旭硝子が市場におけるプレゼンスをさらに高め、持続的な成長を実現していくためには、素材の高付加価値化が不可欠である。 そのカギを握るのは研究開発部門であり、旭硝子のコア事業においてグローバルNo.1を達成するために、同部門のパフォーマンス向上が不可欠である。ここでは、その核を担う中央研究所のミッションを中心に紹介する。
中央研究所は、「未来の旭硝子を支える研究開発の実行」、「研究開発のスピードアップ」、「人材と組織の育成」の基本方針のもと、「創出・協働・育成」を活動方針とし、生産技術センター、エンジニアリングセンター、知的財産センターと連携し新規事業の創出と基礎研究、共通基盤技術の開発を行っている。中央研究所の研究活動を実施する組織は、新しい研究テーマのイノベーティブ研究や応用研究、共通基盤技術開発を行う「ファンクション」、大型の事業立ち上げを目的に、新商品、新技術の開発を行う「プロジェクト」、企業の発展に寄与する世界的レベルの研究を推進している「特別研究室」に分けている。中央研究所では、事業部門の課題解決を行う短期的なテーマと、将来的な事業創出を狙う中長期的なテーマをバランスよく展開し、提案型の研究開発の実践を指向している。一方事業部研究所は、それぞれの事業部門ごとに設置され、新技術・新製品の開発・改良、商品の性能評価・品質保証などを行っている。事業と直結する商品の開発を実施することで、市場動向をいち早くキャッチすることができるため、中央研究所と互いにコミュニケーションを取りながら、お客様の二ーズに応えている。
コアとなる事業分野においてグローバルNo.1の企業グループを目指し、ガラス・化学・セラミックスのコアテクノロジーをベースとした素材ソリューションをグローバルに提供するという全社の基本方針をもとに、今後の主要事業領域を開口部材、表示部材、エレクトロニクス&エネルギー部材の3つに定め、ニーズを自ら創り出す研究開発活動を実施している。特に全社的な“Grow Beyond”施策の加速においては、「第2のグローバリゼーション」、「地球温暖化問題に技術力で貢献」、「ガラス技術立社」の3つの視点で、AGCグループの成長基盤を構築すべく研究開発活動を実施している。
他社と差別化した材料・新商品開発を行うためには、保有するコアテクノロジーを融合化させることが必要となる。そのためには、個人の発想や主体性を尊重した上で、チームワークを大事にした研究開発活動が必須であるが、中央研究所の自由闊達な研究開発環境はそれらの活動を支えるものとなっている。 たとえば、中央研究所では、完全フレックス制はもちろん、本人の希望する研究テーマについて1年間就業時間の20%までの範囲で自由に研究活動ができる「自由探索研究制度」を導入している。この制度の利用にあたっては、中央研究所長の承認が得られれば研究活動には一定額の予算が認められるほか、成果次第で正式テーマとして継続することも可能である。先端技術の習得やスキルアップを目的とした外部の企業や研究機関との共同研究、大学への留学や派遣にも力を入れている。また、情報・エレクトロニクス、エネルギー・環境関連分野の研究開発に不可欠な専門の知識や発想を取り入れるため、各分野の先端で活躍されている先生方をお招きして、講演会を開催している。
中央研究所の技術戦略として、将来の収益の柱となる新商品につながる強化すべきテクノロジーを次の3つの分野において定めている。
すでに旭硝子は建築用、自動車用ガラス、ディスプレイ用基板ガラスでいくつもの成果を生み出している。こうした新商品開発により蓄積された技術をベースに、今後は市場拡大が期待される新規ディスプレイや情報・通信デバイスの実現に欠かせない「特殊ガラス材料技術」「薄板ガラス製造技術」も強化していく。
フッ素化合物は、優れた光透過性、耐薬品性、低誘電率性など優れた特性を持っている。これらの特性とフッ素化合物合成技術、フィルム化技術の組み合わせで半導体工程材料や光通信用材料などの商品を開発している。また高分子技術とナノインプリント技術を基に液晶ディスプレイに用いられる部材も開発している。
コーティングでは、「スパッタ成膜技術」、「CVD技術」に加えて、「ウエットコーティング技術」も強化してきた。これら技術で実現される商品群は、省エネ部材、撥水ガラス、太陽電池用基板、ディスプレイ用部材などがあり、コーティングの基板は従来のガラスだけではなくフィルムにも展開している。
中央研究所での研究開発テーマはステージゲート法によりマネジメントされており、テーマの進捗状況に合わせたメリハリのある判断ができ、アイデア段階のテーマ創出を活性化し、独創的な提案が出せるような仕組みになっている。同時に、外部から取り入れるべき技術等も明確化されるため、リサーチコラボレーション、留学、派遣、投資等の手法を用いたコラボレーションも活性化されている。 さらに、ステージゲート法をもちいることにより、それぞれの開発ステージにおける判断基準が共通言語化されるため、各カンパニーや事業部とのコミュニケーションがスムーズになり、研究開発テーマへの人財、資金、物的資源の投入タイミングを適切に判断することが可能となっている。