Nov.15 2024
技術職は男性の仕事、工場は男性の職場。そんなイメージは過去の遺物になろうとしている。AGCでは2024年度新卒技術系採用の女性の割合が3割を超え、研究所でも工場でも、女性が増え、また活躍している。その背景には、女性の積極採用や活躍できる環境づくりなどの積み重ねがある。2017年には「女性活躍事務局」を設置し、制度整備だけでなく、女性活躍事務局と女性社員本人、上司の三者面談の実施、女性社員の横断的ネットワークの形成など、ソフト面でのサポートにも注力。働きやすい文化・風土を醸成してきた。2024年1月からは、「ジェンダーダイバーシティ事務局」と名称を変更し、次なるステージに向け、男性の育児休業の取得推進など、性別を問わず意欲の高い人財が働きやすい環境の整備を進めている。その感触を、実際に研究職・技術職として働く世代の異なる3人の女性社員に聞いた。
福峯 真弓
AGC 技術本部 材料融合研究所 無機材料部 粉体・電気化学チーム
吉野 有衣子
AGC 電子カンパニー アドバンストマテリアル事業部 ポリッシング部 品質保証Gr グループリーダー
田島 優衣
AGC 千葉工場 合成医薬千葉サイト 製造グループ
――皆さんは普段、どのような仕事をしているのでしょうか。また、AGCで働くことを選んだ理由を教えてください。
福峯氏 新しい素材を開発する材料融合研究所で、粉体・電気化学部門のチームリーダーをしています。AGCにはキャリア採用で2020年に入社しました。前職は有機化学系の会社で、学生時代の専攻は無機材料です。両分野の専門知識や経験を生かしながら企業や社会に貢献したいと考えたとき、AGCであればそれができるのではと思い転職しました。
吉野氏 私は2009年に入社した後、研究所に所属し、半導体用ポリッシング材のスラリーと呼ばれる無機材料の開発をしていました。そのスラリー量産化の立ち上げに参画した後は、品質保証を担当することになりました。品質保証の主な仕事は、品質に関わるお客さま対応、サプライチェーンを含めた製造プロセスの品質維持と改善、分析機器の立ち上げと管理です。現在はリーダーとしてこの仕事をしています。
田島氏 私は2018年入社です。現在は千葉工場で、医薬中間体の製造管理をしています。今年の2月までは、同じ千葉工場でフッ素系ポリマーであるガラス用コーティング剤など、機能性材料と呼ばれる化学品を担当していました。学生時代は基礎研究に近い領域を学んでいましたが、より最終製品に近い仕事をしたいと思い、化学メーカー、素材メーカーに絞って就職活動をしていました。AGCは、基礎化学品から機能化学品まで事業領域の幅が広いので、多彩な経験を積めるのではないかと思い入社を決めました。
吉野氏 事業の幅の広さは私も感じます。私が入社した当時の社名は旭硝子だったので、就活前はガラスの会社だと思っていました。ですが、調べてみると事業の幅が広いことが分かり、安定した既存事業で得た収益を積極的に新事業に投資するという両利きの経営も魅力的に映りました。企業説明会では、社内の活気、勢いも感じました。
田島氏 就活時は、どちらかというと仕事の内容にばかり関心が向いていて、働きやすさの部分は後回しになっていました。でも、AGCの説明会では若手の女性技術者の方が丁寧に説明してくれたこともあり、ここでならしっかりと働けそうだなと思えました。
AGC株式会社 技術本部 材料融合研究所
無機材料部 粉体・電気化学チーム
福峯 真弓氏
AGC株式会社 電子カンパニー アドバンストマテリアル事業部
ポリッシング部 品質保証Gr グループリーダー
吉野 有衣子氏
AGC株式会社 技術本部 材料融合研究所
千葉工場 合成医薬千葉サイト 製造グループ
田島 優衣氏
――AGCの職場の雰囲気や、どのような働き方をされているかについて教えてください。
福峯氏 転職してきて感じたのは「物事をよく考える人が多い会社だな」と。研究所ということもあってか、皆さん、原理原則に立ち返って考えることを大切にしています。
吉野氏 自由に意見を言え、その意見をちゃんと受け入れるという企業風土があります。こうした風土によって、もともとはあまり意見を言わないタイプの人も、積極的に発言するように変わっていくのを感じます。
田島氏 どのような家庭環境の人でも、誰もが安心して長く働ける職場ではないかと感じます。工場は比較的男性社員が多い職場ですが、働きにくいと感じたことはありません。周りには産休と育休を経て復帰した女性社員もいれば、お子さんの都合で早退する男性社員もいて、それが普通に受け入れられています。
福峯氏 育休などの制度は男性も含め皆さんが当たり前に使っていますね。私は子供が中学生で、子育ては以前に比べるとだいぶ楽になってきましたが、必要な時は在宅で仕事をし、子供の行事がある時には2時間中抜けするというようなこともあります。
吉野氏 私はまだ子供が小さいので、朝、保育園に送り届けてから出社しています。出社が遅くなる分、会社で使える時間が限られるため、仕事は優先順位の高いものから効率的に取り組むことを意識しています。品質保証の仕事は少し目を離しただけでタスクが溜まっていってしまうので、もともとそうした仕事のスタイルだったのですが、子育てをするようになって、より一層、優先順位と効率を意識するようになりました。
実際の業務風景。デスクワークや現場検証、実験作業の確認など(左から吉野氏、田島氏、福峯氏)
――ご自身の成長を感じたのはどんな時ですか?
