすいケース]」に積み込んで出荷される。 | |||||
|
|||||
![]() |
| デパートのショーウインドウやガラス張りの高層ビルなど、現代の建物には、あたりまえのように大きな板ガラスが使われている。こうした歪みのない、厚くて丈夫な大面積のガラスは、「大板ガラス」と呼ばれ、フロート法によって初めて製造できるようになったものだ。 それでは、実際にはどのくらい大きな板ガラスが作れるのだろう?フロート法で作られる板ガラスは、幅は装置や場所の制約上、約4メートルと決まっているが、長さは自由自在。どんな長い板ガラスも作れてしまう。しかし現実的にはガラスの運搬という制限があるので、最長で13メートル程度となる。とはいっても、長さ10メートルもの板ガラスを工場から運び出し、トラックに載せ、建物に取り付けるのは、並み大抵の作業ではない。まず、ガラス工場では、大板ガラスを製造ラインから取り出したり[採板]、移動させたりするために「真空チャック」という装置を使う。いくつもの大きくて強力な吸盤でガラスを吸いつけて運ぶ装置だ。一方、建築の現場では「グレージングマシン」という機械を使う。やはり吸盤でガラスを固定し、高い場所まで垂直にガラスを持ち上げる機械だ。このようにして大板ガラスは、安全に、傷つくことなく、運搬されている。 完全な平行平面と火造りの平滑さを持つ、大面積の大板ガラスは、建物に巨大な開口部を実現した。雨や風や寒さを防ぎながら、たくさんの光を採り入れることができる大板ガラスによって、建築の可能性や建物の快適性は大きく広がった。 |
![]() |
![]() |
![]() |
||
| 大板ガラス施工風景 | 大板ガラス施工例「大宮競輪場」 | |||
| ||