1999年02月09日経営リリース

緊急構造改革施策について

 旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、単体の営業利益が98年度上期に上場以来初めての赤字となるなど、事業環境が極めて深刻であることを認識し、「シュリンク・トゥ・グロー(Shrink to Grow)」の経営方針のもと、事業の選択と集中を図ることにより体質の強化と事業構造の改革を実現するための施策を検討してきました。昨年10月には、単体業績の回復を目指し、「2000年3月期までに固定費を300億円削減すること」が取り組むべき目標であることを公表しましたが、この度その具体的施策として、以下の通り緊急の固定費削減による構造改革施策を実施することとしました。

1.固定費削減施策 〔合計281億円〕

 目標として掲げた300億円削減を現時点では完全にはプランニング出来ていませんが、今後も継続して削減策を追加することで、早期に300億円に近づけて行きます。
 以下の事業撤退等の施策により、売上高は2000年3月期で約60億円減少します。
 また、製造設備の廃棄により約100億円の特別損失が発生しますが、次項の退職金積み増し分約70億円の支出も合わせ、遊休不動産及び株式の売却益により相殺する予定です。

(1)生産拠点集約・稼働変更 〔90億円〕

1 【硝子・建材】 京浜工場フロート1窯停止による生産集約
2 【硝子・建材】 切断・複層ガラス生産拠点(エイ・ジー・シーアックス(株))の拠点統廃合
3 【加工硝子】 産業用加工ガラス生産拠点移設・集約により京浜工場での生産を中止
4 【基礎化学品】 国内塩ビ事業の縮小

(2)事業撤退による生産・販売中止 〔32億円〕

1 【硝子・建材】 蛍光管用管ガラス事業を旭テクノグラス(株)へ移管
2 【加工硝子】 産業用平強化ガラスの社内生産中止
3 【セラミックス】 鉄鋼向け結合煉瓦事業の中止
4 【基礎化学品】 水酸化マグネシウム系事業の一部中止
5 【電   子】 多成分系光ファイバー等、一部の電子部材関連事業からの撤退

(3)工場固定費削減 〔31億円〕

  • 板ガラス工場固定費削減
  • 北九州工場ソーダ灰事業収支改善

(4)省人化 〔65億円〕

  • 設備投資による省人化
  • 加工ガラス及び化学品間接人員削減
  • 事業サポート・職能業務集約化

(5)営業拠点・商流見直し等 〔23億円〕

  • 営業拠点の再編成及び付随する職能部門の集約化・削減

(6)一般管理費・研究開発費の削減他 〔40億円〕

  • 研究開発テーマの絞り込みと集中

2.人員削減計画

 固定費削減施策に伴い、全社人員も98年9月時点の約8,300人から約900人(約10%)を削減し、2000年3月末には7,400人体制とすることを目標としています。3月1日から実施する早期退職優遇制度の拡充により対応しますが、対象は、役職者は課長補佐クラス以上、一般社員は45歳以上です。今回の拡充は従来制度による退職金への加算金にさらに上乗せして支給するもので、通常の退職金に対し年収約2年分の加算となります。
 なお、今後の人員削減を含め構造改革を全社を挙げて推進するに当たり、痛みを全員で分かち合う趣旨から、役員報酬及び課長クラス以上の役職者給与をカットすることとしました。役員については本年1月から6月までの間、10%から7%、また役職者については本年3月から6月までの間、5%から3%の幅でそれぞれ減額します。

3.短期Grow計画(成長施策)

 以上の緊急構造改革計画を実施するほか、現在の事業領域の中でさらに収益を向上させ、2003年度に連結株主資本利益率(ROE)10%を達成するための成長施策も実施していきます。収益力のある製品の拡大、新製品の上市、新しいビジネス・システムの展開等、Growを実現するための実行計画を現在立案中であり、固まり次第来年度予算及び中期経営計画に反映させます。

4.抜本的な事業構造の改革

 短期的なShrink to Grow計画に加え、中長期的には事業ポートフォリオの再編成を目指し、抜本的なShrink to Grow計画も進めていきます。以下の項目につき、いずれも一定の段階まで検討を終了しており、今後1年以内にマスタープランを作成する予定です。
 当社は、欧米・アジア等海外を含めた連結ベースでの事業運営を進めています。最近では、昨年PPG欧州(フランス・イタリアの板ガラス、自動車用ガラス事業)の買収、スペインにおけるピルキントン社とのフロートガラス製造合弁会社の設立と着工、自動車用ガラス部門で今後の成長が期待されるブラジルへの進出、フッ素樹脂関係では英ICI社との国内合弁につき先方の持分を買収し当社の100%子会社化する等の拡大・成長プロジェクトを実現しています。既説明の「単体固定費の削減」は、連結収益改善の上でも当面の緊急課題として認識していますが、本Grow計画においては、世界の伸びる市場をにらみ連結ベースで展開して行く方針です。

(1)既存事業の再構築

当社のコア事業ではありますが、国内で構造的な問題を抱える次の2点を取り上げます。
1 基礎化学品事業の再構築
クロール・アルカリ事業について、国内外を含めて収益改善のために最適な事業構造につき、多方面から検討を加え、結果によっては思い切ったリストラも考慮します。
2 板ガラス建築用加工等下流事業の再構築
国内板ガラス事業の収益回復に即効性のある、品種・顧客セグメント別のプライシング・物流等下流事業戦略の見直し、上流(素板)から下流(建築用加工)までの生産性向上等を大胆に実施することを目指し、事業のトータルコスト削減プログラムを策定します。

(2)将来へのGrow計画

  • 新事業のターゲットを「グローバル市場で?bPか?bQを確保できる事業」「常に技術の差別化が可能な事業」「21世紀にも引き続き高収益が確保できる事業」の視点から絞り込みました。
  • これを「スペシャリティ・マテリアルズ・ビジネス」というコンセプトで捉えます。当社が目指すビジネスの姿は、材料ソリューションを競合他社よりも早く顧客に提供することで顧客価値を認めて貰い、これを収益の源泉とする業態である、というのが基本的な考え方です。
  • 対象分野としては、「情報・エレクトロニクス」「ライフサイエンス」「エネルギー関連」に着目し、新しいビジネススタイル、手法によってこれらを事業化して行きます。

以 上