2000年04月10日経営リリース

中期経営計画の進捗状況等について

 旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、「シュリンク・トゥ・グロー(Shrink to Grow)」の経営戦略の下、事業の選択と集中を図ることにより体質の強化と事業構造の改革を実現するための施策を実施していますが、昨年6月には、1999年度から2001年度までの3年間の中期経営計画 「StoG2001」を取りまとめ、公表しました。

 これまでの各種施策の進捗状況と今後展開する施策は以下の通りです。

1.各種施策の進捗状況

(1)緊急構造改革(単体)

  1 固定費削減施策(1998年度上期比▲281億円)

  • 京浜工場フロート窯停止、鹿島塩ビモノマーからのVCM引取停止等の生産拠点集約、事業撤退や営業拠点再編等を実施した結果、単体の1999年度固定費削減見込額は160億円となっています。当初2000年度内に停止・廃棄を予定していた船橋工場ブラウン管後部ガラス生産窯(本資料5頁参照)が、同製品の需給タイト化により2001年夏頃まで操業を継続する関係で、2000年度の固定費削減額は255億円となりますが、2001年度下期からは当初予定の年間281億円の固定費削減効果が出る見込みです。

  2 人員削減計画(▲900人)

  • 早期退職優遇制度の拡充により、単体人員を1998年9月末時点の8,300人から900人削減(▲約10%、連結対象会社への出向・転籍を含まず)することを目指しましたが、2000年3月末時点で予定通り7,400人体制を実現しました。

(2)中期経営計画「StoG2001

  1 連結経営マネジメントシステムの整備

  • 連結での企業価値最大化を目指し、経営システムを順次整備しています。コーポレートを疑似持株会社と位置づけ、コーポレートは、疑似分社である事業本部や主要関係会社等のビジネスユニット(SBU)に対し、市場原理に即した資本コスト重視の事業運営を求めます。
  • EVATM を応用した当社独自の部門業績評価指標を導入し、部長級以上(約220人)の昨年冬の賞与に反映させました。本年夏の賞与からは課長級以上(部長級を含め 約1,300人) まで適用範囲を拡大します。

  2 グローバル展開の強化

  • 1999年11月にブラウン管用ガラスメーカーである韓国電気硝子社、英国ICI社のフッ素樹脂事業部門を、それぞれ約183億円、約150億円で買収し、海外での重要な事業拠点を確保しました。また、2000年3月には特殊フッ素化技術を持つ英国F2ケミカルズ社を三菱商事(株)と共同で約9億円で買収し、医農薬中間体事業での海外展開も図りました。
  • 当社子会社のグラバーベル社(ベルギー)が英国ピルキントン社と共同で建設を進めてきたスペインのフロートガラス工場が2000年3月に稼働を開始しました。生産能力は、15万トン/年(420トン/日)で、製品の60%をグラバーベル社が引き取ります。

  3 スペシャリティ・マテリアルズ・ビジネス

   【ライフサイエンス分野】

  • 2000年4月に事業推進部を設置して、独自技術「ASPEX」による酵母を用いたタンパク質生産事業に本格的に参入しました。まず、医薬品原料や産業用酵素用から事業化します。

   【エネルギー・環境分野】

  • 大幅な省エネルギーと環境負荷の低減を実現する減圧脱泡ガラス溶解技術「SAR」を関西工場のフロート窯に導入します。2000年4月に着工し、同年7月に運転開始予定で、200〜250トン/日規模で初の実商運転を行います。

   【情報・エレクトロニクス分野】

  • 石英ガラス光ファイバーを超える高速通信が可能な全フッ素樹脂プラスチック光ファイバー「ルキナ」の本格的な事業化を開始します。ASPEX同様、2000年4月にプロジェクトチームを事業推進部に昇格させており、同年6月より製品出荷を開始します。


2.今後実施する施策

 Grow(成長)施策

(1)ディスプレイ事業での増産投資

  • 当社は2000年4月1日付けでディスプレイ事業本部を設置し、ブラウン管用ガラスバルブやLCD(液晶表示装置)用ガラス基板等の市場変化に迅速に対応できる体制を構築しま した。新体制の下で、当社は2000年から2001年にかけて、グループで合計約250億円を投じ、ブラウン管用ガラス及びTFT(薄膜トランジスタ)方式LCD用ガラス基板 の生産能力を増強します。

