最先端半導体を革新部材で支える 前人未到の道を切り開くのはAGCが誇る多様な人財の力 最先端半導体を革新部材で支える 前人未到の道を切り開くのはAGCが誇る多様な人財の力

Nov.22 2023

最先端半導体を革新部材で支える 前人未到の道を切り開くのはAGCが誇る多様な人財の力

パソコンやスマートフォン、家電製品、自動車、産業機器に至るまで、デジタル化されたあらゆる機器の機能と性能をつかさどる重要部品、半導体。チップ上に搭載する回路の微細化により、デジタル機器の高機能化・高性能化・低消費電力化を実現している。ただし半導体の進化は、製造に用いられる部材のさらなる高品質化が大前提だ。AGCグループでは最先端半導体の製造に不可欠な部材をタイムリーに開発・提供することで、市場の発展に貢献している。半導体産業におけるAGCの強みと現場から見える景色について部材開発に従事するエンジニアと営業担当者に話を聞いた。

Profile

三浦 植幸

三浦 植幸

AGCエレクトロニクス ブランクス部 生産技術グループ

全 佑鎭

全 佑鎭

AGC 電子カンパニー 電子部材事業本部 アドバンストマテリアル事業部 ポリッシング部 営業グループ

髙倉 央幹

髙倉 央幹

AGCエレクトロニクス ブランクス部 検査技術グループ

長年蓄積してきた技術と人財力で最先端の希少部材を開発

豊かで持続可能な社会の実現を目指して世界中が2つのメガトレンドである「デジタル化」と「脱炭素化」に取り組んでいる。その際、キーテクノロジーとなるのが半導体である。これは高度な情報通信社会の実現に欠かせない。


半導体産業ではより高品質な半導体チップを実現するため、チップ上に搭載する回路の微細化を推し進め集積度向上による高機能化・高性能化・低消費電力化に取り組んでいる。そうした最先端のチップを作るには、他産業では類を見ないほどに高度な技術で製造した部材が不可欠となる。


AGCでは最先端チップの製造に欠かせない2つの部材を供給している。現時点では世界中でたった2社しか供給できない希少部材「EUV露光用フォトマスクブランクス」(以下、EUVマスクブランクス)とチップの品質を決める重要部材「セリアスラリー」だ。いずれもAGCが長年蓄積してきた技術を基に人財の力を結集して、前人未到の領域での開発・生産・供給に取り組んでいる。


変化の激しい半導体産業の中でAGCが顧客の求める最先端部材を継続的に開発しタイムリーに提供できるのは、専門性を持つ社員の存在とそれを可能にする環境があった。

図1 AGCの電子部材事業本部で取り扱う製品群。材料技術・加工技術・設計技術の組み合わせで多様なラインアップをそろえ、独自のソリューションを提供している

図1 AGCの電子部材事業本部で取り扱う製品群。材料技術・加工技術・設計技術の組み合わせで多様なラインアップをそろえ、独自のソリューションを提供している

日進月歩で発展する半導体製造 部材の改良・革新で伴走するAGC

微細化を追求する半導体メーカーにAGCが提供している重要部材の一つ「EUVマスクブランクス」は、半導体チップ上に回路パターンを形成する際に利用されるフォトマスクの原板となる部材である。これまで半導体チップ上の回路パターンは波長193nm以上の紫外光で転写されていた。しかし、数nmと極めて微細なスケールで回路を形成する最先端チップの製造工程では、従来の1/10以下となる波長13.5nmの極端紫外線(EUV)光による高精度な露光で回路パターンを転写する必要がある。そしてこのEUV露光はマスクブランクスの平坦(へいたん)度や欠陥を従来の10分の1にまで低減することが求められる。


一方、もう一つの重要部材であるセリアスラリーは製造仕掛け中のウエハー表面を化学的機械研磨(CMP)と呼ばれる技術で平坦にする際に利用する研磨材である。中でもAGCが提供する「セリアスラリー」は、砥粒(とりゅう)にセリア(酸化セリウム)の微細粒子を使ったものだ。近年、チップ上に形成される素子や配線は複雑な3次元構造を持つようになった。このため製造過程で表面の凹凸を平坦にしなければ、パターンを重ねて転写することや均一・均質な薄膜を形成することが困難になってくる。AGCのセリアスラリーは、特にチップの性能や品質を大きく左右する工程で利用されているのだ。


