物流課題を解決する「共同輸送」が大きく前進 荷主主導で描く、フィジカルインターネット実現への道筋 物流課題を解決する「共同輸送」が大きく前進 荷主主導で描く、フィジカルインターネット実現への道筋

Jan.05 2026

物流課題を解決する「共同輸送」が大きく前進 荷主主導で描く、フィジカルインターネット実現への道筋

日本の物流が危機にひんしている。トラック・ドライバーの人員不足が課題となり、2030年には輸送能力の約34%が不足するという予測もある。そこで注目されているのが、「2025年度ロジスティクス大賞」を受賞した「traevo noWa(トラエボ ノワ)」。AGCが発起人となり、一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)において構築した「共同輸送相手探索サービス」だ。フィジカルインターネット(物流をインターネットのように標準化・共有化する仕組み)への大きな一歩として期待されている。その取り組みについて、3人のキーパーソンが語り合った。

Profile

田中 真史

田中 真史

AGC株式会社 調達・ロジスティクス部 技術統括室 技術推進グループ ロジスティクス技術チームリーダー

鈴木 久夫

鈴木 久夫

株式会社traevo 代表取締役社長

河原 秀行

河原 秀行

大王製紙株式会社 グローバルロジスティクス本部 副本部長

「運べなくなる未来」が迫る 物流は日本企業共通の課題

――「traevo noWa」が、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「2025年度ロジスティクス大賞」を受賞されました。AGC、大王製紙をはじめ多くの企業が参画して意見を出し合い、TDBC、traevoと共に事業化されたプロジェクトだと伺いました。

AGC株式会社 調達・ロジスティクス部 技術統括室 技術推進グループ ロジスティクス技術チームリーダー 田中 真史氏

AGC株式会社 調達・ロジスティクス部 技術統括室
技術推進グループ ロジスティクス技術チームリーダー
田中 真史氏

AGC 田中氏 同賞は「該当者なし」が2年続いた末の、3年ぶりの受賞でした。物流業界からの大きな期待を感じています。「traevo noWa」は、荷主や物流事業者が参加して共同輸配送を促進するマッチングサービスです。この活動が「業種や業態を超えた共同輸送の実践的な取り組みであり、フィジカルインターネットの基盤とも位置付けられる活動」という評価をいただきました。物流課題の中でも、問題視されている「輸送力不足」を解決する本格的な一歩になればと考えています。

――「2024年問題」や「2030年問題」など、輸送力不足に起因する物流課題は年々深刻化しています。企業はどのような危機感を持っていますか。

traevo 鈴木氏 トラック・ドライバーの高齢化が進み、人員不足が加速しています。加えて、2024年4月からドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されました。輸送能力の急速な低下が懸念され、輸送の危機が表面化しだしたのがいわゆる物流の「2024年問題」です。さらに2030年には、日本の高齢者が総人口の3割を超えます。物流の担い手はさらに減り、輸送能力の約34%が不足するという予測もあります。それが「2030年問題」です。物流コストの更なる上昇、地域格差の拡大、サービス品質の低下などが懸念されています。


田中氏 AGCも荷主として大いに危惧しています。我々はガラス製品や化学製品を扱っており、多種多様な貨物特性を持っています。トラックのサイズはフルトレーラーから小型まで、建築ガラス輸送で主に使われる「平ボディ車」、特殊な化学製品を運ぶ「タンクローリー」などと多彩です。モノを運べなくなることは、当社にとってビジネスの存続に関わる課題です。

株式会社traevo 代表取締役社長 鈴木 久夫氏

株式会社traevo
代表取締役社長
鈴木 久夫氏

大王製紙 河原氏 物流能力の不足は、さらに加速するでしょう。企業ごとの事情や思惑を超えて連携することの重要性を感じています。大王製紙には、紙・板紙事業部とH&PC(ホーム&パーソナルケア)事業部の2つの事業部があります。新聞用紙や段ボールなどを巻いた重量1トンほどのロール紙(巻取)と、エリエールブランドのティシューペーパーに代表される家庭紙です。前者は安全面等に考慮した特殊な配送体制、後者は時期によって消費に変動があることが課題です。いずれも法令に対応しながら顧客への納期を遵守することが大前提です。


