化学品事業

20世紀初頭、板ガラスの原料であるソーダ灰の自給を目的にスタートした化学品事業。 ほぼ1世紀を経た現在、その事業は大きく花開いた。クロールアルカリ・ウレタン、フッ素・スペシャリティ、ライフサイエンスの3分野を中心に、基礎化学品から高機能製品、医農薬原体まで、さまざまな製品を市場に送り出し、「安全・安心」「快適」「環境保全」を求める社会のニーズに迅速に対応している。

化学の力で、時代が求める
多様なニーズを実現する

AGCグループは、化学品をコア事業の一つに持つ。化学製品は世の中のあらゆる分野・市場で用いられているだけに、多様なビジネスチャンスに恵まれている。それゆえ、化学品カンパニーは化学の力を最大限活用し、他社には真似のできない新たな価値、新たなビジネスを創出することが期待されている。化学品事業は、クロールアルカリ・ウレタン、フッ素・スペシャリティ、ライフサイエンスの3つの事業を中心に構成されている。クロールアルカリ分野では、今後GDPの成長が見込まれる東南アジアにおいてトップメーカーの座におり、生産設備の増強を進めている。また、フッ素樹脂ETFEは、世界マーケットにおいてすでにトップシェアを得ており、その地位を確固たるものとしている。ライフサイエンス事業では、医薬・農薬の分野で、主に最終的な薬品になる前の製造過程にある「中間体・原体」を製造するとともに、バイオ医薬品分野では積極的なM&Aにより成長を加速させ、グローバルにその活動領域を広げている。

クロールアルカリ・フッ素化学の技術をベースにした独創的で付加価値の高い製品群

製造・生産技術

クロールアルカリ・フッ素化学の技術をベースにした、
独創的で付加価値の高い製品群

化学品事業は、ガラスの主原料であるソーダ灰(炭酸ナトリウム)の自給生産と、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)と併産する塩素の誘導品を起点とし、幅広く展開してきた。下図のように、クロールアルカリなどの基礎化学品から、フッ素化学品などの高機能製品まで一貫製造しているのが特徴だ。そのため、原料から末端製品までのすべてのプロセスで行き届いた安全・品質管理と環境への配慮が可能となり、今日、数多くの分野で世界トップレベルの製品を生み出している。

特筆すべき技術として挙げられるのが、塩素誘導品の有機合成技術に端を発したフッ素化学の技術である。精密合成技術を駆使し、これまでの樹脂にはない高耐熱性・耐薬品性・耐候性を付与したフッ素樹脂、塗料用フッ素樹脂、フッ素ゴムを開発。これらは高度に機能化が進んでいる自動車・航空機などの分野で、急速に需要が拡大している。
フッ素化学の技術は、燃料電池用フッ素ポリマーなどのエネルギー事業にも活用され、AGCグループ全体のコア技術となっている。また、医薬品・農薬分野へも応用され、フッ素系医農薬中間体を生産している。医薬品製造基準(cGMP)に対応した設備を有し、高次中間体から原体の受託製造も行っている。

フッ素樹脂製品の多くは1970~80年代にかけて開発され、それが今日まで四半世紀以上にわたって主力製品の座にある。その意味では、現在の研究開発は四半世紀先を見越して、「化学品の未来を創る」という気概をもって進められており、そこにこそ化学系技術者のやりがいがあるといえる。なお、化学品事業は本社と工場にエンジニアリング部門を擁し、プラントの建設から日々のメンテナンスまでのすべてにおいて、自社技術をベースにこなしているのも特徴だ。

クロールアルカリ・フッ素化学の技術をベースにした独創的で付加価値の高い製品群

市場・販売体制

欧米市場に加えて東南アジアでも、
次世代市場での競争優位を目指す

基幹分野であるクロールアルカリ・ウレタン事業は、成長が続く東南アジア地域の旺盛な需要を支え続けている。タイでは2011年、インドネシアでも2012年および2016年に、基礎化学品である苛性ソーダの増産を実施した。さらにコスト競争力を強化するために、2018年にはインドネシアにて石炭火力発電所を新設し、電解に必要な電力を自給している。苛性ソーダは紙パルプや化学繊維などの生産に不可欠な素材であり、同時に発生する塩素も、塩化ビニール樹脂やポリカーボネートの原料となり、経済成長にともない需要が拡大する化学品である。また、苛性ソーダの誘導品である重曹は、腎臓疾病患者向けの透析薬剤に欠かせない原料であり、国内シェアトップである。今後も同事業では東南アジアの成長に応じた増産体制を築き、地域No.1の地位を盤石なものにしていく。

