2000年10月31日製品リリース

世界初の自動車フロントガラス用「低反射ガラス」・「撥水ガラス」を開発

 旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)はこのほど、運転者の前方視認性を格段に向上させる自動車用フロントガラスとして、低反射ガラス(商品名:エグゼビュー(仮称))並びに、撥水ガラスシステム(商品名:ウェルビュー(仮称))の開発に他社に先駆けて成功しました。新開発の低反射ガラスは、今年8月に発売されたトヨタセルシオに世界初の商品として採用され、また撥水ガラスは、10月24日に発表されたトヨタマークIIに世界初のOEM仕様として採用されました。

 従来、車外要因としては雨による視界低下が、また車内要因としてはフロントガラス面での光の反射に起因するダッシュボードの映り込みが、ドライバーの視界を妨げていました。旭硝子では、これらの問題を解決することで安全性や快適性を高めるフロントガラスの開発を進めてきましたが、今回開発した撥水ガラスにより雨による視界低下を改善し、また低反射ガラスによりダッシュボードの映り込みを大幅に低減することを可能としました。これらのガラスをフロントガラスに採用することで、運転者はくっきりとした前方視界を得ることができます。

 今後は、セーフティードライブ商品として低反射ガラス並びに撥水ガラスの拡販に注力していくとともに、視界快適性に寄与する機能性ガラスを引き続き開発していきます。

 低反射ガラス並びに撥水ガラスの特長は以下の通りです。

低反射ガラス(商品名:エグゼビュー(仮称))

 低反射フロントガラスは、ダッシュボードの映り込みを大幅に低減することを可能とした世界初の商品です。
ダッシュボードの映り込みを抑え視界を良くしたいというニーズ、および、映り込みによる視認性低下を抑えるため暗い色が用いられていた内装色を明るくしたいというニーズがあり、低反射ガラスの開発が望まれていました。
従来の低反射ガラスは複雑な膜構成を必要としており、コストや耐久性の関係で自動車用途には用いられず、絵画や美術品のカバーガラス、高級服や貴金属等のショーウィンドウ・ショーケースに限定的に使われてきました。今般当社は、当社独自の高度なガラスの表面処理技術と光学設計技術を駆使し、画期的な膜構成で低反射性能と高い耐久性とを併せ持つフロントガラスを開発しました。この低反射ガラスをフロントガラスに用いることで、従来のガラスでは得られなかったくっきりとした前方視界を実現するとともに、インパネの色や形状の自由度を向上させることが可能となりました。

撥水ガラス(商品名:ウェルビュー(仮称))

 フロント撥水ガラスは、旭硝子(株)、トヨタ自動車(株)(本社:東京、社長:張富士夫)、アスモ(株)(本社:静岡、社長:長良敏夫)と共同で他社に先駆けて成功したものです。OEM仕様と併せて、市販の撥水剤に比べ耐久性が格段に優れたリペア(後加工)用撥水材料の独自開発にも成功したことにより、セーフティードライブ商品として、OEMとリペアを組合せた画期的な撥水システムを提供できることになります。 

 フロントガラス用の撥水ガラスには、高い耐久性と雨天時における安全性の向上が求められます。ところが、従来の自動車用撥水ガラスは、耐久性に問題があるだけでなく、街灯などの光が撥水ガラス表面で乱反射し、一瞬前が見難くなる「フラッシング」と呼ばれる現象があるため、これまでフロントガラスへの採用は見送られドアガラスのみに設定されてきました。一方、カーショップ等で販売されている撥水剤も、寿命が短く、ユーザーが頻繁にコーティング処理をしなければならないという煩わしさがありました。
今般当社が世界に先がけて開発した撥水ガラスシステムは、撥水機能を向上させると同時に、耐久性を向上させ従来のドア用OEM撥水ガラスに比べ「フラッシング」現象を低減したもので、フロントガラスへの採用が可能となりました。                   
撥水機能と耐久性を向上させると同時に「フラッシング」現象を低減させるためには、高い耐ワイパー摩耗性・耐候性及び、水滴の滑りやすさの向上が必要です。撥水性能及び耐久性を高めるには、撥水機能を発現するフッ素を含む官能基(その化学的性質を特徴付ける原子団)の密度を増やす必要がありますが、このことは水滴滑りやすさを低下させます。
今般、当社独自のフッ素化学技術・分子設計技術を駆使することで、この2つの相反する要求性能を両立する撥水材料と膜構成を開発した結果、フロントガラスへの採用可能な性能を実現できました。新システムでは水滴の滑りやすさにおいて従来品と比較して性能が大幅に向上しています。

 新システムの特長・開発のポイントは以下の通りです。

(1)撥水材料及び膜構成の改良による耐久性の向上
市販の撥水剤は数ヶ月でコーティング処理をやり直す必要がありますが、今回開発した撥水システムは、初回は3年程度、2回目以降はディーラーでの処理により2年程度の撥水性能が持続することを目標に開発しました。

(2)フラッシング現象の原因の解明とその対策
ガラス上にある微小な水滴による光の乱反射が「フラッシング」現象の原因です。当社は同現象の原因の定量的な評価方法を確立し、水滴がガラス表面を滑り易くすること、及び微小な水滴の発生を抑制することで同現象を減少させられることを見出しました。撥水材料の分子設計により、上記2つの課題を解決することでフラッシング現象を減少させることができ、視認性の低下を最小限に抑えることができました。

以  上

<ご参考>

  1. アスモ株式会社


    本社所在地   静岡県湖西市  
    事業概要    自動車用及びOA機器用等の小型モーターシステム製品の開発・設計・製造・販売
    資本金     45億円
    従業員数   5,120名
    売上高    1,342億円(2000年3月期)


  2. 用語解説

    OEM仕様(Original Equipment Manufacturing)
    アフターマーケットや、ディーラーオプションでは無く、自動車メーカーでの組立て時に当初から組みつけられる仕様。(標準装備もしくは、自動車メーカーオプション)


  3. フロント低反射ガラスの効果



    通常のガラス

    低反射ガラス


  4. フロント撥水ガラスの構成図


  5. フロント撥水ガラスの性能