田中氏 ドライバーが減るなかで物流能力を維持するには、トラックの積載効率を上げるしかありません。その有力な方法の一つが、他社との共同輸送です。当社は自社の物流DXによる効率化と並行して、共同輸送の検討を開始しました。そんな中で、共同輸送に取り組んだ最初の仲間の1社が大王製紙さんでした。

河原氏 当社が兵庫県加古川市から神奈川県川崎市までロール紙を運んだ帰りに、AGCさんの鶴見工場でガラス製品を積み込み、兵庫県へ戻るというルートで実現いたしました。エリアと諸条件を合わせることは難しいですが、引き続き他ルートでの共同輸送についても可能性を考えていきたいです。


田中氏 共同輸送には、いくつかの壁があります。まずは、共同輸送を行う相手とルートを探すこと。次に、安全や品質、時間等の諸条件のすり合わせです。中でも相手探しについては各社の輸送情報が分からないため、業界団体の会合やホームページからのコンタクトによるアナログなつながりに頼らざるを得ず、非常に労力がかかる点を課題と感じていました。


そんな時にTDBCにて『動態管理※プラットフォームの活用』が検討されていることを知り、動態管理プラットフォームに集まった情報を活用して輸送の検索エンジンのようなものが作れないかを相談しました。

※動態管理:車両や人など「動くもの」の現在位置や稼働状況をリアルタイムに把握・管理するシステム

大王製紙株式会社 グローバルロジスティクス本部 副本部長 河原 秀行氏

大王製紙株式会社
グローバルロジスティクス本部 副本部長
河原 秀行氏


鈴木氏 私たちは2022年1月に「traevo(Transportation Evolution)」という動態管理プラットフォームを始めていました。このサービスはトラックのドラレコやデジタコ等の位置情報やステータスを機種やメーカー問わず、リアルタイムに一元管理できるサービスです。


「traevoを活用して共同輸送に取り組む仲間作りをする仕組みを作りたい」という田中さんの話を聞き、大変感銘を受けました。そこで、「ワーキンググループ(WG)を立ち上げませんか」とお誘いしたわけです。こうして『共同輸送データベースWG』として発起人であるAGCがリーダーを務め、3年にわたる試行錯誤を重ねて「traevo noWa」が誕生しました。

荷主企業が議論を主導した世界でも珍しいプロジェクト

――「traevo noWa」は2025年8月、正式にサービス・インしました。その特徴は何でしょうか。

鈴木氏 「traevo noWa」は、荷主や物流事業者が、自身の手で共同輸送の相手を探せる検索サービスですが、最大の特徴は、物流のユーザーである荷主企業が立ち上がり、主体となって構想したことです。システム構築には荷主を中心に、物流事業者、ベンダーなど50社以上が参加し、荷主にとって使いやすく、実用性を備えたシステムとして細部まで周到にデザインしています。


田中氏 同じ課題を抱えるメンバー同士が率直に議論しました。通常、こういったシステムはITベンダーなどが主導して独自の基盤を立ち上げることが多いのですが、「traevo noWa」は、誰もが平等にデータを活用できるユニバーサルシステムを目指し、荷主が主体となり要件定義から実証実験を一貫して行いました。世界を見渡しても、こういったユーザー主導のアプローチは非常に珍しいと思います。


このシステムは多くの企業に参加してもらい、登録母数が増えることで出会いが生まれる可能性が増加し、多様なマッチングが生み出されます。そのため、誰もが参加しやすく扱いやすいシンプルな設計を心がけました。入力データは出発地と到着地の市区町村、車種、車格のみとし、荷姿等の詳細情報はあえて含めません。またデータ入力はExcelを採用しています。手間が少なく、IT知識がなくても簡単に扱えるようにしました。


鈴木氏 加えて、会費は年間3万円と法人向けサービスとしては、極めて低くしています。コスト面での参入障壁を低くし、大企業だけでなく中小企業にも積極的に利用してほしいと考えたからです。


河原氏 WGでの約3年にわたる課題検証と実証実験を経て、社会実装に至りました。23年に行われた実証実験には大王製紙も参加しましたが、確かな手応えがありました。

――「traevo noWa」は、具体的にどのように利用されるのでしょうか。

鈴木氏 参加企業は、まず自社の物流データを登録します。例えば、「茨城県のある市から愛媛県のある市まで、どういうタイプのトラックで、月に何台輸送している」といったデータです。


