2022年03月24日研究開発リリース

国際宇宙ステーションで酸化ガリウム融液物性測定に世界で初めて成功

― 酸化ガリウムウェハの実用化を更に加速 ―

AGC(AGC株式会社、社長:平井良典)は、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟において、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、理事長:山川宏)の保有する静電浮遊炉*1を活用し、高融点材料である酸化ガリウムの融液物性測定に世界で初めて*2成功しました。
パワー半導体は、サーバー・自動車・産業用機械・家電製品など様々な電気・電子機器に組み込まれ、電力の制御を行う電子部品です。酸化ガリウムは既存のパワー半導体材料であるシリコンと比較し、電力損失が少なく、高電圧・大電流で使用できる可能性があることから、次世代パワー半導体材料として、高い注目を集めています。
当社は酸化ガリウムの将来性に注目し、2018年よりノベルクリスタルテクノロジー社と共同研究に取り組んでいます。しかし、酸化ガリウムは融点が約1800℃と非常に高温であるため、従来のるつぼ(容器)に試料を入れ溶融させる方法では、るつぼの不純物が混入してしまいます。そのため、酸化ガリウム単結晶製造時の数値シミュレーションに必要な、融液物性値の取得が困難でした。
JAXAの保有する静電浮遊炉*1は、微小重力状態で試料を浮遊させ、るつぼを用いずレーザーで試料を溶融するため、高融点材料の融液物性値を高精度で取得することが可能です。今回静電浮遊炉の有償利用制度を使用して実験を行い、融点を含む幅広い温度域での酸化ガリウムの融液密度に加え、粘性係数や表面張力などの融液物性値の取得に世界で初めて*2成功しました。今後は本データを用いて数値シミュレーションを行うことで、酸化ガリウム単結晶基板の高品質化・大口径化に向けた技術開発を加速するとともに、製造時の更なる歩留まり向上を目指します。なお本成果は2022年第69回応用物理学会春季学術講演会で発表予定です。
AGCグループは、中期経営計画 AGC plus-2023 のもと、エレクトロニクス事業を戦略事業のひとつと位置付けています。今後も大きな需要の伸びが見込まれる半導体関連事業に対し積極的な開発・投資を実施し、半導体産業の発展に貢献していきます。
*1 静電浮遊炉については下記URLをご参照ください
https://humans-in-space.jaxa.jp/kibouser/provide/elf/
*2 当社調べ

<ご参考>

■講演概要
1. 講演会名  2022年第69回応用物理学会春季学術講演会
2. 講演題目  国際宇宙ステーション「きぼう」静電浮遊炉における酸化ガリウムの融液物性測定
3. 開催地     青山学院大学 相模原キャンパス & オンライン(ハイブリッド開催)
4. 会期        2022年3月22(火)~26日(土)
5. URL        第69回応用物理学会春季学術講演会 (jsap.or.jp)
◎本件に関するお問い合わせ先:
AGC株式会社 広報・IR部長 小川 知香子
担当:北野
TEL: 03-3218-5603
E-mail: info-pr@agc.com