知的財産戦略

AGCにおいては、新たな価値を創出するために、各種の施策や仕組みがあります。そのなかで、知的財産関連の施策・仕組みとしては、下図に示すように、【知財情報・非知財情報に基づく戦略策定と実行】、【標準化戦略策定・ルール形成】、【事業に貢献する特許を生み出すための発明報奨制度】が挙げられます。
本セクションにおいては、これらの施策・仕組みについてご紹介します。

知財情報・非知財情報に基づく戦略策定と実行

事業価値の最大化に向けて自社の知財ポートフォリオをどのように構築/活用するかを決める戦略は、極めて重要になります。AGCでは、以下のステップを通じて、戦略策定・実行を進めています。
① あるべき姿の明確化:事業目標を達成するため、あるべき姿を明確化します。
② 情報解析:知財・非知財を含めた情報解析を実施して、現状とあるべき姿とのギャップを明確化します。
③ 戦略の策定:ギャップを埋めるための戦略を策定します。
④ 戦略の実行:戦略を実行フェーズに移行します。

標準化・ルール形成 戦略策定と実行

AGCでは、標準化などルール形成への取り組みも積極的に推進しています。新しい社会や市場の創出に向けて、全社の標準化戦略活動をCTOが統括し、コーポレート部門・事業部門・ 海外拠点における標準化活動や、標準化教育の実施による人財育成を進めています。コーポレー ト部門に配置された標準化専任の部署が全社横断的な機能を務め、各部門での活動をサポートし ています。また各部門や海外拠点の代表者から構成される全社標準化戦略会議をCTOが主催し、 次世代社会の創造と競争優位確立に貢献する戦略的活動の立案と実行を推進しています。
具体的には、標準化・ルール形成のステップを(1)ルール調査、(2)ルール分析、(3)戦略策定、(4)ルール形成、(5)ルール普及・活用の5段階に分け、特に戦略策定の対応立案までをルールインテリジェンスと位置付けて、戦略立案を強化しています。

具体的な活動としては、ISO(国際標準化機構)主導のルール形成においては、ZEBの標準化を主導し、その技術仕様書を活用してアジア新興国を主な対象としたZEB普及活動を展開しています。またIEC(国際電気標準会議)においては、スマートフォンのカバーガラス強度評価法の標準化を主導し、健全な市場の成長とAGC製品の適正な評価に貢献してきました。
さらには、ISOにおけるサーキュラーエコノミーや生物多様性、IECにおける削減貢献量や燃料電池、 ISO/IEC両方で開発が進むBIPV(建築物一体型太陽光発電)の標準化などにも積極的に参加し、取り組みを進めています。

事業に貢献する特許を生み出すための発明報奨制度

AGCでは、特許出願や調査などの知的財産権に関する従業員教育に力を入れるとともに、開発者が他社に影響を与える発明に取り組み、特許権の取得を奨励するため、インセンティブとして発明報奨制度を採用しています。特許出願をした場合、発明者に対して、出願時と登録時に報奨金を支払います。登録時の報奨金は、発明の革新性・独創性および特許権として他社に及ぼす影響度を考慮するAGC独自の評価に基づいて決定します。
現在の制度は2018年に導入したもので、利益の高い製品に関する技術に偏っていた従来制度に比べ、報奨対象が大きく広がり、報奨金を受け取る発明者の割合が増えたこと、発明が生まれてから報奨金を受け取るまでの期間が短くなったことが特徴です。これにより、真に事業に貢献する特許の増加が期待されます。

知財ポートフォリオの進化

AGCは、世界中の特許データを基に戦略的なインサイトを提供する特許情報分析サービスの提供などを行うレクシスネクシス社(米国)が発表する「Innovation Momentum 2024: The Global Top 100」のレポートで「世界の科学技術の未来をリードするイノベーティブな企業100社」に2年連続で選出されました。
本選出は、これまでにご紹介した様々な施策・仕組みによって、他社に影響を及ぼす知財ポートフォリオが進化していることが評価されたものであると考えられます。
下図は、レクシスネクシス社の「LexisNexis® PatentSight+」を用いて作成した、AGCの特許ポートフォリオの量と質の経年変化を示したグラフです。直近の数年間で、量・質ともに向上していることが見て取れます。
「Innovation Momentum 2024: The Global Top 100」は、レクシスネクシス社の「LexisNexis® PatentSight+」の学術的に検証された独自の指標を用いて、企業が保有する特許の価値に基づいた競争力と過去2年間の知財ポートフォリオの変化における勢いの強さを評価するものです。
世界各地のあらゆる産業分野における企業を対象とし、上位100社が選出されます。