1999年03月04日経営リリース

超純水製造装置分野へ新規参入

 旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、99年2月より日本国内及びアジアにおいて、連続電気再生式超純水製造装置(EDI)の販売を開始し、この分野へ新規参入しました。

 超純水は、半導体の洗浄、発電用ボイラー用水、医薬品製造、樹脂の重合・高純度化学製品製造等を行う化学工業、食品など幅広い分野で使用されていますが、その製造方法には、イオン交換樹脂塔方式とEDI方式の2種類があります。当社は、カナダのベンチャー企業であるイーセルコーポレーション社(ECC社)とEDIの共同開発に取り組んできました。当社のイオン交換膜技術・電気透析槽技術とECC社のシステム化技術・量産技術を活かして、96年末にはコストパフォーマンスの高いEDI「E-CELL(イーセル)」を開発し、ECC社は97年から欧米を中心に販売を行ってきました。このほど日本国内向けの技術開発を完了し、当社もEDIの販売を開始するものです。

 従来装置(イオン交換樹脂塔方式)と比較した「E-CELL」の特徴は、次の通りです。

(1) 従来装置で発生するイオン交換樹脂再生廃液の排出がないため、環境負荷が低減できる。
(2) 設置面積が従来装置の1/3〜1/4で済み、狭隘な場所への設置も可能である。
(3) 超純水の処理流量当たり製造コストを、従来装置に比べ削減できる。
(4) 水の純度を表す比抵抗値は、従来装置によるものと同等以上のレベルで運用できる。

 超純水を製造するためには、水から塩分・有機物等の不純物を除去する必要がありますが、「E-CELL」は脱塩室にイオン交換樹脂を充填しており、供給水中の不純物イオンをイオン交換樹脂に吸着させ、超純水を製造する仕組みです。吸着した不純物イオンは電気透析槽内部に生じた電位の差によりイオン交換膜で仕切られた濃縮室に連続的に回収されます。このように、「E-CELL」では不純物イオンを吸着したイオン交換樹脂の再生が連続して行われるので、従来のイオン交換樹脂塔方式に必要な酸・アルカリによるイオン交換樹脂の再生が不要となり、再生廃液を排出しません。

 また、イオン交換樹脂塔方式では樹脂再生のため複数系列の装置(一方で超純水製造、他方で樹脂再生を断続運転で交互に繰り返す)が必要ですが、これも不要となるため設備コストを抑制できるとともに、設備サイズが小さくなるため設置面積が少なくて済み、従来設備では設置できないような狭い場所へ設置することも可能となります。

 EDIは環境対応型の超純水製造装置として、ここ数年急速に市場が拡大しており、従来設備からの更新及び設備新設による潜在的なEDI装置の市場規模は世界で200億円/年、日本及びアジア地域で50億円/年程度と推定されています。EDI装置及びシステムの販売は当社とECC社とが定められたテリトリーに従って行います。当社は、日本国内及びアジアの水処理エンジニアリング会社へスタック(単体設備)またはEDIシステムの販売を行うことにより、1999年度に4億円、2001年度に15億円の売上を見込んでいます。

《補足説明》

1.今回販売を開始した機種

(1)E-CELL MK-1E a.標準生産水量 2.8m/h
b.生産水比抵抗 16MΩcm以上
c.外寸 H30cm・W43cm・D61cm
(2)E-CELL MK-1 Mini a.標準生産水量 1.0m/h
b.生産水比抵抗 16MΩcm以上
c.外寸 H30cm・W24cm・D61cm
 
(*注)比抵抗:水の純度を表す尺度で、高いほど高純度であることを表す。理論純水で18.2MΩcm であるが、設備別使用水の比抵抗値の例は、小型ボイラーで約4MΩcm、大型発電所で約10MΩcm、原子力発電所で約15MΩcm。概ね15MΩcm以上の水を「超純水」と呼ぶ。

(3)E-CELLシステム

上記 E-CELLスタック(単体設備)を1台、もしくは複数台をラック上に並べたシステムにより幅広い生産水量に対応する。 E-CELLシステムにはスタックの運転に必要な配管、タンク、整流器、制御盤等がユニット化してあり、前処理水を供給するだけで超純水が製造できる。1m/hから66m/hまでの生産水量に対応したシステムを標準品として用意している。

E-CELL スタック E-CELLスタック

2.EDI  Electrodeionization の略。「電気連続再生型脱塩装置」の一般名。

3.イーセルコーポレーション

(1)社名 E-CELL Corporation
(2)本社所在地 カナダ、オンタリオ州
(3)社長 マーク・ヒューネガー
(4)営業品目 EDI装置の製造販売

以 上