フッ素化学・スペシャリティ事業においては、環境、エネルギー、半導体、ディスプレイ、光関連、メディアなどの次世代市場で、高度フッ素設計技術・加工・ポリマー技術と独自の提案力を付加価値としてお客さまに提供することにより、ソリューション型ビジネスを展開。世界初の透明フッ素樹脂「サイトップ®」は光学、半導体の画期的な新素材として優れた性能が注目されている。さらに、高機能フッ素樹脂フィルムや、液晶材料なども市場競争力のある製品を次々と送り出している。また、世界で初めての溶剤可溶型塗料用フッ素樹脂「ルミフロン®」、フッ素系撥水撥油防汚加工剤「アサヒガード®」など多様な製品を創出している。

医薬品事業は、合成医薬品とバイオ医薬品からなり、どちらもCDMO(医薬品の開発製造受託)事業を中心とし、積極的なM&Aを行いながら新たな収益の柱となるべく成長を続けている。フッ素化学の技術をベースとした合成医薬品事業は、AGC若狭化学に加え、新たにスペインの工場を仲間に加えることを決定した。遺伝子組み換えタンパク医薬品の製造を行うバイオ医薬品事業では、すでに米国、デンマーク、ドイツに拠点を持ち、グローバルに活動している。オリジナル原薬の開発、製造も行っており、緑内障治療薬タフルプロストは世界70ヵ国以上の患者さんに使用されている。

化学品の事業領域は、化学・食品・電機・自動車・医薬などをはじめとする幅広い産業分野にわたり、各産業で新しい素材ソリューションを提供しつづけている。営業部門は、こうした広範囲の製品群の展開にともない、若いうちから担当製品を任され、国内のみならず欧米・中国・東南アジアなど世界のさまざまな業種のお客さまとコミュニケーションを取りながら、ニーズをしっかり掴みマーケティングや営業活動を続けている。また、柔軟性と創造性をフル活用することで、新規事業など新しいビジネスの担い手になれるチャンスもあり、現在も若手の営業担当がグローバルに活躍している。

将来展望

“Chemistry for a Blue Planet”を掲げ、
環境・エネルギー・ライフサイエンス分野に注力する

これまで化学は、快適で便利な暮らしに役立ってきたが、同時に環境に負荷をかけてきたことも事実である。世の中が環境問題に直面してきた1960年代後半から、AGCの化学品事業は、環境を切り口にした技術革新を続けている。

1973年、当時の通商産業省は、水俣病の発生を契機に日本の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の製造法を、水銀を用いた水銀法から水銀を使わない製法へ転換することを求めた。「イオン交換膜法による製塩プラント開発の経験を、イオン交換膜による苛性ソーダの製法に応用できないだろうか。この技術ができれば、低エネルギー(低電力)で、環境に優しく、さらに高品質・高濃度の苛性ソーダをつくることができる」。 この熱き思いは、やがて1975年、世界で初めてのイオン交換膜による食塩電解パイロットプラントの運転成功につながった。翌1976年には、千葉工場での商業生産がスタート。今日では、世界の苛性ソーダ生産の3/4が、イオン交換膜に替わった。

現在、世界に10億台以上存在する自動車のほとんどが化石燃料を燃やし、CO₂を排出している。HV車やEV車の普及が進んできたが、究極の自動車駆動システムは、燃料電池と言われて久しい。すでに自動車メーカーでは、コンセプトカーの生産実績も増えはじめている。この燃料電池技術の中核は、なんと上述したイオン交換膜の技術なのだ。燃料電池技術のポイントは、選択的に電子を移動させることにある。その技術は、40年前に開発した高耐久性のフッ素樹脂からできたイオン交換膜の技術が使われている。

そして今、AGCの化学品事業は、“Chemistry for a Blue Planet”をメッセージとして発信している。「私たちは化学の力を通じて、安全、安心、快適で、環境に優しい世の中を創造します」。この言葉を胸に、化学事業は化学のさらなる可能性を探求し、今後も「環境・エネルギー・ライフサイエンス分野」に力を発揮していく。

日本、中国、ドイツ、ブラジル、etc.
世界の都市で活躍するAGCの化学製品

世界で最も高い電波塔だけに、頻繁にメンテナンスすることが難しい「東京スカイツリー®」(634m)。そこで外装の塗料に採用されたのが「ルミフロン®」だ。商品化以来、20年間以上のメンテナンスフリー実績を持ち、長期視点に立つとVOC(※)排出量も削減できるメリットが評価された。

また、2010年の上海国際博覧会で日本館に採用された高機能フッ素樹脂「アフレックス®」は、高耐熱性・耐薬品性・耐候性・非粘着性・電気特性・透明性などの優れた特長を持つ。その生産・販売量ではAGCが世界NO.1で、2006年のドイツに続き2014年ブラジルで開催された世界的なサッカーイベントのメインスタジアムに使用されている。近年は太陽電池関連の環境商品としても採用されており、表面材や裏面材に使用することで長期耐久性や信頼性向上に寄与している。さらに、ノートパソコンや携帯電話での利用が期待されるフレキシブル太陽電池の発電層(特殊なシリコン)をカバーする素材としても活用され、その用途は広がるばかりだ。

(※)揮発性有機化合物。環境汚染や健康被害を招く原因になり得る。