2001年05月14日経営リリース
土壌・地下水調査結果及び今後の対策について
旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)及び旭硝子の関係会社である旭ペンケミカル(株)(本社:東 京、社長:勝部英一郎、以下APCと言う)は、平成12年3月から平成13年4月にかけて、千葉県 市原市五井海岸に所在する一体の土地である両社千葉工場敷地内の地下水等に関する調査を実施しま した。その結果、揮発性有機化合物による高濃度の土壌・地下水汚染が存在していることが判明しまし た。また、この汚染は深部まで達していることも判明しました。
現段階のデータからは敷地外への汚染は見られません。
しかしながら、近隣住民の皆様にご迷惑をおかけしないことを最優先とし、将来にわたり周辺への環 境面の影響を生じさせない為に、先ず汚染物質の両社工場敷地外への拡散を遮断すべきと判断しました。 このため行政当局のご指導を頂きながら汚染物質の拡散防止対策工事を早期に着工し、平成13年度末 までに完成させる予定です。この拡散防止対策工事費用は、現時点で30億円程度になる見通しです。
また、併せて、敷地内の詳細な土壌・地下水汚染状況を継続して調査し、最適な浄化方法を検討し、 恒久的な浄化対策を実施して参ります。
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経緯
平成6年、旭硝子及びAPCはアルカリ水の岸壁からの漏洩防止措置として、両社千葉工場敷地の北 側から東側にかけての海岸線沿いに鋼矢板による遮水壁を設置し、遮水壁内側の地下水位を一定に維持 するために揚水処理を計画しました。この時点で県・市の指導を受け、両社工場の揮発性有機化合物製 造履歴を踏まえ、アルカリ水と併せて揮発性有機化合物の処理が可能な揚水・浄化設備を設置しました。
揚水を開始したところ、揚水中に揮発性有機化合物が含まれていることがわかりました。調査の結果 揮発性有機化合物が地下浸透しているエリアを確認し、その部分が遮水壁の設置範囲内に限定されると 判断し、この揚水処理設備による浄化を継続して実施してきました。
その後、平成9年に地下水汚染に対する水質汚濁防止法の規制が強化され、さらに平成11年に環境 庁(当時)より「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針及び同運用基準」が公表されました。
これまでの経緯から市原市の助言もあり、「指針」に基づいて土壌・地下水を調査することを計画し、 社外の専門調査機関と連携して平成12年3月より平成13年4月にかけて調査いたしました。
その結果、土壌・地下水汚染が深部にもあることを確認し、対策案を含め、千葉県・市原市に報告し ました。
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調査結果
敷地内の地下水を調査した結果、地下水汚染は浅部、深部共に敷地内の北東部の旭硝子有機エリア及 びAPCエリアに分布していることがわかりました。地下水汚染濃度は、深度12m程度に存在する水 を透しにくい粘土層よりも上部の地下水で最も高く、1,2-ジクロロエタンが地下水環境基準の130,000 倍、テトラクロロエチレンが同9,500倍、トリクロロエチレンが同8,700倍、ジクロロメタンが同1,100 倍、四塩化炭素が同390倍を示すことがわかりました。しかしながら、これら浅部における高濃度地下 水汚染は、いずれも遮水壁及び揚水井戸に向かって地下水が流れる範囲に分布しているため、現状の遮 水壁で遮断されており敷地境界外へは拡散していないと考えております。
また、地下水汚染は深部でも発見され、深度38m付近の地下水ではテトラクロロエチレンが地下水 環境基準の4,100倍、トリクロロエチレンが同3,700倍、1,2-ジクロロエタンが同550倍を示している ことがわかりました。
これら敷地内の地下水分析結果は表−1に示します。また、これまで得られた土壌分析結果を表−2に示します。
また、図−1に既設の遮水壁・揚水井戸設置位置及び地下水汚染の最高濃度検出地点を示します。
なお、深度38m以上(100m程度)でも地下水汚染を検知していますが、非常に局所的であるこ とを確認しております。
さらに深部における地下水の移動はきわめて小さいことを確認しております。
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周辺環境影響調査
両社工場周辺への環境影響については以下の通り確認しております。
両社工場岸壁より採取した海水について分析した結果では、すべて環境基準値を下まわっています。
また、内陸方向への影響については、国道16号線沿い緑地帯の土壌ガス調査を実施しましたが不検 出でした。以上のデータから、敷地外への汚染はないと、判断しております。
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汚染原因
これまで社内で原因究明した結果、過去に使用していた地下配管からの漏洩があったことを確認して います。その他、設備の不具合及び容器・機器類の取り扱い中に誤ってこぼしたことが原因であったと 推定しています。
これらの地下配管については、既に地上化し、さらに、設備の改造、取り扱い方法の改善により、現 在では、新たな漏洩は全く発生しておりません。
(注)旭硝子では、昭和40年にクロロメタン類(ジクロロメタン、四塩化炭素等)の製造を開始し APCでは昭和43年にトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2-ジクロロエタンの製 造を開始しております。
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今後の対策
