1998年04月14日経営リリース

TFT-LCD用新無アルカリガラスの量産を開始

 旭硝子株式会社(本社:東京、社長:瀬谷博道)は、TFT(薄膜トランジスタ)方式のLCD(液晶表示装置)用ガラス基板としての新無アルカリガラス(商品名「AN100」)の開発を完了し、本年7月より京浜工場(横浜市鶴見区)で商業生産することを決定しました。

 当社では既に無アルカリガラス(商品名「AN635」)を1994年から上市しており、TFT方式LCD用ガラス基板として、TFT・LCDメーカー各社から品質及び供給の面で高い評価を得ています。今後のTFT・LCDの動向は、12インチ以上の大型ノートPCを中心に、デジタルカメラ等に代表されるコンシューマー用途、PDA(Personal Digital Assistance:携帯情報端末)に代表されるモバイル用途、デスクトップPC向けのモニター用途など、小型から大型まで多様化への動きが加速されつつあります。
次世代のガラス基板に対しては、ガラス基板の大型化、薄板化さらに表示品位の高精細化の動きに伴い、その要求される特性、品質はより高度化してきています。
特に、機械的な特性では基板のたわみ量、反り量の軽減のためにヤング率の大きいガラスであること、またクラックやチッピング(切り粉傷)発生の低減のために高い強度を有することが強く望まれています。また、基板の大型化に伴い、低熱膨張、低熱収縮等の優れた熱的特性を持つこと、さらには軽量であることが必要とされます。加えて地球環境問題からも、ガラス成分に酸化砒素等の有害物質を含まないことなどの配慮も要求されます。

 当社は、長年にわたり蓄積されたガラス製造技術をベースとしてこれらのニーズに十分に応えうる新無アルカリガラスを開発し、この度商業生産を開始することとしました。
当社の無アルカリガラスの製造では、板ガラスの大量生産方式として長年実績のあるフロート法を採用しています。この方法で製造されたガラスは反りが少なく平坦性や厚みの均一性に優れているばかりでなく、オンラインでの徐冷を十分行うことができるためガラスの熱安定性に優れるという特長を有しています。既に当社の供給するTN(Twisted Nematic)やSTN(Super Twisted Nematic)液晶表示素子用のソーダガラス基板及びTFT用現行無アルカリガラス基板「AN635」は、全てフロート法による薄板ガラスが使用されています。
新無アルカリガラス「AN100」では、このフロート法の特長を最大限に活かし、熱収縮量について現行製品「AN635」の半分以下への削減に成功しています。また、歪み点温度については、「AN635」より35℃以上高い約670℃とすると共に、熱膨張係数は20%減少、ヤング率については5%の向上を達成しています。特に、今後基板の大型化・薄板化に伴って重要となるガラス基板のたわみ量に関係するヤング率については、現行の同業他社製の軽量化ガラス基板と比較して約10%向上しています。その結果、例えば1m巾で0.7mm厚のガラス基板のたわみ量は約10mm程減少します。(当社試算値)
以上のことからアモルファスシリコンTFT—LCDの製造工程において、高い歩留実現に貢献できるだけでなく、より高温な製造プロセスを必要とする低温ポリシリコンTFT用ガラス基板としても十分使用が可能と言えます。

 当社は一昨年にTFT用無アルカリガラス基板用でフロート2窯体制を確立し、拡販を図ってきました結果、無アルカリガラス市場において、現行製品「AN635」のシェアーは約30%(当社推定)となっています。この「AN635」に加えて、この度の新製品「AN100」の上市により、2000年度には、無アルカリガラス市場の約50%のシェアー獲得とガラス基板売上約200億円を目標にしています。

以  上

《ご参考》

  1. 新無アルカリガラスの特長点(現行当社品との比較)
  2. (項  目) (新製品「AN100」) (現行製品「AN635」)
    (1)軽量化(ガラス密度) 2.51g/cm3 2.77g/cm3
    (2)熱収縮量(450℃、1時間加熱) 8ppm 18ppm
    (3)歪み点温度  約670℃ 約635℃
    (4)ヤング率  7900kgf/mm2 7450kgf/mm2

  3. アモルファスシリコンTFT
  4.  アモルファスとは非晶質といい、結晶状態でないものをいう。TFTとはThin Film Transistor(薄膜トランジスター)を意味している。
    シランガス(SiH4)をプラズマ状に放電し、ガラス基板に成膜したアモルファスシリコン膜で作成したTFTの特性は、オン電流は低いがオフ状態での抵抗が高いため液晶のスイッチング素子として広く使用されている。大型ガラス基板によく適した素子である。
    <用途>ノートPC、デスクトップモニター、PDA等。

  5. ポリシリコンTFT
  6.  TFTの材料として、多結晶シリコン薄膜を用いたもの。アモルファスシリコン・TFTに比較して、オン電流が高くなるが、オフ電流も大きくなるため、TFTの構造を工夫しオフ電流を低くしている。
    良質な多結晶膜を形成するためには、より高い温度が必要とされる。最近では、レーザーアニール等の方法も提案され、より低温での多結晶化も提案されている。
    ポリシリコンTFTは信頼性、安定性が高くまた高速動作が可能なため液晶のスイッチング素子の他に、ゲートラインや信号ラインのの駆動回路も形成が可能である。
    <用途>ビデオカメラ用ビューファインダー、プロジェクションTV用投射モジュール等。