福峯氏 キャリア採用でAGCに入ってから、毎年のように全社プロジェクトにアサインしていただきました。早く自社の事業領域・技術領域を理解し、横のつながりをつくってほしいという会社からのメッセージであり、期待の表れとありがたく思っています。ただ最初の頃は、初めて聞く社内用語も多く、戸惑うこともありました。ですが、周囲の人たちの助けを借りながら用語集を自作し、自社の事業領域・技術領域を少しずつ理解していくことができました。こうした経験はAGCを知るために必要でしたし、結果的に視野を広げることができ、研究分野への理解も深まりました。
吉野氏 私は、量産化に向けたプロジェクトが強く印象に残っています。当時、新製品の量産化は約10年ぶりで、プラントの立ち上げなど量産化に必要な実務を経験した人がほとんどいませんでした。一方で、お客さまからは「すぐに欲しい」とご要望をいただいていたため、短期間のうちに未経験のプロジェクトをやり遂げる必要が出てきました。「これでいく」と自らが決断しなければならないこともありましたし、社内外の関係各所との調整にも追われましたが、無事に立ち上げに成功しました。知識も得られ、関係者とも良好な関係を築くことができました。
田島氏 新品種の製造を始めるにあたって、新しい設備の設置や既存設備の改造などの、設備投資のプロジェクト業務を担当しました。製造方法がまだ検討段階のうちに設備増強に動き出したため、柔軟に対応できる機器の選定が必要で、他にも限られたスペースでの機器レイアウト検討、お客さまへの出荷日から逆算したスケジュールの下での各種法対応申請や機器発注など、幅広い業務を進める必要がありました。施設部門や開発などの他部署の人と相談しながら、ダイナミックで目に見えて形に残る仕事ができて、とてもいい経験になりました。
――技術職・研究職で働く上で、女性であることにハードルはあるのでしょうか。
福峯氏 用意されている研修メニューなどを見ると、AGCが女性に多くの機会を与えようとしているのが伝わってきます。技術職・研究職はまだ男性が過半数を占めているからでしょう。しかし、機会を与えてもらった先には、男女の違いはないと感じています。実際に、上の方々を見ると男性も女性も“仕事ができる人”が順当に役職に就いていると思います。かつては、女性のロールモデルにならなければならない、そのためには男性以上に働かなければならないというプレッシャーも感じていたのですが、AGCにはすでに前例として、仕事を評価され担う役割を大きくしている女性がいます。その存在にはとても勇気づけられますし、私自身はまだまだですが、その後に続くことができればと思います。
吉野氏 私は目下、所属ビジネスユニットの品質保証の体制をしっかりと固めたいと考えているのですが、そのためには、より効率化するといった業務面の改善や、グループのメンバーが行き詰まっていればフォローするといった働きも必要です。こうした仕事やそのための思考方法に、女性固有のハードルがあると感じたことはありません。ですから、技術職に興味があり、やってみたいと思う人は挑戦した方がいいと思います。
福峯氏 女性は理系や技術職に向かないといわれていた時期もありましたが、私自身は周りを見てもそのように感じたことはありません。逆に男性だから理系職でなければ、ということもないと思います。色々な選択肢があると思います。私は2人の娘たちから「お母さんみたいになりたい」と思ってもらえることが目標ですが、それは理系に進んでもらいたいとかではなく、好きなことを仕事として選ぶという意味においてです。
――これからAGCで挑戦してみたいことを教えてください。
田島氏 これまで経験を積んできた化学や医薬品の分野で、より規模の大きなプロジェクトにプロセスエンジニアとして関わっていきたいです。
吉野氏 部署全体のビジネスを理解するために、新しい分野の知識を身に付けたり、まだ経験できていない仕事にも挑戦してみたいです。
福峯氏 素材というのは新たに生み出すのがとても難しいのですが、生まれさえすれば、様々な用途に展開でき、その結果、世の中を大きく変えることができます。2030年、2040年を見据えた新しい素材の創出に取り組み、「この開発に携わりました」と胸を張れる未来を目指したいです。
※部署名・肩書は取材当時のものです