「PFAS」とは?種類と用途、規制などについて

フッ素原子を含む化学物質の一部である「PFAS」(*1)は、私たちの暮らしや産業の様々な場面で活用されています。
「PFOS」や「PFOA」など一部のPFASは、環境や人体への影響などが懸念され、
「特定PFAS」(*2)として現在は製造や使用が禁止されています。
一方で、「特定PFAS」以外のPFASは、現在も社会や科学技術の発展に大きく役立っています。
このページでは、PFASについて、種類や用途などの基本的な知識のほか、規制されているPFASと規制されていないPFASの違いなどについて説明します。

PFAS 最新トピック

2024年3月27日 特定PFASおよびPFHxSに関する記述を更新しました。
2024年2月16日 本ページの英語版を公開しました。

CONTENTS

01 PFASの基礎知識

PFASとは

「PFAS」とは、炭素とフッ素の原子を持つ化学物質(ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物)の総称です。薬品に強い、燃えにくい、電気を通さないなど多くの特徴を持つPFASは、暮らしや産業の様々な場面で活用されています。

PFASの種類

PFASには非常に多くの種類があり、その種類によって性質が違います(*3)。米国環境保護庁によると約12,000種類ものPFASがあるとされています(*4)。PFASのなかで、PFOS、PFOA、PFHxSの3種類は、自然や人体の中で分解されにくい、体外に排出されにくい、健康に悪影響を与えやすいといった性質が指摘されています。PFOS、PFOA、PFHxSは、日本国内での製造や使用が禁止されています(*5)。これら3種のPFASは、日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)において「特定PFAS」と定義されています(*6)。一部の報道などで“PFAS汚染”という言葉を耳にすることがありますが、正確には「特定PFAS」による汚染を指しています。

特定PFAS(PFOS、PFOA、PFHxS)の割合は約12,000分の3種類

02 PFASの用途

「特定PFAS」以外の大部分のPFASは、私たちの暮らしや産業の様々な場面で活用されています。炭素原子とフッ素原子の結びつきを持つPFASは、熱・薬品・紫外線に強い、水や油などの液体をはじく、粘着力が小さい、電気を通しにくい、光の屈折が少ないなどといった様々な性質をあわせ持ちます。こうした性質を持つPFASは、エネルギー・半導体・電気通信をはじめとする様々な分野で役立っています。例えば半導体では、基板となる材料に回路を焼き付けるためのフォトレジスト(感光材)、リチウムイオン電池ではプラス極・マイナス極を分ける材料(セパレーター)などで、なくてはならないものとして活用されています。

暮らしを支えるフッ素製品

複数の高機能性をあわせ持つフッ素製品は、
人々の暮らしを支えています

フッ素製品の特徴と一例

さらに今後は、水素社会の実現に必要な燃料電池の電極に使用する材料や、水から水素を取り出すための水電解装置に用いる材料として、PFASの活用が期待されています。また、5Gや6Gといった高速通信のための機材の電子基板やケーブルの材料においても、PFASの応用が期待されています。

次世代の産業分野で
高まるPFASへの期待

エネルギー分野
(水素の製造技術など)
輸送分野
(燃料電池など)
電子・電機・通信分野
(次世代通信など)

PFASは、今後、脱炭素社会やデジタル社会を実現するためには欠かせない物質と言えます。

03 PFASに関する様々な質問

Q1.
PFASの環境・
健康への影響は?

全てのPFASが環境・健康に悪影響を与えると結論付けられたわけではありません。約12,000種類ものPFASのうち、PFOS、PFOA、PFHxSの3種類の「特定PFAS」は、水に溶けやすい、自然や人体の中で分解されにくい、水道水などから体内に入った場合に排出されにくい、健康に影響を与えやすい、といった性質が示されています。「特定PFAS」は日本国内での製造や使用が禁止されています。

一方、現在製造されているPFASのうち大部分を占めるフッ素樹脂などは、現時点で科学的に危険性が指摘されていません。

Q2.
PFASに関する
規制やルールは?

現在、日本では、「特定PFAS」のうちPFOSやPFOAについて規制があります。PFOSについては、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)において2009年に規制対象となりました。POPs条約の締約国である日本においても2010年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)により、製造や製品への使用は禁止されています。またPFOAについても、2019年にPOPs条約で「原則禁止」とされ、国内においては2021年より、製造や製品への使用が禁止されています。

残る「特定PFAS」の1つであるPFHxSについても、2022年6月にPOPs条約の締約国会議において規制対象となることが決定し、化審法においても2024年2月1日から規制対象となりました。PFHxSは、現在のところ日本国内において製造が報告されていません(*7)

PFAS規制の歴史

Q3.
特定PFASに対する
これまでのAGCの対応は?

AGCは、「特定PFAS」3種のうち、過去にPFOSやPFHxSについては製造を行っておらず、残るPFOAの製造・販売は条約や国内の法令による規制に先立ち、2015年に終了しています。AGCは企業の社会的責任を果たすため、科学的根拠に基づき、事業活動で生じる環境負荷の最小化と製品を通じた環境影響の抑制に向け、取り組んでいます(*8)。これからもお客様や社会にとって不可欠なフッ素製品をAGCは責任をもって提供し続け、世界中の人々の暮らしを支えていきます。

TOPICS

  • 2024年3月27日
    「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の改正により、「PFHxS若しくはその異性体又はこれらの塩」が第一種特定化学物質に指定されたことに伴い、PFHxSに関する本ページの記述を更新しました。
  • 2024年3月27日
    特定PFASについての記述を追記しました。特定PFASの定義については日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)の「特定PFAS」(外部サイト)をご参照ください。
  • 2024年2月16日
    本ページの英語版を公開しました。
  • 2023年9月1日
    本ページを公開しました。
  1. PFAS等の略語の読み方は幾通りかある。代表的な読み方は以下の通り。
    PFAS → ピーファス PFOS → ピーフォス PFOA → ピーフォア PFHxS → ピーエフエイチエックスエス
  2. 特定PFAS ①基準:「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)で規制済みのもの、または、日本国内において「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)で第一種特定化学物質に指定されたもの ②対象物質:PFOA、PFOS、PFHxS
  3. 注目度の高いPFASとして、PFOA、PFNA、PFHpA、PFBA、PFPeA、PFHxA、PFDA、PFUnA、PFDoA、PFTrDA、PFTeDA、PFOS、PFBS、PFDS、PFNS、PDHpS、PFPeS、6:2FTOH、8:2FTOHなどがある。(2023年1月30日 環境省 PFASに対する総合戦略検討専門家会議(第1回)参考資料1「PFASの全体像について」および米国Interstate Technology & Regulatory Council(ITRC)の「PFAS — Per- and Polyfluoroalkyl Substances」参照)
  4. 米国環境保護庁「PFAS Master List of PFAS Substances」参照。このリストに世界中の研究者や規制当局が関心を持っているPFAS統合リストがあり12,034物質がリスト化されている(最終更新日:2021年8月10日)
  5. 本ページにおける「特定PFAS」の規制状況については、経済産業省「化審法対象物質一覧」および、2019年12月27日 環境省 有機フッ素化合物の評価に関する検討会(第1回) 資料3 「国内等の動向について」を参照
  6. 日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)「特定PFAS」(外部サイト)参照
  7. 2023年3月28日 環境省 PFASに対する総合戦略検討専門家会議(第2回) 資料3-3 「PFOS、PFOA以外のPFASの国内の製造状況等」。
  8. AGCグループ環境方針」参照。