2025年06月12日研究開発リリース
東京大学と共同で、ガラスを従来の100万倍の速さでレーザー加工する技術を開発
AGC(AGC株式会社、本社:東京、社長:平井良典)は、2015年に東京大学大学院工学系研究科内に社会連携講座を開設し、ガラスの先端技術創出を目的とした共同研究を実施しています。このたび、同大学の伊藤佑介講師、張艶明特任助教らとAGCの研究グループは、ガラスなどの透明材料を従来の100万倍の速度でレーザー加工できる新しい手法を発明しました*1。本成果は、2025年6月11日(現地時間)に米国の科学誌「Science Advances」のオンライン版に掲載*2されました。
近年、生成AIの普及により情報処理量が増加し、より高速かつ省電力な半導体が求められるようになりました。そのため、剛性や平坦性に優れたガラス基板を、半導体チップの実装基板として使う動きが広がっています。
現在、ガラス基板の加工には、主にレーザーアブレーション加工*3またはレーザー改質・エッチング加工*4が使われています。しかし、前者は加工に時間がかかり、後者は廃液処理など環境への負荷が大きいということが課題となっています。
今回の共同研究では、パルス幅の異なる2種類のレーザーを同時に、かつ、ガラス面に対して斜め方向から照射することで、加工速度をレーザーアブレーション加工と比べ100万倍に上げることに成功しました。このように、レーザーのみでガラス基板を高速加工できる本手法は、既存の加工方法と比較し、高効率で環境負荷も低いことから、今後の半導体分野への実用化が期待されます。
【ご参考】本内容に関する東京大学プレスリリース https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2025-06-12-001
〈注釈〉
*1 |
東京大学とAGCにて共同特許出願中 |
*2 |
論文情報 雑誌名:Science Advances 題 名:Ultra-high-speed laser drilling of transparent materials via transient electronic excitation DOI:10.1126/sciadv.adv4436 URL:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adv4436 著者名: 東京大学大学院工学系研究科 伊藤 佑介 講師 張 艶明 特任助教 小池 匠 博士課程 吉﨑 れいな 助教 任 国旗 特任研究員 桐明 颯汰 修士課程 長谷川 亮太 修士課程 長藤 圭介 教授 杉田 直彦 教授 AGC株式会社 柴田 章広 研究員 長澤 郁夫 研究員 |
*3 |
レーザーアブレーション加工:レーザー光を照射して材料の表面を瞬間的に蒸発・除去する加工技術。高エネルギーのレーザーを使うことで、精密な微細加工や薄膜形成が可能。 |
*4 |
レーザー改質・エッチング加工:レーザーを用いて材料の特性を変化させ、その後エッチング処理を行うことで微細加工を実現する技術 |
- ◎本件に関するお問い合わせ先:
- AGC株式会社 広報・IR部
- TEL: 03-3218-5603