2000年02月07日経営リリース
医農薬中間体事業で英社を買収
旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)と三菱商事(株)(本社:東京、社長:佐々木幹夫)は、両社の医農薬中間体を中心とするフッ素系ファインケミカルズ事業強化の一環として、BNFL社(英国核燃料会社)の100%子会社で、特徴あるフッ素応用技術を有するフッ素ケミカル専業メーカー「F2ケミカルズ(株)」(本社:英国ランカシャー州プレストン、社長:ビル・デニソン)の全株式を約5百万ポンド(約9億円)で取得することでBNFL社と合意し、1月31日に契約を調印しました。
なお、本件契約は、今後EUの独占禁止法当局に承認を申請する予定であり、当局の承認をもって正式に発効します。
旭硝子は、フッ素化学の分野では原料蛍石からの一貫生産体制を持ち、中期経営計画「StoG 2001」の中でもフッ素化学事業の拡大をGrow(成長)施策のひとつとしています。フッ素樹脂を始めとする幅広い領域で事業を展開しており、最近では医農薬中間体・原体の分野にも力を注いでいます。また、三菱商事も、傘下にフッ素ファインケミカル専業メーカーであるミテニ(株)(本社:イタリア・ミラノ市、社長:駒村純一)を有し、医農薬中間体やエレクトロニクスケミカルズ等のフッ素系ファインケミカルズ、スペシャリティーケミカルズの製造・販売で実績を伸ばしています。
一方、BNFL社は子会社であるF2ケミカルズのフッ素ケミカル事業を非コア事業と位置づけ、その売却先を探していました。旭硝子及び三菱商事は、F2ケミカルズが有するユニークなフッ素ガスの応用技術が、今後の両社のグローバルな事業拡大の上で有力な差別化技術になるとともに、両社グループ内のフッ素ケミカル事業へのシナジー効果があると判断し、さらに幅広い応用展開を図るべく共同で同社の全株式を買収することでBNFL社と合意したものです。
F2ケミカルズの技術の特徴は以下の通りです。
フッ化コバルトを用いるフッ素化技術
- 冷媒、半導体製造等のエレクトロニクスケミカルズ用や、最近では超音波造影剤原体用にも用途開発されているパーフルオロカーボン類の製造に用いられる技術。F2ケミカルズは、GMP技術と併せ同原体の製造に強みがある。
- 同技術は、新規フッ素系モノマーの製造や各種ポリマーの高機能化にも活用できる見込み。
選択的直接フッ素化技術(SDF=Selective Direct Fluorination)
- 一般に取扱が困難といわれるフッ素ガスの反応性をコントロールして、種々の有機化合物の任意の位置に選択的にフッ素原子を導入する技術。
- 従来のHF(フッ酸)やKF(フッ化カリ)を用いるフッ素化に比べ、安価な原料を使用でき、工程も短縮されることから、各種医農薬中間体や液晶用コンパウンドの新しい経済的製法として期待されている。
買収後のF2ケミカルズへの出資比率は、旭硝子51%、三菱商事グループ49%(三菱商事34%、ミテニ15%)となります。なお、F2ケミカルズは現社名のまま、事業を継続します。同社の1999年度売上見込みは約5億円ですが、旭硝子及び三菱商事、ミテニは、積極的に同社の研究開発やマーケティング活動を支援し、5年以内に売上倍増を目指します。
以 上
《ご参考》
1.F2ケミカルズ(株)の概要
(1)社名 | F2 Chemicals Ltd. |
(2)本社所在地 | 英国ランカシャ−州プレストン |
(3)社長 | ビル・デニソン |
(4)資本金 | 6百万ポンド(1999年9月30日現在) |
(5)株主 | BNFL(英国核燃料会社)100% |
(6)営業品目 | 冷媒、エレクトロニクスケミカルズ及び超音波造影剤原体に用いられるパーフルオロカーボン類、フッ素系医農薬中間体等の製造・販売 |
(7)売上高 | 約2.26百万ポンド(1998年度) |
(8)設立 | 1992年 |
(9)従業員数 | 46人(1999年9月30日現在) |
2.ミテニ(株)の概要
(1)社名 | MITENI S.p.A |
(2)本社所在地 | イタリア ミラノ市 |
(3)社長 | 駒村純一 |
(4)資本金 | 130億リラ |
(5)株主 | 三菱商事90% |
(6)営業品目 | フッ素系ファインケミカルズ、フルオロカーボン類の製造・販売 |
(7)売上高 | 830億リラ(1998年度) |
(8)設立 | 1988年 |
(9)従業員数 | 191名 |
3.超音波造影剤原体
超音波が生体内を伝播する際に、血液や組織と音響インピーダンス(抵抗)の異なる物質があると強い反射波が得られることを利用して、全身の臓器の血流を可視化し診断に用いるもの。近年造影剤原体としてPFCガスを用いることにより、安定性・安全性に優れた製剤が得られ、画像処理技術の 進歩と相俟って、従来困難であった部位の情報も得られるなど、今後の臨床応用が期待されている。
4.GMP
Good Manufacturing Practiceの略称。品質の良い優れた医薬品を製造するための要件をまとめた規準。 WHOが1969年にGMPの採用を勧告して以来、医薬品製造に関する必須要件として世界各国において定着している。