  1 ブラウン管用ガラス

  • 当社では、1999年の全世界のブラウン管用ガラスバルブ需要を 約2億5,000万個であったと見ています。さらに今後の需要動向は、2004年までの5年間で、数量ベースでは約5%の伸びですが、テレビの大型化・ワイド画面化・フラット化が進むことにより、重量ベースで約30%もの高い伸びが期待できます。LCDとの競合は引き続きあるものの、当社は今後もブラウン管用ガラスバルブ事業は成長分野と捉えています。
  • 特に、中国・ASEAN地域のブラウン管生産は、現在順調な成長を続けています。1996年に年間6,400万本だった域内生産量が、1999年に9,400万本、さらに2001年には1億2,000万本へ急拡大すると当社では見込んでいます。旭硝子グループでは、ブラウン管の需要増加及び大型化に対応するため、以下の3拠点で生産能力増強を行い、世界的なブラウン管用ガラスの供給不足に対応します。

     

    • 上海旭電子玻璃有限公司(中国)   
      2001年2月生産開始、ブラウン管前面ガラス(パネル)成型ライン1系列増設(生産能力約16%増)、投資額約40億円
    • サイアム旭テクノグラス(タイ)   
      2001年5月生産開始、冷修工事と同時に溶解槽を拡張しガラス素地の製造量を約60%増強、大型ブラウン管前面ガラス対応成型ライン1系列増設、投資額約70億円
    • ビデオ・ディスプレイグラス・インドネシア(インドネシア)
      2001年4月生産開始、大型ブラウン管後部ガラス(ファンネル)対応成型ライン1系列増設(生産能力約40%増)、投資額約40億円

  2 TFT−LCD用ガラス基板

  • TFT−LCD市場は、主力用途であるノートパソコン用の増大に加え、デジタルカメラ用、モバイル用、デスクトップモニター用、テレビ用と用途の拡大もあり年率30%増以上の急 成長を続けており、基幹部材である無アルカリガラス基板の安定供給が市場から切望されています。そこで、当社は京浜工場でTFT−LCD用無アルカリガラス基板用フロート窯を 新設するとともに、当社の100%子会社・旭硝子ファインテクノ社(山形県米沢市)で無アルカリガラス基板の後加工工程である研磨設備の増設を行い、無アルカリガラス基板を増産します。

    • 京浜工場

      2000年夏頃生産開始、窯1基増設、生産能力は現行設備と合わせ約500万m2/年(既存2窯に新設1窯を加えた3窯ともフル生産の場合)

    • 旭硝子ファインテクノ社

      2000年秋頃生産開始、研磨設備増設(680mm×880mm以上の大型基板対応)
      以上2件の合計投資額約100億円
  • また、当社は同ガラス基板製造に世界で唯一フロート法を採用していますが、フロート法の有効採板幅は2.5m以上と、無アルカリガラス分野の同業他社製法の2倍以上あり、最も大型化に適した製法です。現在量産されている業界最大寸法のガラス基板(830mm×650mm)にはフロート法の特長が評価され、当社のガラス基板だけが採用されています。2000年以降増設されるTFT−LCD製造ラインはほとんどが680mm×880mm以上である等、今後ガラス基板の大型化がさらに進展するため、当社フロート法の優位性が一層発揮されると考えます。
  • 当社は今後も、市場の成長を睨みながら設備の増設を続け、2003年には無アルカリガラス基板での市場占有率約40%(現在は約30%と推定)、売上約600億円を目標としています。

(2)医農薬中間体・原体事業の開発・製造・販売を一体化

  • 製薬メーカーや農薬メーカーのアウトソース化の進展に伴い、医農薬中間体・原体の受託製造事業は世界的に急速に拡大しており、市場規模は2000年に約9千億円、2005年に は約1兆8千億円にも達すると予想されています。一方で、自社の合成技術が有効活用できるとみた化学メーカーが、大手、中小を問わずこの分野に新規参入や事業拡大を図ってきており、激しい競合が繰り広げられています。このような状況下で競争に勝ち抜き今後の事業 拡大を計るためには、顧客の幅広いニーズに応え得る、いわゆる“one-stop shop化”(1ヶ所ですべてが賄える店)がますます必要かつ重要になります。
  • そこで、現在、旭硝子本体、100%子会社のセイミケミカル社、若狭エイ・ジー・シー・ファインケミカル社等に分散している事業活動を、2000年秋を目処に集約し、開発・製造・販売が一体となって、より迅速に効率よく対応できる体制を確立する方向で検討を進めています。一体化によりGMP対応や多品種少量生産といった技術の共有化が図れ、設備投資・購買コストの削減にもつながります。
  • 当社グループにおける医農薬中間体・原体事業の売上は1999年度見込みで約100億円ですが、新体制により事業拡大を図り、2005年度には3倍増の300億円を目指します。


