1997年10月06日製品リリース

プラズマディスプレイパネル用光学フィルターを本格量産化

 旭硝子()(本社:東京、社長:瀬谷博道)は、大型カラーPDP(プラズマディスプレイパネル)用光学フィルターの量産技術を確立し、このたび国内2工場に生産拠点を設置して本格的な供給を開始しました。

 当社はこれまで、反射防止コート・透明導電膜等の技術をベースとして、液晶ディスプレイ(LCD)の保護パネル等各種ディスプレイの前面に配置される高機能パネルおよびパネル用部材を供給してきました。大型カラーPDPについても、前面に配置される光学フィルターの開発を進め、求められる特性である電磁波カット性能を、従来技術であるメッシュスクリーンを使用することなく、高い透明性と優れた画質を実現するガラス基板への透明導電膜スパッタリング技術によって実現しました。同時に、近赤外線カット性能、色調補正特性、低反射性を有する光学フィルターの量産技術を確立しました。

 当社の技術は各PDPメーカーから高い評価を受け、96年秋より正式採用され既存設備を利用して供給を開始しました。この1年間の納入数量は約1万枚に達していますが、当社は今後の大型カラーPDP市場規模の急速な拡大に対応するため、光学フィルターの量産化を決定し本格的な供給を開始したものです。今回、当社千葉工場に光学フィルター表面に使用する低反射フィルム「アークトップ」の量産設備を新設し、愛知工場にフィルムラミネート設備を新設することにより、千葉でフィルムを生産し愛知でガラス基板を加工する体制を整え、生産能力は年間約5万枚に拡大します。さらに98年夏までに同15〜20万枚への能力増強を計画しています。

 今回本格量産を開始する光学フィルターの特長は次の通りです。

  1. 画質に悪影響を与えるメッシュスクリーンを使用することなく、高い透明性(70%)を備えた透明導電膜によって電磁波をカット。
  2. リモコン等への妨害の原因となる近赤外線を95%以上カット。
  3. 画像の色調を補正し美しい色を再現。
  4. 低反射フィルムの使用により外光反射率1%台に抑え、写り込みを防止。
  5. 基板に強化ガラスを使用し、表示パネルを物理的な衝撃から保護。

 当社は、現在市場ニーズの高い40インチ級PDP用の光学フィルターを中心に生産を行っていますが、需要に応じて50インチ以上、あるいは30インチ以下のサイズも生産する予定です。また市場の要求により、さらに高い特性のものを開発中です。販売金額は2000年に約100億円を目標としています。

 以 上

《ご参考》

電磁波規制
国内ではTV用としては電気用品取締法、情報処理端末としてVCCIの規格があります。PDPにおいては、規制をクリアするために従来技術として「金属メッシュスクリーン方式」がありますが、透過率が50〜55%と低く、画像にモアレ現象が生じやすい、という問題点がありました。

透明導電膜
絶縁体であるガラスの表面に物理的製膜法(スパッタ法、真空蒸着法)、化学的製膜法(CVD法)等により、Ag、ITO、SnO2等の透明な導電膜を製膜します。用途としては液晶用、太陽電池用、タッチパネル用、帯電防止用等があります。表面抵抗値は低いもので数Ω/□(*1)、高いもので10の8乗Ω/□です。
(*1) Ω/□:オームスクウェア。正方形の基板であれば、大きさに係わりなく抵抗値は同じになる。

近赤外線(NIR)
PDPのプラズマガス放電によって発生する、波長0.8μm(ミクロン)以上の赤外線。 リモコンで使用する波長と重なるため、光学フィルターによってNIRを選択的にカットします。

反射防止(低反射)コート
低屈折率の薄膜による光学干渉を利用して表面反射(写り込み)を低減し、透過率を向上させるもので、成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法のほか、本製品に応用されている「アークトップ」のようなウェットコート法などがあります。

低反射フィルム「アークトップ」
透明フッ素樹脂「サイトップ」を薄膜層としてウェットコートした、耐擦傷性に優れる光学フィルムです。反射防止・色調補正・NIRカット・飛散防止などの機能を備えています。