2021年11月12日研究開発リリース

屋内5Gエリア改善に向けRIS反射板を開発

AGC株式会社(以下AGC、本社:東京、社長:平井良典)は、5Gミリ波(28GHz)帯の屋内エリア改善に向け、屋内の壁や天井に設置することで電波反射方向が切替可能な「RIS反射板*」を開発しました。本開発品はCCL製造子会社であるAGC Multi Material America社(旧AGC Nelco America社)の低損失基板に、位相制御可能な設計を適用した非常に微細な周期構造の人工表面を付与することで、従来の反射板とは異なり、電気的に任意に反射角度を制御することができます。
5Gミリ波を代表とする高周波数の電波は大容量のデータを高速で受発信できますが、直進性が高く減衰しやすいため、基地局アンテナから発信された電波は、建物などの構造物の裏側には届きにくいという課題があります。その改善策の一つとして反射板が期待されていますが、従来の反射板は特定の方向にのみ電波を反射させる仕組みであるため、屋内で広範囲にわたり受信電波強度を改善することはできませんでした。
この度AGCは仏Greenerwave社と共に、AGCのコア技術である低損失基板材料技術と電磁界設計・評価技術およびGreenerwave社のメタサーフェス設計技術を活用し、RIS反射板を開発しました。本RIS反射板は、日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純)および株式会社NTTドコモ(以下ドコモ、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:井伊 基之)の2社で行われた共同実験において、そのエリア改善効果が確認されました。なお開発したRIS反射板は、11月16日よりオンラインで開催される「NTT R&Dフォーラム― Road to IOWN 2021」にて展示予定です。
AGCグループは、経営方針 AGC plus 2.0 のもとモビリティおよびエレクトロニクス事業を戦略事業と位置付けています。なかでも5Gの実用化を大きな事業機会と捉えており、今後も次世代高速通信の発展に貢献する製品の開発・提案に取り組んでいきます。

* RIS (Reconfigurable Intelligent Surface) とは、反射板表面に電気的に位相を切り替える素子を配列し、反射方向を適応的に変えることができるメタサーフェス技術

<ご参考>

■NTTおよびドコモ2社共同実験に関して
本共同実験は、神奈川県横須賀市のNTT横須賀研究開発センタ内において実施されました。ドコモが屋内エリア設計と基地局運用を行い、NTTの反射制御技術をAGCのRIS反射板に適用しています。
本実験では窓を介して室内に浸透してきた基地局からの電波が、RIS反射板を介して室内の様々な方向に反射した場合の、受信電力の改善具合が検証されました。本実験環境下において、反射制御技術を適用したRIS 反射板を運用した状態と運用しない状態とで、28GHz帯の受信電力を最大で20dB程度改善することが確認されました。(評価する電波環境でその効果は異なるものとなります。)
■NTT R&Dフォーラム2021概要
イベント名 NTT R&Dフォーラム ― Road to IOWN 2021
概要 NTTグループR&Dの最新研究成果についての講演、展示
開催地 オンライン
会期 2021年11月16日~19日
展示番号 N13
URL https://www.rd.ntt/forum/
■Greenerwave社概要
所在地 6 rue Jean Calvin 75005 Paris
代表者 Timothee Laurent (Co-founder & CEO)
URL https://greenerwave.com/
◎本件に関するお問い合わせ先:
AGC株式会社 広報・IR部長 玉城 和美
担当:北野
TEL: 03-3218-5603
E-mail: info-pr@agc.com