ＡＧＣ（ＡＧＣ株式会社、本社：東京、社長：平井良典）は、東京大学^*1と協力し、地球温暖化係数が低く、エアコン向け冷媒の次世代スタンダードと期待される低GWP^*2冷媒AMOLEA^®1123（HFO-1123）の新たな組成開発に成功しました。これにより、AMOLEA^®1123の実用化に向け課題の一つとなっていた安全性に解決の目途が立ち、世界初となるフッ素系冷媒を使用したGWP10以下のエアコン向け冷媒の開発は最終段階に入りました。

現在、家庭用エアコンなどの空調機器の冷媒ガスとして使用されているハイドロフルオロカーボン（HFC）^*3は、GWPが高く環境負荷が大きいことから、モントリオール議定書キガリ改正^*4によりその生産量・消費量を大幅に削減することが求められています。とりわけ、家庭や店舗向けエアコンに使用される冷媒使用量は世界市場の過半を占め、GWPの低い冷媒の開発は喫緊の課題となっています。

そのような中、HFC削減のために期待が寄せられているのが、ＡＧＣのハイドロフルオロオレフィン（HFO）AMOLEA^®1123です。AMOLEA^®1123は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の助成事業の一環として2014年にＡＧＣが開発したHFOで、現在使用されているHFC R410A（GWP2090／CO2比2090倍の温室効果）と同等の性能を維持したまま、GWP1以下という、並外れた高い環境性能を兼ね備えた冷媒です。
このたび、東京大学が受託しているNEDOの「省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷媒・冷凍空調技術及び評価手法の開発」事業で見いだされた知見を基に、プロパンの添加によりAMOLEA^®1123の分解による急激な圧力上昇を一定レベルに抑える、安全な組成を開発することに成功しました。この組成は、GWPが低く汎用性が高いプロパン（R290：GWP 3／CO2比3倍の温室効果）を、AMOLEA^®1123（GWP 0.3／CO2比3分の1の温室効果）に一定比率添加するもので、今回の成果により、GWP10以下の冷媒開発は大きく前進し最終段階に入りました。

当社は今回の開発成果を活かし、家庭用・業務用エアコンを始め、様々な機器で使用される超低GWPかつ安全性の高い新冷媒を順次上市して参ります。また、2022年6月ASHRAE^*5申請を控えるGWP10以下のAMOLEA^®1123混合冷媒（AMOLEA^®10X）は、SAE^*6において、電気自動車の次世代冷媒として2025年の認定に向けた検討が進められています。

AGCグループは、中期経営方針 AGC plus-2023 における主要戦略の一つに「サステナビリティ経営の推進」を定め、素材イノベーションにより社会課題解決に貢献することを掲げています。今後も次世代冷媒の開発を通じて、気候変動防止に貢献してまいります。

＜注釈＞
^*1 国立大学法人東京大学
本開発は同大学の新領域創成科学研究科と共同で実施。
^*2 GWP （Global Warming Potential）
地球温暖化への影響を示す係数。自然冷媒の一種である二酸化炭素を基準に、そのガスがどれだけ温暖化する能力があるかを表した数字のこと。CO2のGWPを１とする。
本リリース中にあるAMOLEA^®1123、R290、R410AのGWPは、気候変動に関する政府間パネル（IPCC）第4次評価報告書の値・算出方法を参照している。
^*3 HFC(Hydrofluorocarbon)
塩素を含まずオゾン層を破壊しないため、代替フロンとして使用されるが、フロンと同等の強い温室効果をもたらす。CO2比675～2090倍の温室効果。
^*4 モントリオール議定書キガリ改正
2016年にルワンダの首都キガリにおいて開催されたモントリオール議定書の第28回締約国会議において、代替冷媒HFCの生産及び消費量の段階的削減義務等を定める議定書の改正（キガリ改正）が行われた。先進国については、2036年までその生産消費量を基準年に対して85%削減することが求められている。
^*5 ASHRAE
暖房・冷凍・空等・冷凍等に関する米国の学会で、関連機器や冷媒等の性能や安全性等の規格を制定し、承認等の 運用も担っている。　ホームページ：https://www.ashrae.org/home
^*6 SAE
米国自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers, Inc.)