2002年02月18日製品リリース

世界初・最高速のギガビットネットワーク環境を複数施設内に設置 〜高速大容量プラスチック光ファイバー(GI-POF)を用いた実証実験〜

[実験の概要と背景]
 社団法人日本テレワーク協会は、経済産業省から委託を受け、三菱商事(株)等と共同で、高速大容量プラスチック光ファイバー(GI-POF:用語説明 i 参照)を用いた実証実験を、本年3月より来年3月末まで実施します。マンションや小学校、大学内にGI-POFを敷設し、超高速ネットワークシステムを家庭内や教育施設内に導入すると、生活や教育における質的向上にどれだけ貢献できるかを検証します。

 ブロードバンド時代に突入し、高画質動画映像等の大容量の情報を、自由にオフィスや家庭にある端末で扱えるようになる時代がすぐそこまで来ています。
 今回の実証実験では、慶應義塾大学小池康博教授が発明し、旭硝子(株)が開発・製品化に成功したGI-POF「全フッ素光学樹脂光ファイバー」(用語説明 ii )を用います。これは柔軟性に富み接続が容易で、安全、しかもギガクラスの伝送速度(Gbps)が楽々確保できるものです(短距離であれば従来からある石英製の光ファイバーよりも速い)。
 本実験ではマンションや小学校の施設・敷地内にGI-POFによる「ギガビット・アイランド」(用語解説 iii )が創出され、さらにアイランド間を1Gbps回線(用語説明 iv )で結ぶことにより、他に類を見ない最高速のネットワーク環境を作り出します。これは世界でも初めての試みで、「真のブロードバンド時代(ギガビット時代)」を先取りした環境といえ、検証結果の活用が大いに期待されます。

[実験の体制]
 本実験は、日本テレワーク協会が主体となり実施しますが、三菱商事はコンテンツ関連も含めた実験実施のトータルコーディネートを、旭硝子は超高速光ファイバーネットワークの構築を分担し、科学技術振興事業団小池フォトニクスポリマープロジェクトが技術的支援を行います。また教育施設とマンションへの高速ネットワーク導入に関しては慶應義塾大学、慶應義塾幼稚舎および三井不動産が参画し、さらに外部回線(主として大学とマンション間)についてはパワードコムが担当して、それぞれ実験を通じた近未来像の検証作業を行います。

[実験のコンテンツ]
 実証実験の主な内容は以下の通りです。

  1. 集合住宅における施設内(アイランド内)超高速ネットワーク環境のもたらす効果の実証

  2. (1)マンション(「パーク・ハイム自由が丘二丁目」)内における実証実験
    {注}同マンションには各住戸に1台ずつのパソコン(計40台)と1テラバイトのストレージ、プラズマディスプレイ等を設置
  3. <リアルタイム・コミュニケーション系>
    • マンションの居住者同士のリアルタイム動画によるコミュニケーション効果
      複数の居住者同士がまったくストレスのないリアルタイム動画を用いてコミュニケーションを実施。複数の子供部屋をつないだまま(常時放映)にして、それぞれの家にいながらにして子供同士が遊んだり、台所をつないで料理を教えあったりという活用が可能であるが、詳細は居住者のニーズを聞いて実施。
    • 定点観測カメラによる利便性の検証(駐車場の監視等による防犯対策等)

    <ストレージ活用系>
    • 映像コンテンツ最新情報を自由自在に閲覧・活用
      大容量ストレージに常に最新情報が蓄積されているのでストレスなく閲覧可能。ブロードバンドコンテンツ等を蓄積して自在に活用するといった使用法を検討。
    • 映像による伝言機能活用
      現在は文字だけでノンリアルタイムのコミュニケーションが行われているメーリングリストや掲示板の映像版を実験的に試行。
    • コミュニケーションとの複合利用
      料理コンテンツ等の映像情報を複数家庭が活用しつつ、それをベースとしてリアルタイムコミュニケーションやノンリアルタイムコミュニケーションを実施して生涯教育の効果増大を狙う、等の実験を住民ニーズに合わせて実施。