今後の対策については「指針」に基づき、さらに県・市ともご相談しながら、以下の内容で実施する 予定です。
(1)拡散防止対策
汚染物質の両社工場敷地外への拡散を遮断することを最優先課題として取り組みます。
具体的には、地下水汚染の深さに対応して、現在の遮水壁よりさらに深部まで到達する遮水壁(深 さ38m)設置と揚水処理による地下水拡散の遮断を実施します。
また、深度38m以上の地下水汚染については、局所的であることと、地下水の移動もきわめて 小さいことが確認されているので揚水処理による拡散防止と浄化処理を実施します。
(2)浄化対策
現在、継続実施している地下水揚水及び浄化処理を今後も実施して参ります。
また、遮水壁設置後の揚水・浄化対策を行うと共に、工場敷地内部の調査もさらに進め、その結 果に基づいた最適な敷地内の浄化方法を検討し、恒久的な浄化対策を実施して参ります。
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その他
本件に関する近隣住民の皆様からのお問い合わせをお受けする「お問い合わせ窓口」を旭硝子千葉工 場内に以下の通り設置いたします。
名 称 : 近隣住民の皆様からのお問い合わせ窓口 場 所 : 旭硝子千葉工場(市原市五井海岸10番地)内 電 話 : 0120−433−473(フリーダイヤル) 期 間 : 平成13年5月14日から当分の間
以 上
(ご参考)
- 旭硝子(株)千葉工場および旭ペンケミカル(株)千葉工場の概要
項目 旭硝子(株)千葉工場 旭ペンケミカル(株)千葉工場 所 在 市原市 五井海岸10番地 市原市 五井海岸10番地 代表者 工場長 友田 勝彦 取締役工場長 木村 益実 操業開始 昭和34年11月 昭和43年2月 敷地面積 615,982m2 40、865m2 従業員数 640名 62名 主要生産品目 液体塩素、炭酸カリウム、
苛性ソーダ、塩酸、
フッ素樹脂、水酸化カリウムトリクロロエチレン、
1,2ジクロロエタン製造品出荷額
(平成12年)582億円 115億円 -
旭硝子(株)と旭ペンケミカル(株)両社の関係
旭ペンケミカル(株)は、昭和41年に設立された旭硝子(株)の関係会社であり、旭硝子(株)と米国PPG 社で各50%の株式を所有し、同社製造品の販売は、主として旭硝子(株)が行っております。
以 上
地下水(観測井)分析結果 (表−1)
物質名 | 地層(深さ) | 最高 濃度 (mg/l) |
環境 基準 (mg/l) |
倍数 (環境基準 に対する) |
図−1 凡例 |
ジクロロメタン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
22 0.29 |
0.02 | 1100 15 |
|
四塩化炭素 | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
0.77 0.0051 |
0.002 | 390 3 |
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トリクロロエチレン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
260 110 |
0.03 | 8,700 3,700 |
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テトラクロロエチレン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
95 41 |
0.01 | 9,500 4,100 |
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1,2-ジクロロエタン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
510 2.2 |
0.004 | 130,000 550 |
ボーリング土壌分析結果 (表−2)
物質名 | 地層(深さ) | 最高 濃度 (mg/l) |
環境 基準 (mg/l) |
倍数 (環境基準 に対する) |
図−1 凡例 |
ジクロロメタン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
0.08 0.041 |
0.02 | 4 2 |
A |
四塩化炭素 | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
0.021 ND |
0.002 | 11 - |
B - |
トリクロロエチレン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
57 66 |
0.03 | 1,900 2,200 |
C |
テトラクロロエチレン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
35 190 |
0.01 | 3,500 19,000 |
C |
1,2-ジクロロエタン | 浅部(地下12m程度) 深部(地下38m程度) |
17 0.009 |
0.004 | 4,200 2 |
D |
図−1
凡例
:既設 遮水壁設置位置 :既設 揚水井戸設置位置
地下水汚染最高濃度検出地点 | 土壌汚染最高濃度検出地点 |
ジクロロメタン | A ジクロロメタン |
四塩化炭素 | B 四塩化炭素 |
トリクロロエチレン | C トリクロロエチレン テトラクロロエチレン |
テトラクロロエチレン | D 1,2-ジクロロエタン |
1,2-ジクロロエタン |
- 本件に関するお問い合わせ先
- 旭硝子(株) 千葉工場総務グループ主幹部員 森藤 久志
- TEL: 0436-23-3121
- 旭硝子(株) 広報室長 井本 健一
- TEL: 03-3218-5519