1997年07月24日製品リリース

物理強化によるブラウン管用大型軽量化パネル「トリプレッド」の本格販売を開始

 旭硝子株式会社(本社:東京、社長:瀬谷博道)は、ブラウン管(CRT)用ガラスバルブ事業の一環として、ブラウン管用パネル(前面ガラス)に独自の物理強化法とシュミレーション技法とを応用した軽量化設計技術を開発し、業界初の物理強化による大型軽量化パネル(商品名:トリプレッド)の商品化に成功し、本格的販売を本年8月より開始することとしました。

 ワイドビジョン・ハイビジョン時代の到来とともに、近年ますます大画面・薄型・軽量の表示ディスプレイが求められるようになり、大型表示分野では、PDP(プラズマディスプレイパネル)が注目されるようになってきました。一方パソコンなどの中小型表示分野では、薄型・軽量の液晶表示装置(LCD)がブラウン管(CRT)と競合するようになってきています。このような状況のもと、CRTの短所である“重さ”を軽減するために、物理強化したガラスバルブを採用することによって、軽量化・フラット化への対応をさらに一歩進めることが可能となりました。

 当社は、従来よりブラウン管用パネルの安全性や信頼性に関する研究開発を進めてきましたが、今般、実用的な強化方法と独創性が高い軽量化設計技術とを確立し、大型サイズのパネルの軽量化・フラット化を実現することが可能となりました。

 今回当社が開発した新商品「トリプレッド」の特徴は次の通りです。

  1. 従来のパネルより約30%の高強度化(当社比)と約10%〜15%程度の軽量化を達成。
  2. 耐熱衝撃性の優れたパネルの実用化が可能となる。
  3. 防爆強度に関して、従来品以上の性能の向上が可能となる。

 表示装置のワイドビジョン化・ハイビジョン化という趨勢のなかで、物理強化による大型軽量化パネル「トリプレッド」への需要はますます増大するものと期待されます。

  以 上

《ご参考》

  1. 物理強化

     ガラスの強化法として、化学的変化・外部からの力・防護被膜等を外的に付与するのでは無く、ガラス自体に歪みを効果的に内在させて強化する方法。ガラス製造工程で、ガラスが液体状から固体になる過程を制御することにより、ガラス表面に強い圧縮歪みを形成して、割れ等の破壊を防止する力を強化する。

  2. フラット化

     CRT内部を真空にすることにより大型管では10トン程度の力が加わり、ガラス表面に局所的に大きな引張り応力が発生する。このような応力は、ガラスバルブの疲労破壊や衝撃に対する耐力 (強度)を弱めることとなる。パネルのフラット化は、最も強いとされるCRTの球殻構造から逸脱し非対称性を増すこととなり、このような応力を更に増大させて強度が弱まることとなる。
     よって、従来技術のみでは、CRTの寿命を左右する疲労に対する信頼性や、衝撃に対する防爆強度を確保する理由からフラット化のためにはかなり厚いガラス肉厚が必要と考えられていた。厚いパネルは、単に重量が増える問題だけでなく、パネルやCRTの生産性を阻害することとなる。
     今回の新技術では、パネルの最も引張り応力の高い領域に効果的に強化が入れられるように強化のプロセス・設計について新たな方法を考案し実用化した。また、フラット化のために、防爆強度が確保できるようにCRTの防爆補強技術と一体化した新たな設計技法も開発し、実用的なパネル重量の範囲にて上記諸問題が解決可能となった。

  3. 30%高強度化

     ガラスバルブの強度を評価するには、圧力容器内にてガラスバルブの外側から静水圧を加え、内外圧力差を1気圧から徐々に増大させ、何気圧差で割れるかという試験方法がある。このような評価方法や、棒状試験片の曲げ強度試験により30%の高強度向上が確認された。

  4. 耐熱衝撃性

     ガラスコップに熱湯を注ぐと割れることがあるように、ガラスに急激な熱の変化を与えると破壊を招く。
     耐熱衝撃性とは、どれだけ急激な熱変化に耐え得るかを示す特性。CRTは製造工程等で高熱を受けるため、高い耐熱衝撃性が要求される。

  5. 防爆強度(防爆特性)

     CRTは大型の真空管であるため、常に大きな力を大気から受けている。このため、衝撃を受けると爆発を伴う破壊にいたる可能性ががあるが、CRTに補強を施すことにより防止している。
     防爆強度(又は防爆特性)はCRTが衝撃を受けた際でも安全であることの指標。