2003年07月02日製品リリース

極超紫外線用フォトマスク材料の共同開発に着手


 旭硝子株式会社(本社:東京、社長:石津進也)とインターナショナル・セマテック(以下ISMT 本社:米国テキサス州オースチン、社長:Mike Polcari)は、EUV(極超紫外線)フォトリソグラフィーに用いられるフォトマスク材料を共同で開発することについて合意し、6月25日に契約書調印を完了しました。
 今後旭硝子は、ISMTとニューヨーク州立アルバニー校が設立した「フォトマスク材料開発センター(International SEMATECH North)」に研究員を派遣して共同研究を行うと共に、ISMTに研究開発用のフォトマスク材料を供給することになります。

 半導体製造分野では、高集積化のため、サブミクロン単位の超微細加工への取り組み・技術革新が進んでいます。半導体のパターンを形成するためのフォトリソグラフィー工程においては、光源の波長が短いほど微細な加工が可能になります。現在はArFレーザーと呼ばれる波長193nmの光源が使われ始めており、さらに波長157nmのF2レーザーを利用した加工についても技術開発が進み実用化まであと一歩の状況になっています。
 さらに、考えられる波長の中で最も短い13nmのEUV(極超紫外線)光源を利用したフォトリソグラフィー技術は、半導体の集積度をさらに高め、幅広い分野での技術革新につながるものと期待されています。
 ITRSロードマップは、EUV光源を利用したフォトリソグラフィー技術の実用化を2009年と見込んでいます。しかしながら、F2レーザーまでの光源と異なり、EUV光源は空気や透過光学系を利用した装置に吸収されてしまうため、材料開発を含めてすべての設計を反射光学系のものに見直す必要があり、多くの技術的な課題を持っています。

 ISMTは、半導体メーカー10社によって構成されるコンソーシアムであり、最先端の技術を開発し、半導体メーカーに提供することを使命としています。一方、旭硝子はF2レーザーを利用したフォトリソグラフィー工程で用いられる合成石英基板、ペリクル材料をいち早く実用化し、レジスト用のポリマー開発に目途をつけるなど、高い技術力を持つ素材メーカーであり、ISMTは、旭硝子の素材技術導入がEUVフォトリソグラフィー技術の実用化促進に貢献するものと期待しています。

 また、旭硝子は、素材メーカーとして半導体メーカーのニーズに応えるため、中央究所内に研磨、材料開発に関する開発グループを作り、ISMTとの共同開発と並行して、自社での開発を促進する体制も整えました。旭硝子は、今回の契約と自社での独自の開発によって、EUVフォトリソグラフィー技術開発の成功確率をさらに高めることができると考えています。

以上



<ご参考>

1. フォトリソグラフィー
  LSI回路パターンをシリコンウェハー等に転写するプロセスの総称。微細回路形成のために波長の短い紫外線などを光源として用いる。
   
2. フォトマスク
  フォトリソグラフィーで、LSI回路パターンをシリコンウェハー等に転写するために必要な原版で、特にマスクブランク(フォトマスク製造用基板)上にパターン像を形成したもののこと。
   
3. インターナショナル・セマテック(International SEMATECH:ISMT)
  グロバールな半導体技術開発コンソーシアムで、1988年の創立以後常に半導体業界の新しい技術開発をリードしてきた。ISMTの構成企業は、半導体製造メーカー10社。ISMTは、最先端の技術開発を、技術パートナーとともに開発し、半導体メーカーに提供することをミッションにしている。技術パートナーとしては、半導体製造装置メーカー、材料供給メーカーばかりではなく、政府関係研究機関、大学などとも連携を取りながら次世代半導体チップの製造技術に関する開発を進めている。
参加メーカー:Intel, IBM, TI, Motorola, TSMC等
   
4. フォトマスク材料開発センター
  半導体業界が2007年に必要としているEUVフォトマスク関連技術の開発を加速するために、ISMTとニューヨーク州立大学アルバニー校との間の契約に基づいて設置された開発センター。ISMTからの50〜60名程度の出向者と、関連の材料、装置業界からの派遣研究員、大学の研究者等で構成される研究機関で、2007年までにEUVフォトマスク技術の事業化のための製造、評価のインフラを確立することを目的としている。今回の契約により、旭硝子は、開発センターに設置される最先端の装置を自社製品の開発にも利用できることになる。
   
5. EUV(極超紫外線)光源
  EUV(極越紫外線)に用いられる光源技術のことで、従来のレーザー技術に代わり、プラズマ発行を利用した光源技術のこと。将来、微細加工回路線幅45ナノメートル以下の設計ルールの半導体に使用されることが期待されている。(*1ナノは10億分の1)
   
6. ITRSロードマップ
  半導体の業界団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Material's International)が発表している半導体技術に関するロードマップ。
www.semi.org  から入手可能。
   
7. 反射光学系、透過光学系
  従来のフォトリソグラフィーの工程においては、光源からの光を制御するために異質の媒体中を透過させることにより、平行線の形成、集光などを行ってきたが、EUVフォトリソグラフィーでは、この波長の光を透過させることのできる異質媒体がないので、光を反射させることで露光に利用する光を制御する方法に変わっている。
フォトリソグラフィー工程露光機参考図 (PDF74KB)
   
以上
本件に関するお問合わせ先
旭硝子(株)広報室長 川上 真一
担当:波多野
TEL: 03-3218-5915
E-mail: info-pr@om.agc.co.jp
International SEMATECH  Media Relations Manager  Dan McGowan
TEL: 512-356-3340
E-mail: Dan.mcgowan@sematech.org