AGCが変えようとするもの

VISION 01
ACG × Takram

MaaS
-新しい時代がやってくる-

佐々木康裕氏が所属するTakramは、デザイン・イノベーション・ファームとして、企業のコンサルティングを行っており、クライアントには自動車メーカーもある。AGCで自動車用ガラスのマーケティングを担当する渡信彦と、未来のモビリティと素材の可能性について語り合った。
  • 渡 信彦
    渡 信彦
    Nobuhiko Watari
    オートモーティブカンパニー マーケティング室
    マネージャー(工学博士)
    2012年入社
    米国ミシガン大学で流体力学を研究し、博士号を取得。企業でのものづくりに従事したいと考え帰国し、素材の基礎研究に力を入れているAGCに親和性を感じて入社。中央研究所(当時)所属の後、事業開拓部を経て現職。
  • 佐々木 康裕
    佐々木 康裕
    Yasuhiro Sasaki
    Takram ディレクター ビジネスデザイナー
    佐々木氏がメインに手がけているのは、クリエイティブとビジネスの融合。デザインリサーチから、プロダクト・事業コンセプト立案、ローンチ・グロース戦略立案などを得意とする。直近では、文具やオフィス家具、自動車などの未来ビジョンの立案プロジェクトにも関わっている。
※所属部署は取材当時のものです。
MaaSとは
MaaS(Mobility as a Service)とは、マイカーに限らないあらゆる交通手段によるモビリティ移動を一つのサービスとしてとらえ、ICT を活用してシームレスにつなぐ新たな「移動」の概念。
  • theme01

    サービスとしての
    モビリティへの変化

    佐々木
    コンサルティング業務のなかで、自動車業界の大きな変化を感じています。所有から共有へという流れもあるし、都市交通の在り方も問われはじめています。自動車はそもそも移動手段ですが、自動車の配車サービスが登場し、次は自動車だけではなく電車や自転車などのモビリティを組み合わせた適材適所の移動をつなぐマルチモーダルなサービスに変わっていくでしょう。そのなかで、自動車メーカーはメーカーというより、モビリティサービス業に変わっていくと思います。
    モビリティの変化は私も感じています。MaaSってことが最近よく言われますが、自動車メーカーは車両を製造・販売するだけじゃなく、サービスも含めた提案をする動きが目立ちますね。CASE (Connectivity(接続性)、Autonomous(自動運転)、Shared/Service(シェア/サービス)、Electric(電動化))といわれる大きなトレンドのなかでも「S:シェア/サービス」の部分に乗り出したことが、自動車業界にこれまでになかった大きな変化を生みそうです。
  • theme02

    モビリティの世界が
    変わるなかでAGC、
    Takramはそれぞれ
    どんな役割を果たす?

    佐々木
    その変化のなかで、Takramはあくまでも黒子ですから「こうしたい」という主張をすることはないですが、クリアに未来を見通し文化的にも社会的にも価値が高い提案をすることで、クライアントとともにより良い未来をつくっていくのが使命だと思っています。
    私たちマーケティング室のミッションは主に二つです。一つは既存の技術や開発中の技術の嬉しさを「見える化」してお客さまにお届けし、多様化するグローバルニーズに応えていくこと。もう一つが、まさに未来のモビリティへの提案です。つまり、将来の市場環境がどのように変わるのか。新たなニーズや価値観が生まれるなら、こういった製品がなくちゃいけないと提案を考える。そういった新しい価値の提案、創造をしていく役割です。そのミッションを受け、私の実際の日々の業務として、社外コラボレーターと共同で行う未来の商品アイデア創出活動をマネジメントしたり、そのなかで生まれたアイデアをプロトタイピングして海外のAGCメンバーと一緒に世界中の潜在的なお客さまにプレゼンテーションする業務を行っています。モビリティの未来像に関しては、私も佐々木さんと同じく、自動車の乗り方・使い方も変わってくると考えています。そうなると、素材にも新たなニーズが生まれてきます。素材としての安全性と品質を担保するのは大前提ですが、モビリティの変化をとらえた上で、「ガラスにこんな機能があれば嬉しいよね。快適だよね」といった未来の声を想像しながら、AGCなりの新しいソリューションを提案していきたいですね。