    (2)マンションと大学や他地点間を結んだ実験(外部回線は1Gbps回線)
    • 大学内のコンテンツをマンションから動画で閲覧
    • 映像コミュニケーションを用いた遠隔講座等

    (3) 上記以外の、公募した企業によるソフトウェアやサービスの実証実験
    {注}巻末「ビジネスインキュベーションの場として実験環境を提供」を参照

  4. 学校教育における施設内(アイランド内)超高速ネットワーク環境のもたらす効果の実証
  5. (1) 小学校(慶應義塾幼稚舎:金子郁容舎長)内における実証実験
    {注}幼稚舎には計50台のパソコンと1テラバイトのストレージ及びプラズマディスプレイ等を設置

    • 動画お絵描きソフトのネットワーク利用
      従来は単独のパソコンでしか使えなかったソフトウェアを超高速ネットワーク環境によって連結してコミュニケーション型で活用出来るようになるので、教育効果が高まり予想以上の効果を生む可能性あり。
    • 複数学科や複数教室の様子を放映し学科や授業の融合を図る実験教室
      教員同士が事前打合せをして複数教室の様子を相互に放映しあい、途中で他の教室の生徒から質問が割り込んできたりといった教室・学科の融合も想定。

    (2)慶應義塾幼稚舎と大学や近隣教育施設間(西町インターナショナルスクール)を接続した実験
    • 大学内のコンテンツを幼稚舎から動画で閲覧
    • 幼稚舎におけるネットワークを介した大学の教員による授業
    • リアルタイムコミュニケーションによる国際文化交流の進展 等

[実験方法と効果]
 今回の実証実験は、参加者へのヒヤリングやアンケート調査により定期的に結果を把握するとともに、ハード面での検証も併せて行い、ソフト、ハード両面の課題と効果を把握します。これにより、今後の超高速ネットワークシステムの改良への多大な貢献が期待できるだけでなく、適宜実験の結果・経過を公開して行くことで、超高速ネットワークシステムの普及促進を図ることが期待されます。
 なお今後のオフィス・家庭内ネットワークの普及啓蒙のために、平成14年度の実証試験期間内に公開イベントの開催を計画します。


[ビジネスインキュベーションの場として実験環境を提供   (公募型コンテンツの採用と実証)]
 マンション内のギガビットイーサ環境(用語説明 v )は、世界でも初めてとなる居住施設内(アイランド内)の超高速LAN環境で、また大容量ストレージも用意されます。これは実際に生活場面に入るインフラとしては他に類を見ないものですが、今回の実証実験では、マンションLAN及びマンションと大学間の1Gbps回線を広く提供し、雇用創出にもつながるニュービジネスを育てる場(ビジネスインキュベーションの場)として活用して頂けるように考えました。
 別紙公募要項にそって一定の要件を充たす事業者等(ベンチャー企業等)を選定、当該マンション購入者の了解を得た上で開発済みのソフトウェアや計画中のサービス等を本実験環境上で実証し、事業者等にとって将来のビジネス展開につながるデータが得られる場とします。 以  上

■本件問合わせ先

社団法人日本テレワーク協会 主席研究員 柴田 明 TEL:03-3221-7260
科学技術振興事業団ERATO
小池フォトニクスポリマープロジェクト
(慶應義塾大学小池研究室)
大津 信弘 TEL:044-580-1563
三菱商事株式会社 広報部報道チーム 霜田 知也 TEL:03-3210-2179
旭硝子株式会社 広報室 二瀬 明彦 TEL:03-3218-5915
株式会社パワードコム 経営企画部(広報) 高乗 亮之介 TEL:03-4431-6443
三井不動産株式会社 広報部広報課主査 神谷 正樹 TEL:03-3246-3155
   

