2020年06月30日経営リリース研究開発リリース

次世代パワー半導体材料開発のノベルクリスタルテクノロジーに追加出資

― 酸化ガリウムウェハの実用化を加速 ―

AGC(AGC株式会社、本社:東京、社長:島村琢哉)は、次世代パワー半導体材料開発会社であるノベルクリスタルテクノロジー(株式会社ノベルクリスタルテクノロジー、以下NCT、本社:埼玉、社長:倉又朗人)への追加出資を決定しました。NCTは現在4インチまでの酸化ガリウムウェハの開発・製造・販売に成功しており、100%に近い世界シェアを有しています。AGCとNCTは本追加出資により、2023年の酸化ガリウムウェハの実用化に向けて開発スピードを更に加速させていきます。

パワー半導体は、サーバー・自動車・産業用機械・家電製品など様々な電気・電子機器に組み込まれ、電力の制御を行う電子部品です。パワー半導体の性能は電力制御モジュールの省エネルギー化、軽量・小型化に直結するため、要求性能は年々上昇しており、既存材料であるシリコンよりも電力損失が少なく、耐電圧特性、大電流特性に優れた半導体材料が求められています。
酸化ガリウムはシリコンと比較し、3000倍以上のパワー半導体性能指数*1を有する次世代パワー半導体材料です。その他の候補材料として開発が進んでいるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)と比較しても、酸化ガリウムは更に高電圧・大電流で使用できる可能性があり、高い注目を集めています。AGCはNCTの技術力の高さに加え、当社がガラス製造で培った高温溶解、研磨加工、洗浄などの無機材料量産技術を活かすことで、酸化ガリウムの早期量産化を実現できると考え、2018年に同社へ出資し、共同開発を開始しました。これまでに4インチ酸化ガリウムウェハの量産製造技術開発に成功しており、今後の更なる高品質化、ウェハ大型化を目指し、同社への追加出資を決定しました。
AGCグループは、経営方針 AGC plus の下、エレクトロニクス事業を戦略事業のひとつと位置付けています。今後も大きな需要の伸びが見込まれる半導体関連事業に対し積極的な開発・投資を実施し、半導体産業の発展に貢献していきます。

<注釈>
*1:バリガ性能指数、シリコンを1とした場合酸化ガリウムの推定値は3444となります。詳細は下表をご確認ください。

<ご参考>

■ノベルクリスタルテクノロジー社に関して
ノベルクリスタルテクノロジーは、株式会社タムラ製作所からのカーブアウトベンチャーおよび、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の技術移転ベンチャーとして2015年6月に設立されました。パワー半導体材料である、酸化ガリウム単結晶基板とエピタキシャルウェハの開発・製造・販売およびパワーデバイスの開発を行っています。2017年11月には、タムラ製作所との共同で、世界初の酸化ガリウムエピタキシャル膜を用いたトレンチMOS型パワートランジスタの開発に成功するなど、世界に先駆けて酸化ガリウムを用いたパワー半導体の実用化に向けた取り組みを進めています。
https://www.novelcrystal.co.jp/

■次世代パワー半導体材料の物性に関して

バリガ性能指数が高いほど、デバイス駆動時のオン抵抗が小さくなります。(下図)

◎本件に関するお問い合わせ先:
AGC株式会社 広報・IR部長 玉城 和美
担当:北野
TEL: 03-3218-5603
E-mail: info-pr@agc.com