1999年06月17日経営リリース
中期経営計画について
旭硝子(本社:東京、社長:石津進也)は、昨年来「シュリンク・トゥ・グロー(Shrink to Grow)」の経営戦略のもと、事業の選択と集中を図ることにより体質の強化と事業構造の改革を実現するための施策を検討してきました。本年2月には、単体の固定費を281億円削減することを柱とする緊急構造改革施策を公表し、その後逐次実施してきましたが、このたび、構造改革初年度である1999年度から2001年度までの3年間の中期経営計画「StoG2001」を取りまとめました。
1.旭硝子グループの将来ビジョン
当社の企業方針は、それぞれの時代のリーディングインダストリーに対し、ガラス・化学の技術をベースとしたベストな素材ソリューション(顧客の課題解決に役立つ素材)をグローバルに提供することです。この方針の下、ガラス・フッ素化学等当社のコア事業において収益性及び成長性ともに、グローバルで世界ナンバーワンの企業グループになることを目指します。その経営目標達成のための戦略が「Shrink to Grow」であり、今回の中期経営計画もこの戦略に沿って策定したものです。
(1)今後の事業の方向性
これまでの主要事業分野であるコモディティ・ビジネスについては、将来的に競争力がないと判断されるものは事業撤退・事業売却を行い、競争力があると判断されるものはグローバル展開やコストダウンによる収益力回復を図り、新たな土台とします。同時に、高成長・高収益のスペシャリティ・マテリアルズ・ビジネス分野を拡充し、事業ポートフォリオを改革します。
スペシャリティ・マテリアルズ・ビジネスとは、素材ソリューション(顧客の課題解決に役立つ素材)を競合他社よりも早く提供することで顧客価値を認めて貰い、これを収益の源泉とする事業です。当社は、売上高を重視し、企業の屋台骨を支え得る大きな事業を育てる「大木経営」ではなく、個々は小規模でも利益重視の「雑木林経営」を指向し、高収益が期待できる市場への絶え間ない参入を図ります。
(2)旭硝子グループのマネジメントフレームワーク
以上のような企業方針に基づき、当社グループが目指す経営の枠組みは次の通りです。
◯財務 | ・2003年度連結ROE(株主資本利益率)10%達成 ・キャッシュフローの極大化 ・資本コスト重視の業績評価実施 |
◯顧客 | ・顧客重視の徹底(顧客の視点を第一順位として優先) |
◯プロセス | ・ビジネスプロセス及び組織制度の継続的改革 |
◯環境・社会・従業員 | ・環境への配慮、社会への貢献、従業員の自己実現 |
2.主なGrow(成長)施策
(1)連結経営マネジメントシステムの整備
グループ連結経営の徹底
- 国内外主要関係会社の位置づけ変更
グループ連結経営を徹底し、連結経営上の管理・責任体制の明確化を図るため、99年5月以降、国内外の主要関係会社*を当社の各事業本部等に準じて単独のビジネスユニット(BU)として位置づけました。各社社長はまず第一に自社の業績向上を図りますが、同時にBUの責任者として、グループ全体の業績向上も勘案した事業執行を行います。*対象となる関係会社
海外:グラバーベル(ベルギー)、AFGインダストリーズ(米国) 国内:旭ファイバーグラス、旭テクノグラス、日本ドライケミカル、伊勢化学工業
部門業績評価制度の改訂
Shrink to Grow戦略と合致し、当社の目指す「キャッシュフローの極大化による企業価値 の最大化」につながる部門業績評価制度にするため、資産効率に焦点を当て、同時にキャッシュフロー・ROE・ROA(総資本利益率)の増大に結びつく「経済付加価値率」*を各BU業績評価の新しい指標としました。
99年4月に制度改訂を実施済であり、半期毎の各BU経済付加価値率の水準に応じ、最大15%の範囲で部長級以上の99年年末以降の賞与に反映させます。
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- 経済付加価値率は、税引後営業利益が資本コストをどれだけカバーしたかの比率を示す。
- 税引後営業利益=営業利益×税率50%+持分法損益
- 資本コスト額=営業資産×加重平均資本コスト
- 営業資産=日常の業務活動に係わる資産(現金及び持分法以外の有価証券を除く)
(2)グローバル展開の強化
既存事業、新規事業とも、次のような施策によりグローバル展開を加速し、世界No.1またはNo.2を目指します。
【ガラス部門】
- 米・欧・日本を含むアジアの3極体制確立によるグローバル一体経営
- 国内建築用ガラス生産設備縮小に伴うグローバルプロダクトミックスの展開
- 海外関係会社の出資マジョリティ化
- 自動車用ガラス:グローバルアカウントマネジメント制の導入(客先別対応強化)
- 自動車用ガラス:日米欧3極開発体制の確立
- ブラウン管用ガラス:国内はワイド、フラット等の高機能製品へ特化し規模を縮小、海外は汎用品設備増強
- フッ素化学事業の拡大
- セラミックス:電鋳煉瓦に特化してグローバル?bQへ
(3)スペシャリティ・マテリアルズ・ビジネス
次のような事業分野での拡大、または新規参入を目指します。
ライフサイエンス分野
【化学部門】
- 医農薬中間体・原体
(慢性動脈性閉塞症新薬用原体「AS-013」、抗炎症剤用原体「レシチン化SOD」等) - タンパク質製造技術「ASPEX」を用いたバイオ医薬品原体等受託製造
【ガラス部門】
- 大幅な省エネルギーと環境負荷の低減を実現する減圧脱泡ガラス製造技術「SAR」*の外販
:〔目標〕酸素燃焼方式と組み合わせることにより、燃料消費量50%削減、
CO250%削減、NOX75%削減、製品品質向上
:2000年央までに国内フロート窯1基へ導入予定
* Sub-Atmospheric Refiner - 高気密高断熱住宅用素材・システム
- 太陽電池用及びタッチパネル用透明導電性酸化物(TCO)膜ガラス基板
- 燃料電池用素材
(3)情報・エレクトロニクス分野
【電子部門】
- フラットパネルディスプレイ(TFT・PDP用ガラス基板、プラスチックLCD)
- 光関連(DVD用光ピックアップ)
- POF(透明フッ素樹脂「サイトップ」を素材とするプラスチック光ファイバー)
3.2001年度連結業績目標
連結業績目標等は次の通りです。なお、新会計基準の内、退職給付会計及び金融商品の時価会計については、今回の計画に織り込んでいません。
(1)連結業績目標
1998年度(実績) | 1999年度(計画) | 2001年度(目標) | |
売上高 | 1兆2,810億円 | 1兆3,000億円 | 1兆5,000億円 |
営業利益 | 437億円 | 500億円 | 1,000億円 |
- 主要増益要因(1999年度と2001年度の営業利益の差:500億円)
1単体 230億円
2新規連結(M&A等) 90億円
3関係会社増益 180億円
合 計 500億円
- 1999年度から2001年度の累計
留保キャッシュフロー 3,500億円
設備投資・投融資累計 2,800億円
差額:フリーキャッシュフロー 700億円1998年度末(実績) 1999年度末(計画) 2001年度末(目標) 有利子負債 6,895億円 7,200億円 − D/E比 0.99 1.01 1.0以下
(3)連結ROE
- 1998年度(実績) 0.8%
- 1999年度(計画) 1.2%
- 2001年度(目標) 6.0%
- 2003年度(目標) 10.0%
以 上