    インタビュー風景01

    インタビュー風景02

  • theme03

    モビリティの新しい姿と価値

    佐々木
    安全性、信頼性にプラスアルファってことですね。
    はい。安全も現在の安全とは少し違った視点が加わるかもしれません。現在の自動車の安全は車両安全性だったりしますが、ライドシェアがさらに普及したら、乗る人にとっての安全性は車両安全性だけではなく、ドライバーと同乗者との間の安心感や、プライバシーを担保される安全も重要になりそうです。そこに新しい素材のニーズが出てくるかもしれません。
    佐々木
    今後、サービスとしてのモビリティが拡大すると自動車にはサービスの受け皿としての役割が求められるかなって思っています。それは大きく2種類あって、特定のサービスに特化した箱としての自動車と、多様なサービスの受け皿となる、素の箱のような自動車です。救急車やパトカーなど特化した自動車は市町村でシェアしてもいいし、移動販売の自動車もお昼はランチボックスを提供して、夜はラーメン屋さんに変身してもいい。多様なサービスの受け皿になる素の箱は、すでに日本の自動車メーカーが発表しています。宅配便のトラックとしても使えるし、移動オフィス、移動販売用の自動車としても使えます。このような自動車は、デザインが極めてシンプルになって、サービスを提供する人が白地のキャンパスに色を付けていくことになる。自動車メーカーがデザインを決めるのではなく、サービスの提供者や利用者が決めることになります。
    建築では注文住宅のように、住まい手が自由に内装を決めることがありますが、共通していますね。
    佐々木
    これまでは自動車メーカーが決めたデザインや色を消費者が選ぶという、二者の関係ですが、サービス提供者が間に入る場合には、三者の関係になってきます。自動車メーカーではなくサービス提供者が、自分たちのサービスに沿った形のデザインに変えていくこともあり得るわけです。
    私たち素材メーカーからすると、ステークホルダーが増えていく時代なわけですから、そこはきちんと注視しないといけないですね。自動車メーカーは大きなテーマとして、都市の中をさまざまな情報を受け取りながら、ストレスなく移動できる自動車づくりを考えはじめているのではないかと思いますし、そうした自動車づくりを支える領域が素材メーカーとしても広がるのかなと思っています。チャンスですから、そこは何としてもついていきたいですね。

    インタビュー風景03

    インタビュー風景04

  • theme04

    分野をまたいで素材展開するDNAが、
    未来を拓く

    佐々木
    面白いと思うのは、完成の概念が変わってくることですね。今までは自動車を出荷した時点が完成品でしたが、素の箱を提供してサービス提供者が利用者にサービスをする場合、おそらく永遠に未完成ですよね。ハードウェア、自動車の果たす役割が変わってくると思います。サービス提供者はサービスの仕方をどんどん変えていくでしょうし、自動車メーカーはプラットフォームを提供する役割に変わるかもしれません。素材もどんどん変わらないといけないし、ガラスだけでなくタイヤもエンジンも変わるかもしれません。技術的なチャレンジがこれからさらに必要になるんじゃないでしょうか。
    用途や使う人によって最適な仕様が異なってきますから、それに合わせた素材や形が求められるでしょうね。面白いと思うのは、AGCはガラス一つをとってもいろんな分野にまたがっているんですよね。私は自動車部門ですが、AGCは建築、電子デバイス分野のガラスも製造・提供しています。AGCは異分野を横断して素材を応用展開するDNAを持っていると思っています。建築で「これいいね」ってものが自動車でも使えたり、その逆も然りです。自動車を、利用シーンによってより快適にしたいといったニーズが生まれると、どんどん住まいづくりの発想に近づきます。お気に入りのソファにしたい、天候に合わせて光を調整したいという風に。その点はすごく発展性があるのかなと思います。
    佐々木
    それは面白いポイントですね。今、いろいろな業界で、それぞれの垣根が溶けてきているんです。自動車メーカーが、飲食サービスや移動サービス、物流サービスを始めたり、いろいろなことが起きる可能性があります。ベンチャー企業も業界の間や業界がまたがったところで起業していますが、AGCが自然にそういったことができているのは面白いですね。

    インタビュー風景05

    インタビュー風景06

  • theme05

    分野横断が、
    未来の伸びしろと
    多様なベクトルを生む

    佐々木
    別の言い方をすると、マッシュアップ、つまり既存のものにプラスアルファをして新しいものをつくることですが、素材産業はマッシュアップの柔軟性が高いような気がします。例えばガラスはベーシックな素材ですから「ガラス×プラスアルファ」で、さまざまな分野、製品に水平展開できるんじゃないかと思います。水平展開性とマッシュアップ容易性がAGCの強みですね。
    その強みを生かしたいですね。余談になりますが、私が大学で携わった工学分野の研究では、特定分野を深く掘り下げて発見を求めるアプローチとは別に、既存分野の知識を他の分野で使うアプローチもあると考えていました。私は後者のアプローチで、流体シミュレーションの技術をバクテリアの動きの解析に使った結果、新しい発見がありました。こうした発想は分野を横断するという意味で、素材メーカーとしても重要な考え方かなと思います。
    佐々木
    素材メーカーとしてのAGCの伸びしろは、サービス提供者のような事業者が登場すると大きくなるでしょうし、伸びしろのベクトルも多様化すると思います。そこでさまざまなニーズに対応しながら、柔軟な発想でものづくりをしていくことで面白い未来になっていきます。AGCへの期待値がどんどん大きくなっていきそうですね。業界をまたいで、新しい価値をつくるチャンスもどんどん広まっていきそうです。
    例えば透明度が変わる自動車向けのガラスがすでにあるのですが、おっしゃるような未来になったらサービスの提供方法によって、使われ方のバリエーションが広がるはずです。あるいは、ニーズが少なかったガラスでも、まったく違う別視点から「ここで使いたい」といった声が上がるかもしれません。今日はこれからの素材の可能性を考えるいいきっかけになり、楽しい時間でした。
    佐々木
    こちらこそ。
    いずれまたご一緒できる機会があるといいですね。どうもありがとうございました。
    インタビュー風景07