登録したデータは匿名に加工され、検索可能な状態で提供されます。そこで例えば、先ほどと逆の「愛媛県から茨城県へ」荷物を運んでいる相手企業が見つかれば、トラックが茨城県から愛媛県に荷物を運んだ後、愛媛県で荷物を積んで茨城県へ帰ることができます。トラックは往復共に満載となり、単純にいくと物流効率が2倍に向上するわけです。


同様に、荷台に空きスペースのあるトラックがあれば、そこに他社の荷物を混載することで、積載率を高められます。限りある日本の物流リソースを、企業の協力によって有効活用します。

「traevo noWa」を通じて共同輸送相手がマッチングできれば、トラックを往復共に活用し積載率を高めることが可能になる

「traevo noWa」を通じて共同輸送相手がマッチングできれば、トラックを往復共に活用し積載率を高めることが可能になる

田中氏 デジタル化する上で懸念される機密の担保として、発着地の情報は市区町村までに留め、詳細住所までは登録されないようにしました。さらにデータを登録した企業が、自身が登録したルートに対応するルートしか検索できない仕組みにもしています。また、匿名で検索している状態では、相手先の企業名も分かりません。相手を見つけて連絡を取り、お互いのニーズが合致すれば、対象ルートの企業名が分かる仕組みです。そこから先は、個別に話し合い諸条件をすり合わせた上で共同輸送を実現します。


鈴木氏 マッチングが成立するまでは匿名が好ましいという判断も、WGでの議論をもとに決定しました。各社の物流データが、共同輸送以外の目的で使われることを防ぐためです。企業にとって、物流データは1つの機密情報。そこからビジネスの規模や業績を推測することも可能になってしまうからです。

――「traevo noWa」の反響はいかがですか。

鈴木氏 大きな反響があります。開始2カ月で、登録はのべ70社を超えました。共同輸送に前向きな企業で、方荷(かたに:往路か復路の片方しか積み荷がない状態のこと)で困っている企業が多いです。

「traevo noWa」で共同輸送の「仲間」を増やせ フィジカルインターネットの基盤としても期待

――「traevo noWa」は、日本の物流課題をどのように解決していきますか。今後の展望を教えてください。

鈴木氏 物流は日本全体で取り組むべき課題ですから、そこで基盤となるサービスは営利目的ではなく、公共の利益を最優先に考えたものであるべきです。「traevo noWa」は非営利団体であるTDBCが主導し、その事業会社のtraevoが開発しています。誰もが平等にメリットを享受できるシステムで各社のデータをシームレスに共有し、情報格差を生まない活動にしていきたいと考えています。


公共の利益に資するサービスであることは、政府にも認識されています。例えば、経済産業省北海道経済産業局で進めている「共同輸配送デジタルマッチング事業」の基幹システムにも採用されました。今後も、フィジカルインターネットの基盤として社会的役割を果たしていきたいと思います。

河原氏 従来の企業活動は、物流を最終段階で考えることが常態化していました。しかし、今後はそれを見直す必要があります。物流を起点に、理想的な生産体制の在り方、ひいては企業や社会の在り方を考えていくときが来ています。「traevo noWa」の活動はその一つの答えだったと思います。業種を超えた多くの企業が活発な意見交換をして、社会全体に大きな方針を示すことができました。


田中氏 「traevo noWa」とは「traevoの和」であり「traevoの輪」という意味です。「和」は公平・平等、「輪」は協調の実現を願い、名付けました。物流は社会インフラに根差した活動なので、1社単独では解決できない困難がたくさんあります。共通の課題に向けては、競争ではなく“共創”の体制を整え、立ち向かうことが重要です。


「traevo noWa」は、ユーザーが増えれば増えるほどデータが蓄積され、システムの有効性が高まります。そのためには、もっと多くの「仲間」が必要です。2026年1月まで無料トライアル期間も設定されていますので、ぜひ多くの企業に試していただきたいです。


同じ問題意識を持つ企業の皆さんと共に、日本の物流課題を解決していきたいと考えております。私たちの活動に共感し、参画いただける企業をお待ちしております。

traevo noWa:https://traevo.jp/nowa/
traevo:https://traevo.jp/logistics2024-waiting-time/
TDBC(運輸デジタルビジネス協議会):https://tdbc.or.jp/

「日経ビジネス電子版」2025年11月に掲載された広告記事より転載

※部署名・肩書は取材当時のものです

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