1997年02月24日経営リリース
高機能複層ガラス用Low-Eガラスの生産設備増強を決定
旭硝子株式会社(本社:東京、社長:瀬谷博道)は、建築用複層ガラス「ペヤグラス」の高機能製品に使用されるLow−Eガラス(低放射ガラス)の設備投資を決定し、鹿島工場にて大幅な生産能力の増強を図ることとしました。
Low−E(Low-Emissivity)ガラスとは、通常のフロートガラスに金属膜をコーティングし放射率を小さくすることで伝熱が小さくなるという特徴を有するガラスです。複層ガラスの材料として使用することで、断熱性をより一層高めると共に、夏場の遮熱性をも高めることができ、冷暖房両方の負荷を軽減し省エネ性に優れた開口部の実現に貢献します。
開口部の断熱化を図ることは、冷暖房エネルギー費の節約という経済効果だけでなく、石化燃料消費量の抑制という見地からCO2排出量削減等の地球環境問題に取り組むためには欠かせない要素です。また同時に、開口部の断熱化は結露の防止や同一室内での室温格差(コールドドラフト)を減少させる効果があり、住環境の快適化を促進する効果があります。
この様なニーズが近年さらに盛り上がり、複層ガラスに対する需要は大幅に伸びていると同時に、更に高性能・高機能化が求められており、Low−Eガラスを用いた複層ガラスが今後主流になるものと期待されています。複層ガラスの内Low−Eガラスを用いたものの比率は現在国内においては約10%程度ですが、欧米ではすでに40%程度に達しており、複層ガラスの普及と相俟ってLow−E複層ガラスの需要は今後飛躍的に伸びるものと考えられます。
当社では既に1988年より建築用Low−Eガラスの生産を開始しており、鹿島工場において年産約170万m2の能力を有しています。今回決定した新規設備投資により世界的にみても最大級の生産設備(年産約430万m2)を新設することにより、生産能力を年産約600万m2まで引き上げる予定です。新規設備投資金額は約20億円、工期は約1年で、1998年春頃の生産開始を目指します。
複層ガラスは現在主として住宅用を中心に普及しており、今後さらに需要が増加すると共に非住宅用の開口部も複層ガラス化することが期待されており、Low−E複層ガラスについても品種・厚味等のバリエーションが拡大していくことが予想されます。
当社は、2年後の1999年には複層ガラス全体の販売量を現在の約4倍の約1,000万m2、その内Low−E複層ガラスの販売量約450万m2を目標とし、複層ガラス事業での業界No.1の地位を確固たるものとし、さらなるシェアアップを目指します。
以 上
[ご参考]
- Low−Eガラスとは:
- Low emissivity(低放射)ガラスの略称。
通常のガラスの放射率は0.85、Low-Eガラスの放射率は0.1以下。 - Emissivity(放射)とは、エネルギーを持つたある材質が冷たい周りの環境に対してどれだけの放射能力を持つているかを示す数値。
- 放射率が低いほど、赤外線を反射する=室内の暖房エネルギーを反射する=断熱性を向上させる。
- 複層ガラスに使用されることにより、さらに断熱性・遮熱性を向上させることができる。
- Low emissivity(低放射)ガラスの略称。
- Low−E複層ガラスの断熱性・遮熱性について:
- 単板ガラスに対して通常の複層ガラス(FL3-A6-FL3)の断熱効果は2.4倍。
- 通常の複層ガラス(FL3-A6-FL3)に対してLow-E複層ガラス(商品名「サンレーヌ」)の断熱効果は1.4倍。
- 遮熱型Low-E複層ガラス(商品名「サンバランス」)は、単板ガラスより約30%の冷房コストダウン効果。
- 注記:
- 熱貫流率:小さいほど断熱性が高い。(Kcal/m2h℃)
- 日射熱取得率:小さいほど遮熱性が高い。
- 複層ガラス(FL3-A6-FL3):フロート単板3mm-空気層6mm-フロート単板3mmで構成されている通常の複層ガラス。断熱・遮熱Low-E複層ガラスも上記3)の通常複層ガラスと同じ構成だが、各々のフロート単板の各1枚にLow-E加工が施されている。
- 断熱Low-E複層ガラス・遮熱Low-E複層ガラスの構造:
品種 | 熱貫流率 | 断熱効果 | 日射熱取得率 | 遮熱効果 | ||
単板ガラス | 5.1 | 基準 | 0.86 | 基準 | 基準 | |
通常複層ガラス | 2.9 | 2.4倍 | 基準 | 0.78 | 91% | |
断熱Low-E複層 | 2.2 | 3.4倍 | 1.4倍 | 0.56 | 65% | |
遮熱Low-E複層 | 2.2 | 3.4倍 | 1.4倍 | 0.42 | 49% | △30% |