2025年04月01日CSRリリース研究開発リリース

空気中のCO2回収効率を大幅に向上させる化学吸収液を開発

-大阪・関西万博にて実証実験を公開-

AGC(AGC株式会社、本社:東京、社長:平井良典)は、空気中のCO2を直接回収する技術であるDAC(Direct Air Capture)において、CO2を効率的に回収する化学吸収液(以下、本吸収液)を開発しました。DACは、2050年カーボンニュートラルの実現に不可欠な技術と言われており、世界各国で実用化に向けた研究が進められています。当社がDAC向けに開発した本吸収液は、PPG(ポリプロピレングリコール)を用いた非水系化学吸収液で、従来の水系化学吸収液と比較して、CO2回収時の消費エネルギーを大幅に削減することができます。
4月13日から開催される大阪・関西万博では、本吸収液を用いたCO2回収の実証実験が行われます。詳細については、こちらをご覧ください。

DACは、CO2回収装置を用いて空気中に存在する0.04 %のCO2を分離・回収する技術で、実用化に向けて様々な方式が研究されています。中でも、化学吸収液を用いてCO2を回収する方式は、装置の大規模化が容易であり、将来、工場等の大型施設での活用が見込まれています。化学吸収液の多くはアミンと水の混合物であるため、CO2を分離・回収する際に熱エネルギーを加えると水が蒸発し、余分なエネルギーが消費される課題がありました。

そこで当社は、CO2回収に必要な消費エネルギーを大幅に削減できる非水系化学吸収液を開発しました。本吸収液の素材であるPPG(ポリプロピレングリコール)は、揮発性が低く、蒸発に伴うエネルギーロスが少ないという特徴があります。さらに、PPGはアミン化合物との相溶性(互いに混ざり合う性質)が高いため、安定的にCO2を分離・回収することができます。

化学吸収液の比較図

また、本吸収液は、液化天然ガスの気化時に発生するマイナス160度の廃冷熱を再利用し、CO2を回収する “Cryo-DAC(クライオーダック)”*1方式での採用が見込まれています。
Cryo-DACにおける本吸収液の活用に関して、当社は2023年から名古屋大学と共同研究を行っています。今後当社は、名古屋大学が参画する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ムーンショット型研究開発事業」*2の再委託先として参画し、本吸収液の実用化に向けて、さらなる研究を進めていきます。
さらに、当社はCryo-DAC以外にも、工場排ガスに代表される様々なCO2含有ガスへの本吸収液の適用検討を進めていきます。

AGCグループは、中期経営計画 AGC plus-2026 における主要戦略の1つに、「サステナビリティ経営の深化」を定め、2050年のカーボンネットゼロ*3を目標として掲げています。当社グループは画期的な素材の開発を通じて、持続可能な地球環境の実現に貢献していきます。


〈注釈〉

*1

Cryo-DAC(クライオーダック)の仕組み(https://cryodac.my.canva.site/home

*2

ムーンショット型研究開発事業 冷熱を利用した大気CO2直接回収の研究開発(https://www.nedo.go.jp/content/800016056.pdf

*3

Scope1+2として。

◎本件に関するお問い合わせ先:
AGC株式会社 広報・IR部
TEL: 03-3218-5603