2003年10月16日経営リリース

高エネルギー密度の新型電気二重層キャパシタの開発に成功

旭硝子株式会社(本社:東京、社長:石津進也)は、従来品の3倍近くまでエネルギー密度を向上させた新型電気二重層キャパシタの開発に成功しました。新型キャパシタは、セル体積当たりで13F/ccの高容量密度と3.0Vの世界最高レベルの耐電圧を有することにより、二次電池に比べて弱点となっていたエネルギー不足を解消し、1000W/リットルという高出力域において、10Wh/リットルの高エネルギー密度を実現したものです。この開発により、自動車用などの産業分野においてキャパシタの実用化が飛躍的に加速するものと期待されます。

当社は、関連会社のコンデンサーメーカーであるエルナー株式会社と共同で、1985年から電気二重層キャパシタの開発に取り組み、ICメモリーバック用途を中心とした小型のコイン型キャパシタの開発に成功し、1988年にエルナー社において量産製造及び販売を開始しました。
その後、当社は、コイン型キャパシタの量産化で培った技術をベースに、高出力電源への応用を目的とした大型キャパシタへの技術展開を図り、課題であったエネルギー密度の不足を解消するため、電極及び電解液について独自に開発を進めてきました。今般開発に成功した電極及び電解液の特徴は次の通りです。

○電極…… 高容量を発現する高純度特殊活性炭を主材料とし、当社製のフッ素樹脂PTFEを用いたミクロフィブリル化高密度成型法を活用した、体積当たりの容量密度が高く電気抵抗の低い高性能成型電極
○電解液… 当社の特許保有技術である非対称第4級アンモニウム塩と低極性有機溶媒とを組み合わせた、高い耐電圧と高出力を維持する高性能有機電解液

また、低コスト実現の観点から、生産性の高い電極捲回型の円筒セル構造を採用するとともに、従来タイプのように電極からリードタブ引き出しを必要としない「タブレス構造」を開発し、素子収納効率のアップによる体積容量密度の向上とセル内部抵抗の低減による出力アップを実現しました。単体の円筒セルの電気容量はおおよそ500〜2000Fで、当社は、単体の円筒セルを直列化した14V、42V高電圧モジュールとしてセットする技術も保有しています。このような開発を通じて、当社は、約300件の特許出願を行っています。

現在、自動車用においては、高出力で小型の電源が求められており、今後、ハイブリッド自動車、燃料電池車用途の旺盛な需要が見込まれます。特にハイブリッド車については、2010年には220万台程度に市場が拡大すると予想されており、当社は、新型キャパシタの性能を最大限に生かせるミニハイブリッド車の市場を主なターゲットとして事業展開を行っていく所存です。

以 上

<用語解説>

1. 電気二重層キャパシタ
イオンを含む電解液と高表面積をもつ電極材料との界面に形成される"電気二重層"に電気を蓄えることを原理とするもので、通常のキャパシタに比べて、極めて大きな静電容量をもつキャパシタであり、充電、放電のできる一種の蓄電源として利用されます。電気二重層への電荷蓄積という物理的な現象を原理としているので、大電流での放電や、短時間での急速充電が可能で、その充電・放電を繰り返しても性能の劣化が極めて少なく、半永久的に使用が可能な電源です。
   
2. F(ファラッド)
キャパシタ(コンデンサ)の静電容量を表す物理単位です。静電容量C(F、ファラッド)をもつキャパシタに直流電圧V(ボルト)を加えたとき、キャパシタに蓄えられる電気量Q(クーロン)は、Q=C×Vと表されます。
 
3. 出力密度、エネルギー密度
ある一定の出力値W(ワット)でキャパシタを放電したとき、その放電の持続時間h(アワー)とすると、そのとき取り出せるエネルギー量Eは、E=W×hと表わされます。これらの値はキャパシタの大きさによって異なりますので、その能力を標準化して比較するために、それぞれの値をキャパシタセルの体積(リットル)で除した数字を、出力密度W/リットル、エネルギー密度Wh/リットルとして表記しています。
 
4. ミクロフィブリル化高密度成型法
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、機械的な剪断(せんだん)力を加えると、数ミクロンレベルの微細な繊維状になります。この性質を利用して、活性炭粉末をミクロ繊維化したPTFEネットワークの中に固定化した成形法です。
 
5. 非対称第4級アンモニウム塩
第4級アンモニウムは、窒素原子に4本のアルキル基が結合したプラスイオンです。これまではこの4つのアルキル基はすべて同じものから成る対称第4級アンモニウムが利用されてきました。当社は、この4つのアルキル基をお互いに異なるものを結合させた非対称アンモニウムにすることにより、溶解性及び導電性を飛躍的に向上させました。
 
6. 電極捲回型の円筒セル構造、直列モジュール
正極および負極ふたつの長尺状電極体の間にセパレータを介在させて、ロール状に巻き上げた素子体を基本とする円筒型の構造です。数Vから数百Vの高電圧での駆動を要求される用途があり、そのような場合には複数の単体セルを直列に接続したモジュールの形で用いられます。

◎本件に関するお問い合わせ先
旭硝子(株)広報室長:川上 真一
担当:斎藤
TEL: 03-3218-5509
E-mail: info-pr@agc.co.jp