CTOメッセージ

「両利きの開発」「オープンイノベーション」「DX」の三本柱で開発スピードを加速していきます。

代表取締役 兼 専務執行役員
CTO/技術本部長
倉田 英之

開発スピードを加速し、時代の変化に対応していく

AGCグループは、創業以来100年以上にわたる歴史のなかで、「材料技術」「機能設計」「生産技術」といったコア技術を磨き上げてきました。同時に、分析・評価やシミュレーションなどの共通基盤技術を蓄積・深化させ、コア技術と組み合わせることによって、単一技術ではなしえない付加価値の高いソリューションを創出し、それぞれの時代における社会課題を解決してきました。
現在、社会課題は複雑性を増してきており、お客様から求められるソリューションは高度化、多様化しています。更に、社会変化のスピードが一層速まるなかで、迅速かつタイムリーにソリューションを創出することの重要性が高まっています。AGCグループでは「両利きの開発」「オープンイノベーション」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の三本柱で開発スピードを加速していくことにより、こうした時代の変化に対応し、引き続き社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

「両利きの開発」-既存事業の競争力を高めながら、未来を創る

まず、「両利きの開発」についてご説明します。「右利きの開発」とは、既存の生産・基盤技術を革新し、お客様と共に新商品を開発することを指します。お客様に密着し、そのニーズにお応えする形での開発になりますので、現状の課題をもとに改善策を積み上げていくようなフォアキャスティングのアプローチであるといえるでしょう。
一方、既存の生産・基盤技術を再定義し、市場を新たに開拓することを「左利きの開発」と呼びます。こちらは、将来起こりえる大きな時代の変化を予測し、新事業を創出することで、その変化の波を乗り越えていくようなバックキャスティングのアプローチであるといえます。
この2つはどちらも重要であり、「右利きの開発」によって既存事業の競争力を高めながら、「左利きの開発」で未来を創ることにより、AGCグループは成長・進化してきました。この両方のバランスをとることが「両利きの開発」を進める要諦であり、限られた経営資源を「右利きの開発」と「左利きの開発」にどのような配分で投入するのかを考えるのが、私自身の役割です。全体を見ながら、最適なバランスとなるような経営資源の配分に努めています。

「オープンイノベーション」-外部パートナーとの協創を推進

次に「オープンイノベーション」です。AGCグループの保有する技術、もしくは、その組み合わせだけで課題を解決することが難しくなっている現代社会では、お客様をはじめ、大学・研究機関やスタートアップ企業などの外部パートナーとの協創が重要となっています。
近年の事例では、大手通信会社である株式会社NTTドコモとの共同開発が挙げられます。都市部では移動通信アンテナを設置する場所の確保が課題となっていますが、既存の窓ガラスの室内側から取り付け可能なガラスアンテナ「WAVEATTOCH®(ウェーブアトッチ)」を開発し、都心のビル窓をアンテナ化しました。
また、産学共同のオープンイノベーションにも力を入れており、東京大学や東京工業大学、名古屋大学などと共同研究を進めています。AGCグループとしては共同研究に携わる人財の育成につながり、大学にとっては学生の皆さんが知識と経験を身に付ける教育の機会となりますので、日本の開発力を高めていくという意味でも非常に意義のある取り組みであると考えています。
このような外部との連携に加え、グループ内における事業間の連携も促進してイノベーションの創出を加速するため、AGC横浜テクニカルセンター(YTC)内に協創空間「AO(アオ/AGC OPEN SQUARE)」を2020年に新設しました。AOでは、「つなぐ」「発想する」「ためす」をコンセプトに、協創の場を用意しています。更に、コロナ禍で感染拡大に注意しながらの運用とはなっていますが、協力企業や研究機関、大学など外部との連携も積極的に展開し、多くの皆さんに訪れていただいています。
また、従来2拠点に分かれていた研究開発機能をYTCに統合し、材料開発、プロセス開発から設備技術開発までをシームレスにつなぐ体制が整ったことで、研究員同士の交流も活発化しています。
新しいイノベーションを創出する場として、YTCには大いに期待しています。

DX-新技術や新手法を活用し、開発時間の短縮を実現

3つ目が「DX」です。例えば、材料開発や組成開発にAIやビッグデータ解析、データマイニングなどを活用する取組みをマテリアルズ・インフォマティクス(MI)と呼びますが、AGCグループではMIを推進することにより、研究開発の競争力強化、開発のスピードアップを目指しています。
MIを推進した成果のひとつに、環境対応型フッ素系溶剤AMOLEA®があります。通常、フッ素化合物の開発では、多くの候補化合物を実際に合成する必要があります。しかし、AMOLEA®の開発にあたっては、AGCグループがこれまで蓄積してきたデータ、世の中の公開論文から集めたデータをもとに構築したデータベースからAIを用いたシミュレーションを行い、候補化合物をあらかじめ絞り込んだ上で合成を行い、開発の効率化を実現しました。
このほか、VR(仮想現実)空間上で建築用ガラスや自動車用ガラスの設置イメージをお客様と共有したり、数値解析手法を用いて化学強化ガラスの破壊パターンを予測したりするなど、実際の試作や試験をシミュレーションに置き換えることによって、大幅な開発時間の短縮につなげています。

人財が育ち、技術が育ち、社会に貢献し続けるAGCグループを目指す

製造業にとって、技術は要です。世界に認められる技術を創出し続けることが、AGCの持続的な企業価値向上には欠かせません。そして、技術を創出するのは人です。人財が育ち、技術が育ち、それによりAGCグループが社会に貢献し続けていく。そういった土壌を築くことが、何よりも重要です。創業の精神である“易きになじまず難きにつく”という言葉が表しているように、常に高い目標を掲げることが大切です。どのような高い目標であろうとも、それをやり遂げる力がAGCグループにはあると私は確信しています。
一人ひとりが掲げた高い目標に寄り添い、対話し、その達成を支援すること。多様性を認め、様々な意見が言い合える職場、日々一人ひとりが希望に満ち、成長を実感できる職場であること。そのような従業員の皆さんが誇りに思える働きやすい職場をつくっていくことが、私自身の目指す目標であり、その実現に向けてCTOとしての責務を果たしていきます。