1997年05月13日製品リリース

新スパッタ方式によるブラウン管用コートパネル「ワイドアラス」の本格販売を開始

 旭硝子株式会社(本社:東京、社長:瀬谷博道)は、ブラウン管(CRT)用ガラスバルブ事業の一環として、主にディスプレイモニター用ブラウン管のガラス表面に求められる低反射、電磁波低減機能を有する前面ガラス(コートパネル。商品名「ワイドアラス」。英語表記:"WideARAS")の開発に成功し、新商品として本年5月より本格販売を開始することとしました。

 パソコンモニターの急激な伸びにしたがって、ブラウン管の画面も大型化や表示容量増大の要求が急速に進んでいますが、それに伴いブラウン管画面に映る外光反射による見づらさの改善や、電磁波漏洩に対して予め対策を取っておくという要求が高まってきました。従来は完成品のブラウン管に直接ゾルゲル法をベースにしたコート膜を塗布する方式や、スパッタ加工を行った曲面ガラス(導電低反射パネル)をブラウン管の完成品に貼り付ける方法等でそれらの要求に対応してきました。

 今回当社が開発した新商品「ワイドアラス」の技術は、従来スパッタ膜5層以上で達成していた機能をより層数の少ない方法で達成できるもので、

  1. 耐熱性に関し、従来のスパッタ膜は200℃が限界であるのに対し、新商品「ワイドアラス」は450℃以上でもその機能を保持でき、従って、ブラウン管の高温製造工程に十分適用可能。
  2. 可視光線領域で均一な光吸収性を有すると同時に、透過率は60%〜90%の範囲で制御可能で、さらにパネルガラスとの組み合わせで広範囲に亘って透過率の設定が可能。
  3. スパッタ技術を採用していることから膜の光学性は極めて高く、ブラウン管の有する画像特性にダメージを与えることが無く忠実に画質を再現出来る。

 等の特徴を有しています。

 新スパッタ法によるコートパネル「ワイドアラス」は、今後パソコンモニターの普及に伴い需要の増加が期待され、当社としては当面月間約20万枚の販売を目標にしています。

 また当社は、新商品コートパネル「ワイドアラス」の製造販売を行うと同時に、この新商品の技術の販売も検討していきます。

                  以  上

《ご参考》

1.ゾルゲル法:
(1)一般に、有機金属化合物を高温で処理し純度の高い金属酸化物を合成する方法。
(2)ブラウン管に適用する場合は、珪素(Si)の有機金属化合物に導電性微粒子を分散させたゾル(液体とコロイドの混合物)液を塗布する。

2.スパッタ法:
 ガラス等の基板(Substrate)の置かれた高真空中に微量のガスを導入し、高電圧や高周波等の電気的エネルギーによりプラズマを発生させ、ターゲットと呼ばれる金属にぶつけて金属元素をたたき出す。アルゴン等の不活性ガス、酸素ガス、窒素ガス等を目的によって使い分け、それぞれ金属、金属酸化物、金属窒化物等の強固な機能性膜を基板表面上に生成させる方法。

 当社でも、従来から建築用・車両用・液晶用ガラス等に応用し商品化しています。