最先端の半導体製造は、技術が日進月歩で発展し続ける極めて特殊な領域だ。そこで活用されるEUVマスクブランクスとセリアスラリーもまた、技術革新を求め続ける半導体メーカーと伴走しながら、部材レベルでの改良・革新を継続していく必要がある。そして、こうした技術の開発や製品の供給に携わるAGCは半導体メーカーの要求に迅速かつ適切に応えることが求められており、機動性を支える組織体制やそれを後押しする職場環境がなければならない。

風通しの良い環境で組織が協調 顧客企業もパートナーとして連携
AGCエレクトロニクス ブランクス部 生産技術グループ 三浦 植幸氏

AGCエレクトロニクス ブランクス部 生産技術グループ 三浦 植幸氏

EUVマスクブランクスは、ゼロ熱膨張ガラス基板の表面に複数の光学薄膜を積層して作られている。AGCエレクトロニクスでその成膜技術の開発に取り組んでいる三浦植幸氏は、「ゼロ熱膨張ガラスの製造から平坦度を高める研磨、要求特性を満たす均一な成膜とマスクブランクス製造に必要な技術を川上から川下まで一貫して手掛けているのがAGCの強みです」と語る。EUVマスクブランクスの開発・製造の各工程に関わる部署が組織の垣根を越えて連携し、互いの技術を迅速に擦り合わせながら最適化できる体制を築いている。

こうした部署間連携による強みはセリアスラリーにおいても同様だ。AGC電子カンパニーでセリアスラリーの営業担当である全佑鎭(ジョン・ウジン)氏は、「材料である砥粒から自社で開発・製造し、お客様のニーズに応じた高品質なセリアスラリーを作り込んでいます。一般的には外部調達するケースが多い材料ですが、そこも自社で手掛けるAGC固有の強みはお客様から高く評価されています」と言う。

加えて全氏は、部署間連携を円滑に進め成果を最大化する職場環境も、AGCの特長だという。メンバー同士の顔が見えるコンパクトな組織構成を備え、必要に応じて組織単位で判断を下しスピーディーな対応を可能にしている。さらに部署を超えて連携する際には、役職や経歴の違いを感じることなく、フラットな関係で協力し合う雰囲気もあるという。


一方、AGCエレクトロニクスでブランクスの品質保証に関わる検査技術を開発している髙倉央幹氏は、違った角度からAGCの強みを語っている。「品質がどのような手法で保証されているかに、お客様は強い関心を寄せており、期待値も高いです。ただし最先端の技術領域であるため、何が最適なのかお客様とともに探っていかなければなりません。お客様が抱える課題に寄り添ってともに知恵を出し合う姿勢で常に取り組んでいます」。ユーザーとサプライヤーという関係を超えて、ともに困難な課題に取り組むパートナーとして連携する。顧客との間に強い信頼関係を築いていることがうかがえる。

AGC 電子カンパニー 電子部材事業本部 アドバンストマテリアル事業部 ポリッシング部 営業グループ 全 佑鎭氏

AGC 電子カンパニー 電子部材事業本部 アドバンストマテリアル事業部 ポリッシング部 営業グループ 全 佑鎭氏

最先端のエレクトロニクス分野でAGCが“働く場”として選ばれる理由とは

AGCにはキャリア入社者も多い。革新的な発想は、専門知識・スキル・価値観など、多様な背景を持つ人財が集まり、協力しながら仕事をする中でこそ生まれると考えているからだ。


転職してAGCの半導体関連部材のビジネスに参画したキャリア入社社員は、AGCの強みをそれぞれ競合やユーザー、異業種企業などの視点から客観的に観察していたはずだ。そもそも彼らはAGCのどのような点に注目して同社に転職したのだろうか。


AGCがEUVマスクブランクスの研究開発に着手したのは2003年のことである。三浦氏は「技術の重要性が広く認識されていない、かなり早い時期からEUVマスクブランクスの開発に着手していた先進性に魅力を感じました。半導体は変化が激しい産業です。そうした中で新しい技術に対する嗅覚が鋭く、開発に果敢に挑む社風があると感じたからです」と言う。

AGCエレクトロニクス ブランクス部 検査技術グループ 髙倉 央幹氏

AGCエレクトロニクス ブランクス部 検査技術グループ 髙倉 央幹氏

一方、髙倉氏は「素材の技術開発は短期的に成果を得にくい技術領域だと思います。ところがAGCは長年蓄積してきた技術を基に、最先端の素材や部材を数多く上市しています。AGCは長期的な戦略を持ち、すぐに成果が出ない研究開発にも将来を見据えて継続投資する企業であり、これからも成長していくに違いないと考えました」と語る。AGCの前身である旭硝子の創設者・岩崎俊彌は「易(やす)きになじまず難きにつく」という創業の精神を唱えている。祖業のガラス事業だけでなく、エレクトロニクス事業においても果敢に挑む気風は変わらない。