 Shrink(縮小)施策

(1)北九州工場の合成ソーダ灰生産中止、設備廃棄

  • ソーダ灰事業の収益改善を図り、基礎化学品事業を強化するため、北九州工場(福岡県北九州市)において生産している合成ソーダ灰(年産能力約35万トン)及び併産する塩化カルシウム(同約3万トン)の生産を、2001年3月末に停止することとしました。

    板ガラスやガラス壜の原料等に用いられる国内のソーダ灰需要は、1990年の140万トンをピークに減少を続けており、2000年には100万トンを割り込む見通しです。当社では、1997年に千葉工場でのソーダ灰生産を停止し需給の改善を図ってきましたが、その後も需要の減少が続いており、また、設備の大規模な更新投資が今後必要になってくることから、事業の黒字化が期待できない状況となっています。

    今回の合成ソーダ灰の生産停止に伴い、旭硝子グループのソーダ灰供給元は、米国天然灰メーカーであるソルベー・ソーダアッシュ・ジョイントベンチャー(SSAJV社、米国ワイオミング州)に出資するAGソーダ社(米国ノースカロライナ州)に集約されます。国内客先向け及び当社のガラス原料用には、AGソーダ社がSSAJV社品を始めとする米国天然灰を日本に輸出することとなるほか、天然灰にない品種については、電解事業において既に提携関係にある(株)トクヤマに生産委託を行なうことにより、生産停止後も国内での安定供給を維持します。

    なお、AGソーダ社は、旭硝子アメリカ社が100%出資する当社の孫会社で、米国ソルベーミネラルズ社との合弁会社であるSSAJV社に20%出資しており、天然灰の販売を行なっています。SSAJV社は現在能力増強工事中で、2000年10月の完成時には、AGソーダ社の引き取り枠は7万トン増の約50万トン/年になります。

    融雪剤や冷媒等に使われる塩化カルシウムについては、千葉工場品(液体)の販売に特化し、固形品の販売から撤退します。北九州工場の化学品部門は、今後重曹に注力し、医薬品や入浴剤などの既存用途に加え、環境対策薬剤としての新市場における販売拡大を目指します。


(2)国内板ガラス事業の構造改革

  1 受注・営業体制の集約化

  • 収益向上策のひとつとして、受注体制・営業体制を見直すこととしました。現在受注機能は、支店、建築用加工ガラス製造子会社のエイ・ジー・シーアックス社及び工場等が多岐に渡り 関与する形で行われていますが、これを一元化するとともに、営業体制は本社事業部のコン トロール機能を強化して一層の効率化を図ります。

  2 ガラス出資特約店の再編

  • 営業戦略の確実な実現を図るため、当社が出資する特約店のミッションを「戦略展開上の尖兵の役割を発揮するとともに、板ガラス・複層ガラスを拡販すること」に明確化した上で、 地域毎に統廃合計画を策定します。
  • 2000年4月に、まず近畿地区において特約店3社を統廃合し、旭硝子近畿建材(株)を設立しました。

  3 建築用加工ガラス事業の子会社移管によるコストダウン

  • 鹿島工場で行っている複層ガラス・強化ガラス等の建築用加工ガラス製造事業(熱線反射ガラス及びミラーを除く)を子会社へ移管し、年間約5億円のコストダウンを図ります。


(3)船橋工場ブラウン管後部ガラス生産窯の廃棄

  • 前記のようにアジアでブラウン管用ガラスの設備増強を行いますが、一方で老朽化した国内設備については、海外拠点とのコスト競争力を考慮し、冷修を行わない場合も出てきます。
  • 具体的には、2001年夏頃に冷修時期の来る船橋工場のブラウン管後部ガラス (ファンネル)生産窯1基について冷修を行わず、設備廃棄することとします。

以 上