■参考資料

  1. 社団法人日本テレワーク協会

  2. 所 在 地 東京都千代田区麹町3−2−5 垣見麹町ビル別館2階
    協会理念  オフィスの分散化や情報通信手段を活用し、場所や時間を自由に使った柔軟な働き方であるテレワークを、広く社会に普及・啓発することにより、個人に活力とゆとりをもたらし、企業・地域が活性化できる、調和のとれた日本社会の持続的な発展に寄与する。
    活動内容 テレワークに関する調査研究、普及・啓発活動、行政への提言・支援等
    会  長 大星 公二(株式会社NTTドコモ会長)
    設  立 1991年1月 日本サテライトオフィス協会(任意団体)として設立
    1993年6月 社団法人日本サテライトオフィス協会設立
    1999年12月 社団法人日本テレワーク協会 に名称変更
    会  員 正会員  101企業・団体
    賛助会員 43企業・団体、61自治体  

  3. 三井不動産 「パーク・ハイム自由が丘二丁目」マンション
  4. 所 在 地 東京都目黒区自由が丘2丁目
    総 戸 数 40戸
    竣  工 平成14年3月中旬
    入居開始日  平成14年3月下旬

  5. 株式会社パワードコム
  6. 所在地 東京都中央区晴海1丁目8番10号晴海アイランド
    トリトンスクエア オフィスタワーX
    設 立 1999年11月11日
    社 長 種市 健
    資本金 449億5,800万円
    従業員数 540名
    主な事業内容  電気通信事業法に定める電気通信事業
    (法人向けデータ通信サービス)など
    提供エリア 日本全国

  7. 用語説明
    1. GI−POF
      POFはプラスティック光ファイバー(Plastic Optical Fiber)の略称。POFは、グレーデッドインデックス(GI)ファイバーとステップインデックス(SI)ファイバーに分類される。「グレーデッドインデックス」は「屈折率分布」のことで、GI-POFでは、光ファイバーの屈折率の違いという性質をうまく用いて、情報を損失量を極力少なくして送ることができる。
       
    2. 全フッ素光学樹脂光ファイバー
      GI-POF自体は慶應義塾大学小池教授によって発明されたものであるが、旭硝子(株)が共同開発を担当し、製品化したものが全フッ素光学樹脂光ファイバー(製品名「ルキナ」)である。旭硝子による開発製品・透明フッ素樹脂を素材に用いており、以下の特長を持つ。昨年6月に販売開始して以来、オフィスビル、病院、高層マンションなどの各分野で約30件の採用実績がある。
      • マルチモード石英光ファイバーの性能をしのぎ100mで10Gbps(毎秒10ギガビット)の高速伝送が可能。次世代のネットワーク規格である10ギガビットイーサネットに対応できる高速性を発揮する。
      • 柔軟性・簡易接続性を有し、接続作業に要する時間は石英光ファイバーの10分の1になるため、全配線コストの最も大きなウェイトを占める接続コストを大幅に削減できる。
      • 現在のネットワーク規格である1ギガビットイーサネットや100メガビットイーサネットの市販LAN(Local Area Network)機器にそのまま使用可能。このことは、樹脂系ファイバーとしては世界初。次世代の10ギガビットイーサネットを見越した全光LAN配線の構築が今すぐにでも可能。

    3. ギガビット・アイランド
      ギガビットクラスの伝送速度のLANシステムで結ばれた特定施設・敷地のひとまとまりを指す。GI-POFで形成することが、性能面や経済性・安全性等でメリットが大きい。
    4. 1Gbps回線
      (株)パワードコムが提供する『Powered Ethernet専用サービス』を利用。拠点間を1Gbpsで接続するイーサネット方式による専用サービス。
    5. ギガビットイーサ環境
      ギガクラスの伝送速度(Gbps)がでる、イーサネット方式によるLANが組んである環境のこと。1G(ギガ)bps(ビットパーセカンド)は1M(メガ)bpsの1000倍の速度。イーサネットは現在もっとも一般的に用いられている構内通信(LAN)の方式。

以 上

■参考リンク

  1. 実験模式(スキーム)図(119KB)
  2. 公募要項 「高速大容量プラスチック光ファイバー(GI-POF)を用いた実証実験」におけるマンション内ギガビットイーサ環境等のご提供に関する公募要項(15KB)