協創事例

AGCは祖業のガラスに加え、電子・化学品・セラミックスなど多彩な事業を展開する素材メーカーです。創業から110年以上にわたり、各分野で培った多様な技術を組み合わせ、時代のリーディングカンパニーと共に人々の生活に新たな機能や価値を提供し続けてきました。 社会の変化のスピードがますます速くなり、素材開発にもスピードの加速が求められています。AOを拠点に社外との協創により新たな価値を創造し続けます。

事例4:アーティスト 井村一登 × AGC

AGCの新たな可能性を拓くAO Galleryの2作目となる今回の展示では、協創パートナーに井村一登氏を迎えました。アーティストの視点を借りて普段とは異なる見方でAGCの素材を捉えてみることで、素材の新たな価値に気付き創発のきっかけを得ることを期待しています。
井村氏は、東京藝術大学在籍時の2015年から、鏡をテーマに制作を行っています。水、黒曜石、魔鏡といった鏡にまつわる多様な素材やモティーフで作品を発表してきた井村氏にとって、まだ出会ったことのない素材や加工技術を想像し、実験を繰り返すことが制作過程の大きな割合を占めます。素材選定の段階で独自の知識/技術/施設を持つ企業や研究所と協働し、新たな表現を生み出してきた井村氏は、本展において、ミラーディスプレイ、光散乱ガラスや3D曲面ガラスなどAGCの素材・技術を用いて、ガラスによる表現の可能性を探求しました。
地球環境に考慮し、AGCグループの廃材を用いながら人々に感動を与え心の豊かさに通じる価値を生み出す、ガラスのアップサイクルに挑戦しました。クリエイティブな思考が素材の可能性を拡張し、サステナブルな社会につながる素材の未来を表現しています。

AO Gallery Exhibition #2 “xnumx(ナンバー)”

個展タイトル「xnumx」は、デジタルデバイスで数字のコピー&ペーストエラーを示します。「ナンバー」と作家が呼ぶこのエラー表示は、把握が追いつかない増殖に囲まれた状況を表すとともに、AGCが研究/開発/生産を経て工場で素材を量産する様をアーティストが翻訳した未知の/解読不能な結果をも意味します。AGCの素材・技術がアーティストの視点で生まれ変わった作品をぜひご覧ください。
鏡をモティーフに制作を続けてきた井村氏は、100%の反射率は物理的に存在しなく「完全なる反射」=増殖(例えば、mRNAによる遺伝情報の転写)であると捉えています。本展示では、デジタル情報を加速度的に「増殖」させることを可能とするAGCのミラーディスプレイによって、作家が追い求めてきた「完全なる反射」を新作《pure reflection》として実現しました。

井村一登
1990年京都市生まれ。2017年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。ハーフミラー、球体鏡、LED などを用いて視覚や認識にかかわる光学的作品を手がける。近年は、鏡の歴史とルッキズムに関心を寄せ、鏡の素材・技法を再構成し「自分が映らない」鏡を制作している。主な展覧会に2021年「井村一登 展 mirrorrim」 (日本橋三越本店コンテンポラリーギャラリー/2021年)、「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島 2021」(猿島)、「マツモト建築芸術祭」(まつもと市民芸術館、松本市/2022年)