Jan.05 2026
BIPV(Building-Integrated PhotoVoltaics)という製品をご存じだろうか。合わせガラスに発電セルを挟み込んだ建材一体型太陽光ガラスで、オフィスビルや商業施設などの窓ガラスに使用すれば、建物が発電所になる。AGCは「サンジュール」という名称でBIPVを展開。異業種9団体を巻き込み、「新規の土地開拓を伴わない太陽光発電」という新たな価値提案で、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現を後押しする。
BIPVは太陽光発電の機能を持ちながら、建築用ガラスと同じ強度や断熱性を持つ製品だ。実はこの製品の歴史は長く、20年以上にわたる。今改めて注目を集める理由は、脱炭素に向けた潮流だ。政府は2050年カーボンニュートラル実現を掲げ、40年までに太陽光発電の比率を現状の約2~3倍に大きく引き上げ、主力電源化する方針を打ち出している。これを受け、建築物を発電場所として活用する考えが一層の広まりを見せているのだ。「建築物を有効活用できるBIPVが注目されています」とAGC建築ガラスアジアカンパニーの内田健太氏は話す。
従来の太陽光発電は巨大なソーラーパネルを設置する広い土地が必要だ。適切に設置されていないメガソーラーは環境や景観を壊してしまうこともあり、国も規制強化の考えを示している。しかし、BIPVは新たな土地の開拓を必要とせず、街なかにすっと溶け込んで見栄えを損なわない。壁、ファサード、天窓、手すりなど、ガラスが設置できる場所ならどこにでも取り付けができ、再エネを生み出せる。街のあらゆるスペースを有効活用することが可能だ。中でもAGCが展開する「サンジュール」は、サイズや形状、セルの配置方法を自由にカスタマイズでき、採光性も確保されているため、様々な建築ニーズに対応できる。
BIPVの更なる普及に向けた、同社の象徴的な取り組みが「JSA規格」の発行だ。JSA規格は日本規格協会が定める民間規格で、製品やサービスの品質・性能・安全性などを一定の基準に揃えるためのルールのこと。
「BIPVの重要性が広く理解されるために、新規の土地開拓を伴わない太陽光発電がきちんと評価される『規格』を作りたいと考えました。そしてそれが社会全体の利益となるよう、9つの団体が参画する業種横断型の規格開発グループを組成し、案を練りました」と、同社事業開拓部の盤指豪氏は語る。前例のない取り組みは手探りだったが、24年12月、「太陽電池パネルを設置した建築物等の土地有効活用スコアの評価方法」に関するJSA 規格(JSA-S1024)が発効。「建物に設置した太陽光発電パネルの定格出力数の合計を、建物に使用されている土地の利用面積で割ったものを『LUCF値』と定義しました。この数値が大きいほど、『土地を有効活用して太陽光発電ができている建物』となります」(内田氏)。規格のポイントは、多くの発電パネルを設置しても、そのために広い土地を使っていると値が高くならないことだ。生物多様性保全への配慮が評価軸になる。
新たな土地利用改変を伴わない再エネ調達を推奨する規格「JSA-S1024」。屋根置き型、ペロブスカイト型、BIPVなどの太陽光発電を建物設置する際の「土地の有効活用度」をスコア化する。再エネ調達時の生物多様性保全への配慮を見える化し、建物の価値やESG価値向上につなげることを期待する。規格開発に携わった企業・組織は次の通り。エシカル協会、オウルズコンサルティンググループ、日本規格協会、日本政策投資銀行、三菱HCキャピタル、三菱UFJ銀行、東京建物、パナソニックホールディングス(五十音順)
内田氏は振り返る。「規格の発行は世の中に新しい価値を提示する挑戦でしたが、興味を持ってくださる自治体や企業は着実に増えています」。参画企業からも「生物多様性保全に配慮した新規格策定は、再エネ創出に取り組む顧客の支援につながる」等の評価の声が集まる。
新たな規格は作り上げたが、更なる市場拡大の取り組みは続く。「サンジュール」は25年以降も、東京建物八重洲ビルや羽田空港第2ターミナルなど、着々と導入事例が増えている。私たちの働く街がまるごと発電所に変わる日も近いかもしれない。
「日経ビジネス電子版」2025年11月に掲載された広告記事より転載