2002年03月12日製品リリース
透明全フッ素樹脂ベースの光導波路デバイス開発に成功
旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、NTTアドバンステクノロジ(株)(本社:東京、社長:田崎公郎。以下、NTT−AT)と共同で、ブロードバンド時代の情報通信ネットワーク構築に不可欠な部材である光導波路デバイスを、透明全フッ素樹脂をベースとして開発することに成功しました。このデバイスは、近赤外から通信用赤外光までの透明性に優れ、幅広い波長帯で使用できるという点において画期的な開発となります。
光導波路とは、屈折率の低い材料の中に、屈折率の高い材料を線状に埋め込み加工することで光を閉じ込め、電気配線のように光を曲げたり分岐したりする回路のことで、光スイッチ、光トランシーバなど、高速・大容量の光通信ネットワークに関連する各種制御機器のキーとなる重要なデバイスです。光導波路の材料としては、これまで主にガラスや一部のプラスチックが用いられてきましたが、ガラスでは製法上量産性が良くないこと、プラスチックでは光の吸収や偏波依存性(注1)といった問題があり、より量産性が良く、光学的に優れた材料が求められていました。
当社は、ルキナ(注2)のベースにもなっている非晶質透明フッ素樹脂(製品名:サイトップ)を用い、光導波路作製に最適な材料を開発しました。さらに、NTT−ATと共同で、同社の導波路設計技術及び加工技術を活用して、デバイス開発にも成功したものです。
今回開発したデバイスは、今後、メトロ・アクセス系光ネットワークでの普及が見込まれる4chWWDM(Wide passband−WDM)システム(注3)用光合分波器です。サイトップの特長である、
- 広帯域における透明性(図1参照)
(0.8〜1.7μmのどの波長でも使用可能 ) - 超低複屈折
(非晶質であり異方性を持たない) - フッ素樹脂の持つ高い耐薬品性、耐環境性、耐吸水性
(吸水率0.1%以下 ) - 量産性
(製膜が容易、ガラスに比べて低温プロセスで製作可能)
を備え、1.2μm、1.31μm、1.48μm、1.54μmという約0.1μm間隔の4波長を合 波でき、1本の光ファイバーで伝送した後、分波することができます(図2参照)。
WDM関連の世界市場は、2005年には5千億円、2010年には3兆円と、急速に拡大すると見られています。当社は、今回開発した導波路作製技術を応用し、今後、合分波器、スイッチなどの光信号制御機器への事業展開を行うこととします。売上規模は、05年度5億円、10年度25億円を目標としています。
なお、今回開発した光合分波器を使った伝送システムのデモンストレーションを、3月19日から米国アナハイムで開催される光ファイバー通信に関する国際会議「OFC2002」に併設される展示会において公開する予定です。「OFC2002」ではルキナ、EDF(注4)、非球面レンズ(注5)など当社の光通信に関連する他の製品群も合わせて同じブースで展示する予定です。
以 上
<参考>
注1.偏波依存性 : 物質に配向があると光学的に方向性が生じ、偏光の向きにより光の伝播に差が生じること。
注2.ルキナ : 透明全フッ素樹脂を用いた当社のプラスチック光ファイバーの製品名。
注3.WDM(Wavelength Division Multiplexer:波長分割多重): 1本の光ファイバーに多数の波長を多重して伝送する技術。波長を多重する際、各波長間隔が非常に狭い方式をDWDM(Dense−WDM)、波長間隔が比較的大きい(50nm以上)方式をWWDM(Wide passband−WDM)と呼ぶ。WWDMは波長間隔が広いことにより、使用環境によるレーザーの発振波長の変動を吸収でき、また、信号間のクロストークに余裕を持たせることができる。
注4.EDF(Erbium Doped Fiber) : エルビウムイオンをドープしたガラスで作られた光増幅用ファイバー。
注5.非球面レンズ : 光信号を効率よく光ファイバーに集光させるためのレンズ。
図1.サイトップ直線導波路の伝損スペクトル
図2.4ch WWDM 伝送システム模式図
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- 旭硝子(株) 広報室
- 担当:二瀬(にのせ)
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