営業である全氏は「私は受注獲得を中心とした営業というより、マーケティングや事業企画、事業管理などビジネス全体を組み立てられる広い視野から新しい価値を生み出す営業になりたいと考えていました」と述べている。部署の垣根を越えた連携のもとで仕事を進めていくことができるAGCの社内環境はまさに理想的といえるだろう。

図2 AGCの電子部材事業の歴史。30年以上の歴史の中で常に新技術の開発に挑戦し、長期的視野で戦略を進める同社の足跡が表れている

図2 AGCの電子部材事業の歴史。30年以上の歴史の中で常に新技術の開発に挑戦し、長期的視野で戦略を進める同社の足跡が表れている

多様な人財が活躍できる魅力的な職場環境とは

最先端部材を手掛ける専門性の高い社員がその能力を十分に発揮しパフォーマンスを最大化するためには、組織の支援体制ややりがいを持って働ける環境が必須だ。AGCに入社した後、そうしたフォローアップ体制についてはどのように感じたのだろうか。


「EUVマスクブランクスの開発ではスピード感が重要だと考えています。若手であっても大きな裁量が与えられていることに責任とやりがいを感じています。もちろん、全てを1人で解決できるわけではありません。所属部署だけでなく他部署とも連携しながら取り組むことになるのですが、それを後押しする職場の風通しの良さに助けられています」と三浦氏は答える。この他にもPythonを使ったプログラミング技術の習得支援など、教育制度が充実しており自発的にスキルアップを目指すこともできる。


ワーク・ライフ・バランスに関わる制度の整備や、それを利用する職場の雰囲気も良好だ。全氏は「私はこれから育児休業制度を利用して約1カ月休職する予定です。職場には、育休取得を後押しする雰囲気がありました。また現在私が所属している部署は在宅勤務を取り入れたハイブリッドな勤務体系になっています。家族と過ごす時間を大切にしながら効率よく働くことができています。こうした状況はコロナ禍が落ち着いた現在も同じ状況です」と語る。


また、EUVマスクブランクス事業を担うAGCエレクトロニクスの製造・開発拠点、本宮事業所は東北地方の中核都市の一つ、福島県郡山市の近郊にある。「郡山は仙台と東京の中間地点であり、新潟にも電車一本で出ることができます。有給休暇を取得し、様々な場所に小旅行に出掛けるなどメリハリのある生活ができています」と髙倉氏は言う。仕事がしやすいだけでなく買い物やレジャーなど住環境も魅力的だ。

最先端産業に従事する先に一人ひとりの未来がある

技術面でも事業面でも変化が激しい半導体産業で働く人財には、常に時代の要請に応えながら自身の専門性やスキルを磨くことが求められる。AGCで半導体事業に携わっている社員は自身の未来の姿をどのように描いているのだろうか。


全氏は「現在営業を担当しているセリアスラリーは、主に半導体の製造に向けた部材です。ただし、半導体以外のアプリケーションも開拓できる可能性を感じています。センサーなどの電子部品の生産工程には、半導体に近いプロセスがあるところが多いように思うからです。新たな用途を開拓し、まだ具現化していない価値を提供する仕事をしたいです」と語る。

三浦氏は「EUVマスクブランクスの成膜には多様な種類があります。今はその一つの成膜を担当していますが、今後はそれ以外の成膜に関する知識も蓄えて、マスクブランクス全体を俯瞰(ふかん)できる人財になりたいと考えています」と言う。


髙倉氏は「私は、転職時に30代で海外赴任をするという目標を立てていました。AGCの半導体事業は海外に多くの顧客がおり、多数の事業拠点が海外にあります。現在の業務内容にとらわれず、必要な知識とスキルを磨いて海外赴任を実現させたいと思います」と語る。


AGCは、「人財のAGC」を戦略に掲げダイバーシティー(多様性)を大切にしている。組織の成果を最大化するために大切であると同時に、社員一人ひとりのキャリアを形成していく上でも重要なポリシーだ。社員それぞれが描く多様な未来は、明日のAGCの源泉となっていくことだろう。

日経クロステックSpecial 掲載記事

※部署名・肩書は取材当時のものです

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