2000年03月14日製品リリース

ディーゼルエンジン用黒煙除去システム「エコセーフ」の公共物件向け販売を強化

 旭硝子(株)は、環境対策商品として、セラミックフィルターを使った定置式ディーゼルエンジン用黒煙除去システム「エコセーフ」を平成6年に開発・試験販売を開始して以来、非常用・常用発電設備、自動車メーカー及びエンジン部品メーカーのエンジン試験設備などを中心に、約100台を販売してきましたが、今般、新たな用途として、特別な使用環境から対策が求められていた大阪府の下水処理場の雨水ディーゼルポンプ向けに採用されました。本件は、公共物件としては初めての採用であり、これを機に、今後さらに処理能力を向上させたシステムの開発なども含め、全国の上下水道・治水関連官庁およびエンジンメーカー等に向けて積極的に提案営業を強化していきます。

 「エコセーフ」の販売は、従来、民間のエンジン試験ベンチ、発電設備の黒煙対策ニーズに対する実績が中心でした。しかし昨今は、各地の大気汚染公害訴訟や東京都の「ディーゼルNO作戦」などによりディーゼル黒煙の有害性が注目されるほか、ISO14000シリーズの普及に伴う環境負荷対策への企業意識の変化等、ユーザーの環境意識の高まりを背景に、今後、自動車以外の定置式ディーゼルエンジン設備への黒煙除去ニーズも急速に高まってくると考えられます。 そこで当社は、全国に多数存在する上下水道・治水関連施設向けを次なる有望市場として捉え、今回の納入実績を弾みに、積極的な事業展開を図ることにしたものです。

 ディーゼルエンジンは経済性に優れた動力源ですが、排気ガス中には煤(スス)を主体としたDEP(ディーゼル排気微粒子、Diesel Exhaust Particles)が含まれます。ぜんそくとの因果関係が懸念されるSPM(浮遊粒子状物質、Suspended Particulate Matter)はDEPを主体としており、国立環境研究所や東京理科大学等の研究では、DEPが生殖異常を引き起こす要因と指摘する発表がされるなど、近年、健康への影響が懸念されています。

 当システムは自社開発の低熱膨張セラミックスであるコージェライトを素材とした独自構造のセラミックフィルターを使用しており、従来のサイクロン(遠心分離)方式や電気集塵方式では対応できなかった、(1)排気ガス中の煤のほぼ100%除去が可能、(2)500℃までの高温ガスの処理が可能、(3)これらの方式に比べコンパクトなサイズ、といった特長を持っています。

 今後、全用途をあわせて、2〜3年内に年間10億円程度の販売を目標としており、上下水道関連施設では、ポンプ駆動用・発電用等のディーゼルエンジン向け以外に、下水道汚泥焼却炉用の集塵設備等も視野にいれた開発を行います。

 当社加工硝子事業本部では、「エコセーフ」を、中期経営計画で今後の事業の方向性として定めた「スペシャリティ・マテリアルビジネス (*)」の「エネルギー・環境分野」に相当する商品として位置づけ、今後拡販に注力していきます。

* … 素材ソリューション(顧客の課題解決に役立つ素材)を競合他社よりも早く提供することで顧客価値を認めてもらい、これを収益とする事業。

 なお、当システムは、7月25日〜28日にインテックス大阪で開催される「下水道展2000」に出展することとしています。

以 上

《ご参考》

「エコセーフ」の特長
  1. 高温ガスで高い集塵効率

    • 独自製法による低熱膨張セラミックス(コージェライト)を素材とした、独自構造のクロスフロー式セラミックフィルターを使用。
      → 排ガスの入口と集塵ダストの出口が別々なので、ガスの流れがスムーズ。
        ハニカム式に比べて目詰まりを起こしにくい。
    • 耐熱衝撃性、耐酸性に優れており、500℃までの高温ガスに付加設備なしで対応可能。(単体では1000℃まで使用可能)
      → バグフィルターなどはMAX200℃程度が主流。
        水冷却などの設備や空気希釈が不要。
    • 微粒子集塵効率98%以上を、使用初期から達成可能。
      → 安価で主流の遠心分離(サイクロン)方式では10%程度
        バグフィルターでは、使い始め時は除去効率が低い。
  2. フィルター再生

    • 圧縮空気による独自のパルスジェット逆洗方式を採用。空気噴射時間をわずか0.05秒と短くしており、エンジンに負担をかけずに運転中の随時逆洗が可能。
      また、空気消費量も少なく済むため、コンプレッサーの電力消費量もわずかで済む。
      → ランニングコストが安い。(空気消費量:60Nl(ノルマルリッター)/分)
        バグフィルターの場合、再生のための空気噴射時間は2秒程度。
  3. 簡易メンテナンス

    • メンテナンスが必要な場合でも分解・組立が容易な構造であり、手作業で可能。
      → 重機や専用設備などが必要ありません。
  4. コンパクトな寸法

    • コンパクトなフィルターの組合せで幅広いガス流量に柔軟に対応でき、フィルターを内蔵したユニットを縦に積み上げることにより、狭い床面積(MIN:6m2)にも設置が可能。
      → ラインナップが豊富なので、使用条件にあわせた細かな選択が出来ます。
  5. 多彩なオプションの装備が可能

    • 集塵した微粒子の後処理装置(すす焼却機など)も装着可能。
      → 面倒で汚れやすいスス掃除作業から開放されます。
        (但し、燃料中に含まれる灰分は重量比で数%残ります)
    • 排気ブロワ−の設置により、装置入口の静圧を大幅に低減し、エンジンへの負担を少なくできます。
      → 処理ガス量が多くエコセーフを複数台の設置が必要なところを下流側にブロア
        を設置する事で、1台で対応させる設計も可能。(イニシャルコストを削減)

●ディーゼルエンジン用黒煙除去システムの方式による特徴比較

項目/方式 エコセーフ 遠心集塵
(サイクロン)
バグフィルター 電気集塵
集塵効率 ほぼ100% 10〜20%程度
(大きい粒子しか捕れない)
ほぼ100%
(使用初期は低い)
90%以上
耐熱性 〜500℃ 〜350℃
(注1)
〜200℃ 〜350℃
(注1)
フィルター
の耐蝕性

(注2)
×〜△
(注2)
装置サイズ 小〜中
イニシャルコスト
(設備費)
安い 安い〜中 高い
ランニングコスト
(維持費)
安い 高い
その他の特徴 ・メンテフリー
・スス焼却機
・構造簡単 ・目詰まりし易い
・ろ布の寿命短い
・大型設備向き

注1…… 材質による
注2…… フィルター非使用