旭硝子はフラットパネルディスプレイ(FPD)の中核となるTFT液晶用やプラズマディスプレイ(PDP)用のガラス基板、次世代の高精細ディスプレイの主流とされる有機EL用のガラス基板で大きな強みを発揮している。 加えて、世界的に需要が拡大しているスマートフォンやタブレットPCなどのカバーガラスを製品化。ディスプレイの未来を見据え、成長性の高い事業を全世界に向け展開していく。
フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板は一般的な板ガラスとはまったく異なる製品だ。パネルには2枚のガラス基板が使われており、その表面に、直接、微細な電極等の素子や誘電体等の構造物を形成していくため、化学的にも電気的にも安定性が高く、耐熱性も高くなければならない。また、パネル製造工程ではミクロンオーダーの加工が行われるために、平坦度、熱膨張、板厚、欠陥等について高い要求レベルに応えることが求められる。 旭硝子の強みは、TFT液晶用無アルカリガラス基板製造において世界で唯一フロート法を採用している点だ。この方法は大量生産と大型サイズのガラス基板の生産に最も適しており、ガラス基板の大型化が進展するなかで、他社の追随を許さない優位性を持っている。フロート法は高い生産効率を発揮しており、最新の超薄型ガラスの製造にも応用されている。 FPD用ガラス基板は映像表示の性能を大きく左右するキーパーツだけに、表示デバイスごとに求められるスペックを実現するため、それぞれガラスの組成から開発する必要がある。加えて切断、面取り、研磨、洗浄、薄膜成膜、検査といった基礎技術においても、つねに改善や革新を続けていかなければ先端ニーズを取り込めない。旭硝子はブラウン管(CRT)時代から、大型化、ワイド化、フラット化、高画質化といった市場ニーズに応える製品を先行開発していくことで、ディスプレイ事業を成長させてきた。この姿勢は、FPDが映像表示デバイスの主流になったいまも変わらず、次世代ディスプレイとして市場拡大が期待される有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)向けのガラス基板や、需要が急拡大しつつあるスマートフォンやタブレットPCなどのタッチパネル用ガラス基板・カバーガラスの開発にも受け継がれている。 また、製造現場では生産性向上への地道な取り組み(インダストリアル・エンジニアリング)を続けており、その成果が顕著であったことから、同じ手法が他カンパニー・他事業へも横展開されている。品質・コストダウンを追求し続けることがグローバル競争を勝ち抜く鍵。そのことを身をもって体験してきたのがディスプレイ事業だといえる。
TFT液晶は、0.4〜0.7mm程度の極薄のガラス基板上に、液晶表示のスイッチとして、膨大な数のトランジスタを形成する。美しい大型映像を表示するためには、ガラス基板の大型化と表面の平坦性が重要である。現在旭硝子は、3m角以上のG10サイズのガラス基板を提供しているが、その中にミクロンオーダーの気泡が一つあっても許されないほどの高い精度が求められる。
AGCグループのディスプレイ事業はCRT用ガラスバルブを国内で初めて量産開始した1954年から、半世紀以上の歴史を持つ。1990年代から生産を開始したFPD向けのガラス基板では、まさにリーディング・カンパニーであり続けるべく、旭硝子の強みを活かした世界戦略を展開し、現在では、日本、台湾、韓国、中国へと生産拠点を広げている。 まずPDP用ガラス基板では、世界に先駆けてフロート法によるPDP用高歪点ガラスを開発・量産化、世界のトップシェアを保有し、デファクトスタンダードとなっている。さらにTFT液晶用でも、国内メーカーではトップシェア、世界でもNo.2のシェアを保有、品質・技術要求が高度化する市場に対して、独自の製法と高い生産技術力をベースに国際競争力を高めながら、事業拡大を急ピッチで進めている。 日本では高砂工場にスマートフォン向けカバーガラス製造の溶解炉を増設予定。またTFTやPDPパネルメーカーの集中する台湾、韓国、中国でも積極的に投資を続けており、供給・販売体制はワールドワイドに拡大している。
ワールドワイドのテレビ需要は2億台/年以上にのぼる。2011年時点では、液晶やプラズマなどフラットパネルテレビの比率は全体の80%を超えている。さらに、フラットパネルテレビ自体の大型化が進むことから、ディスプレイ用ガラス基板の市場は引き続き成長が期待されている。 またスマートフォンやタブレットPCの市場も急激に需要が拡大している。高解像度、省電力、薄型軽量といったニーズに加え、強度、操作性、意匠性などの厳しい要求が相次ぐ電子業界だけに、特殊ガラス技術、精密加工技術、コーティング技術、化学品やセラミックスの技術など、持てる技術を総動員して開発にあたっている。次世代ディスプレイとして注目されている有機ELなども含め、「映像の未来」を見据えた研究開発や事業展開で、これからも市場をリードしていく。