2002年01月17日製品リリース

実用膜厚250nmでの微細パターン形成を可能にするF2レジスト用フッ素樹脂の開発に成功

旭硝子(株)(本社:東京、社長:石津進也)は、次々世代半導体リソグラフィ光源の最有力候補であるF2レーザーに対応し、実用膜厚250ナノメートル(nm。ナノは10億分の1)において世界で初めて線幅100nmの微細パターン(1:1のラインアンドスペース)形成を可能にする高光透過性レジスト用フッ素樹脂を開発することに成功しました。

当社は、民間共同開発プロジェクト「あすか」のテーマである0.07マイクロメートル(μm。マイクロは100万分の1)線幅開発ロードマップに沿って、昨年2月、F2レーザーに対応するレジスト用ベースポリマーとなる高光透過性フッ素樹脂を開発しました。その後、(株)半導体先端テクノロジーズ(Selete(セリート))と共同で、レジスト材としての実用性能を現像性、解像性、耐ドライエッチング性、回転塗布性などさまざまな角度から検証してきました。

レジストとしての実用化に際し、技術的に最も困難とされていたのが、実際のリソグラフィ工程で塗布されるレジストの厚み(200〜300nm)において、F2レーザーの微細パターンを形成することでした。当社では、157nmの光に対する吸光係数が1.0μm−1未満となる、新しい高光透過性フッ素樹脂を設計・合成することに成功しましたが、今般、セリートから、このフッ素樹脂を用い、世界で初めて実用膜厚250nmにおいて線幅100nmの微細パターンが形成可能との評価を得ました(写真参照)。また、現像感度も10ミリジュール(mj)/cm2以下と極めて高く、高感度のレジストを設計できるレジスト材原料として好ましい特徴を有していることが確認されています(参照)。

当社は、半導体産業向けに、製造設備に使われるPTFEなどのフッ素樹脂や、ペリクル(フォトマスクの防塵カバー)用として世界シェア80%のKrF用透明フッ素樹脂「サイトップ」を製造・販売するほか、次世代ArFレーザーペリクル用「サイトップ」の量産も開始するなど、フッ素化学をコア事業とする強みを生かし、幅広い製品ラインナップを実現しています。

半導体製造に使われるレジストの世界需要は800〜900億円と言われています。当社では、今後、レジストメーカー、装置メーカー、デバイスメーカーへのタイムリーなサンプル供給を目的として、2002年春を目処に、各種試作設備を増強するほか、05年のF2レーザー立上げ・07年の量産開始に対応すべく、開発・製造体制を強化していきます。

以   上

<ご参考>

  1. ラインアンドスペース
    リソグラフィ(露光によりガラスマスクに焼き付けられた回路パターンをウェハーに転写すること)によるレジストパターニングの一様式。ラインアンドスペースの大きさがゲート長の大きさと 集積度に比例する。

  2. (株)半導体先端テクノロジーズ(Selete(セリート))
    セリートは同社の英文名称Semiconductor Leading Edge Technologies, Inc.の略。1996年設立。 現在、半導体メーカー13社から研究業務を受託して、2001〜05年度の5年間で約700億円を投じ、デバイスプロセス開発を行っている。02年度以降、現在つくば市に建設中のSCR(スーパークリーンルーム産学官連携研究棟。独立行政法人産業技術総合研究所の所有)に移転し、開発活動を進める計画である。

  3. 「あすか」プロジェクト
    半導体の設計ならびにプロセスの共通基盤の構築と現時点では解決方法が見つかっていない高難易度技術の民間による共同開発計画。01年4月から総費用760億円で5年間実施され、0.1 〜0.07μmのシステム・オン・チップの設計技術、デバイス・プロセス技術の開発を目標とし ている。

  4. 現像性、解像性、感度
    いずれもレジスト要求特性の一つ。現像性は、特にポジ型レジストにおいて光が照射された部分のパターンが現像処理でどれほど除去できるかということ。解像性は、良好なパターニング形状で、どれほど線幅の狭いラインアンドスペースが描けるかということ。感度は、どれほどのレーザー露光量でパターニングできるかを表し、数値が小さいほど高感度である。

  5. 吸光係数
    光吸収性溶質固有の係数のことで、数値が小さいほど光を通しやすい。

<写真> 膜厚250nmにおける100nm、95nm L/Sパターンプロファイル
(レベンソンマスク)

100nm L/S
現像感度グラフ
95nm L/S
現像感度グラフ

<図> 現像感度

現像感度:10.0mJ/cm2
現像感度グラフ

◎本件に関するお問合せ先
旭硝子(株) 広報室
担当:二瀬(にのせ)
TEL: 03-3218-5915
E-mail: info-pr@om.agc.co.jp