2001年02月14日製品リリース
次々世代半導体リソグラフィレジスト用フッ素樹脂を開発
旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、半導体製造工程における次々世代露光装置用光源の有力候補であるF2(フッ素ダイマー)エキシマレーザーに対応したリソグラフィレジスト用ベースポリマーとなる高光透過性フッ素樹脂の開発に成功しました。
本年4月から、政府主導の「次々世代半導体基盤技術開発プロジェクト」が産官学の連携でスタートしますが、同プロジェクトでは、特にLSIに搭載される素子寸法の微細化に対応できるリソグラフィ技術(回路露光技術)の向上が重要な要素とされています。半導体微細化開発のロードマップとしては、現在は線幅0.18〜0.13マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル(μm)に対応するKrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザーが主流になっており、次世代は0.13〜0.1μmに対応するArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザーが使われる見込みです。次々世代については0.1〜0.07μm対応のF2エキシマレーザーへ変わっていくと予想されており、量産化は2005年頃と計画されています。F2レーザー光(波長157ナノ(ナノは10億分の1)メートル(nm))を透過する材料としてはフッ素樹脂が最有力候補とされ、学会等でも各種樹脂が提案されているところです。
今回の当社の開発は、(株)半導体先端テクノロジーズ(Selete(セリート))の協力のもと、民間共同開発プロジェクト「あすか」のテーマである0.07μm線幅開発ロードマップに沿って行っていたものです。
当社はこれまで、半導体産業向けに、製造設備に使われるPTFE、PFA、ETFE等のフッ素樹脂製品や、KrF、ArFエキシマレーザーに用いられるペリクル(フォトマスクの防塵カバー)用透明フッ素樹脂「サイトップ」を販売してきました。このたび当社が開発した新規フッ素樹脂は、これらの製品開発を通じ培ってきたフッ素樹脂設計技術を生かし、分子主鎖にF(フッ素)原子を導入したもので、Seleteより「157nmの光に対する吸光係数=1.5μm-1以下、ArF並みのドライエッチング耐性、標準現像液に可溶」との評価を得て、F2エキシマレーザーに対応するポジ型(露光部のレジストを除去し未露光部を残すタイプ)単層レジストの基礎原料としての目処を立てました。今後は、レジストメーカー等へサンプル供給を開始し、レジスト開発に協力していく予定です。
半導体製造に使われるレジストの世界需要は800〜900億円/年強であり、国内メーカーが世界の50%以上を供給しています。当社は2005年頃のF2レーザー立ち上げに向け、レジストメーカーに協力していくとともに、開発・製造体制を整備していく計画です。
当社は、今後もIT関連のフッ素樹脂素材開発に注力し、既存のフッ素樹脂事業とともに、化学品の中核事業として積極的に拡大を図って行く所存です。
以 上
《ご参考》
F2
加圧したフッ素ガス中で放電を起こさせると、波長が157nmのレーザーが発生する。これをF2(フッ素ダイマー)レーザーという。
エキシマレーザー
64メガビット以降のDRAM等、0.25μm以下の線幅ルールを必要とする、現世代の最上級及び次世代以降の半導体製造に不可欠のステッパー(縮小投影型半導体露光装置)用光源。主に紫外線領域で発振する光子エネルギーの高いレーザーで、半導体プロセスや光化学反応への応用技術の開発が注目されている。
リソグラフィレジスト
露光によりガラスマスクに焼き付けられた回路パターンをウェハーに転写する(リソグラフィ)際にウェハー上に薄膜状に塗布される感光性樹脂。
Selete(セリート)
(株)半導体先端テクノロジーズの英文名称Semiconductor Leading Edge Technologies, Inc.の略。富士通(株)、(株)日立製作所など国内半導体メーカー10社の均等出資により1996年に設立され、次世代半導体装置・材料の評価や、将来の半導体技術に対応した先端的基盤技術の研究を行う。
PTFE、PFA、ETFE、透明フッ素樹脂「サイトップ」
(1) PTFE(Polytetrafluoroethylene)
四フッ化エチレンの重合体。ほとんどの化学薬品、溶剤に不活性で耐食性などに優れたフッ素樹脂。
(2) PFA(Tetrafluoroethylene Perfluoroalkoxy Vinyl Ether Copolymer)
四フッ化エチレンに少量の第2成分を共重合させることにより、PTFEの耐熱性、耐薬品性等の特性を極力失わず、熱溶融成形が可能なフッ素樹脂。
(3) ETFE(Ehtylene Tetrafluoroethylene Copolymer)
四フッ化エチレンとエチレンの共重合体で、成形加工性、耐薬品性、耐熱性、非粘着性、不燃など優れた特性を有するフッ素樹脂。
(4) 透明フッ素樹脂「サイトップ」
当社が1990年世界に先駆けて開発した透明フッ素樹脂。アクリルやポリカーボネート樹脂をはるかに上回る高い可視光線透過率を持つ。プラスチック光ファイバー材料としても既に実商化されている(当社商品名:「ルキナ」)。
- 本件に関するお問合せ先
- 旭硝子(株)広報室長 井本 健一
- TEL: 03-3218-5915
- 製品に関するお問合せ先
- 旭硝子(株)フロロポリマーズ事業部マーケティンググループ
赤羽根 義三 - TEL: 03-3218-5496