資源の有効利用

限りある資源すべての循環ループの構築に挑戦

資源は地球からの贈り物であり、すべて有限です。大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした「直線型経済」から脱却し、資源の価値を可能な限り長く維持するために廃棄物の発生を最小限にする「循環経済」への転換が求められています。

AGCグループでは、限りある資源を有効利⽤するため、製品の原材料をはじめ、⽣産プロセスで使⽤するエネルギーや⽔に⾄るまで、トータルな資源の循環ループを構築することに挑戦しています。資源の有効利⽤にとって効果的なのは、製品に使⽤するバージン原料(天然資源をもとに作られる原料)の使⽤量を減らし、リサイクル原料⽐率を⾼めることです。AGCグループでは、ガラスなどのリサイクル技術の開発に取り組んでいます。また、AGCグループが開発した超断熱セラミックス炉壁「サーモテクトウォール®」は、ガラス⽣産⼯程での省エネを実現した炉壁製品です。鉄鋼、セメント、環境分野などエネルギー多消費型の様々な産業分野での応⽤を進めています。

事業の全フェーズで資源循環を目指して

AGCグループは、限りある資源・エネルギーを有効に使い、再⽣資源の活⽤を進めることを通じて新たな資源の使⽤量削減を推進しています。その取り組みのひとつとして、梱包材を含む資源⽣産性(※2)の向上や資源を最⼤限に循環利⽤することに努めています。基本的な環境活動として推進してきた廃棄物の3R(Reduce、Reuse、Recycle)を深化させ、事業の全フェーズでの資源循環の構築を目指し、リサイクル原料使用⽐率を引き上げていきます。また、⽔使⽤量の削減、⽔質汚染の防⽌、製品ライフサイクルにおける⽔使⽤量の開⽰なども⾏っています。

※2 資源がどれだけ有効に利用されているかを総合的に表す指標。自然資源やエネルギーが使われた量と、それによって作り出された生産量や経済価値の比率で求められる。

資源の循環ループの考え方

具体的な取り組み

⼯業炉向け超断熱セラミックス炉壁「サーモテクトウォール®」は、2015年度の省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞(ビジネスモデル分野)を受賞。環境保護に貢献する同製品の販路拡大に取り組んできた従業員の挑戦を紹介します。

資源の有効利用

工業炉の省エネと環境改善に貢献する「サーモテクトウォール®」(以下「サーモテクトウォール」)は、2015年度の省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞(ビジネスモデル分野)を受賞。お客様の設備や操業条件・ニーズに合わせた提案が進められてきました。環境保護に貢献する同製品の販路拡大に取り組んできた従業員から、その想いや今後の展望を聞きました。

省エネ効果と環境への配慮から、工業炉の安全性、運用コストダウンを実現

「サーモテクトウォール」
Pick Up

超断熱セラミックス炉壁「サーモテクトウォール」は、高断熱不定形耐火物「サーモテクト」の多層化構造により構成され、最高使用温度1700℃までの高温域で使用できる高断熱性と高耐熱性をあわせ持ちます。AGCが自社開発した特殊原料の活用により実現しました。
「サーモテクトウォール」はリフラクトリーセラミックスファイバー(以下 RCF)※を一切含まないため、築炉・解体作業時の作業者の衛生環境の向上にもつながっています。従来RCFが適用できなかった物理的・化学的損傷域にも使用できるメリットがあります。各種工業炉の使用条件に応じて最適設計する省エネソリューションのビジネスモデルが認められ、2015年度には、一般社団法人省エネルギーセンター主催(後援・経済産業省)の省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞(ビジネスモデル分野)を受賞しました。

※ 健康被害を生じさせるおそれのある物質であることから、2015年11月に特化管理第二類物質に指定

サーモテクトウォール

高い省エネ性能と環境安全性により、工業炉のコストダウンに貢献。高断熱性と高耐熱性を兼ね備え、金属溶解炉などでも使用できます。

資源の有効利用への対応に挑む
AGCグループ従業員の想い

高原 喜大
Interview高原 喜大

AGCセラミックス株式会社 経営戦略室 マネージャー

環境・健康意識の高まりから「サーモテクトウォール」開発へ

AGCセラミックスは、「Earth Saving」をテーマに掲げ、地球環境保護、省エネに貢献するソリューション開発を全社的に進めています。「サーモテクトウォール」の前身であり構成製品である、高断熱性・高耐熱性を有する「サーモテクト」は、2008年頃から開発が始まり、2010年に正式に販売開始となりました。開発の背景には、弊社製造工程で発生する廃材をリサイクル原料として活用できないかという課題意識がありました。

上市した当初は製品数も少なく、適用できる用途も限定的でしたが、その後もマーケティング、製品開発を継続。一方、外部環境の大きな変化として、RCF規制が、2015年11月に施行されることとなり、RCFを含まず、環境・健康にやさしい「サーモテクト」のニーズがさらに高まりました。このような環境変化を捉え、社会課題の解決に貢献するソリューションとして、「サーモテクト」のコンセプトを発展させ、2013年に「サーモテクトウォール」を上市することになりました。私はサーモテクトの上市・立ち上げからプロジェクトに参画し、営業のリーダーとして戦略構築に携わってきました。現在は、耐火物市場のマーケティングや営業に従事しています。

提案通りの成果を提供。お客様からの信用につなげる

「サーモテクト」が生まれた当時、お客様が耐火物に期待するものは「価格」「耐久性」であり、耐火物で省エネを期待するお客様は極めて限定的でした。「サーモテクト」は特殊原料を使用することから、一般的な耐火物よりも製品価格が高く設定されています。省エネ性という付加価値を提案しても、興味は持っていただけるのですが、採用に至ることはほとんどありませんでした。今までにない製品コンセプトをご理解いただく大変さ、産みの苦しみを実感しました。

そんな中でも、私たちは「この製品は必ず、お客様、社会に役立つんだ」という強い想いを持っていました。環境意識の高いお客様へのターゲティングの見直しを図り、提案内容にも工夫を凝らしました。定性的なことだけではなく、CO2発生量削減効果や燃料使用量・燃料費削減効果を具体的な数字として示すなど、様々な定量データを加えた資料も作成。そうした取り組みを重ねたことで、徐々に採用件数が増えていきました。ご活用いただいたお客様に、提案した通りの成果を実感いただけると、リピート注文も増えていく。そんな好循環が生まれていきました。2015年に省エネ大賞も受賞するなど、私たちの地道な努力を評価いただけたことが、とてもうれしかったです。

「サーモテクトウォール」を世の中に広げ、環境保護への貢献度を高めたい

「サーモテクトウォール」を世の中に広げ、環境保護への貢献度を高めたい

「サーモテクト」および「サーモテクトウォール」は、まだまだ世の中に広く普及している状況とは言えません。ただ、ご採用いただいているお客様には、従来の耐火物では得られなかった高い省エネ性能、CO2削減、環境負荷低減などの価値を提供できていると実感しています。昨今は、カーボンニュートラル実現への取り組みなど、社会の環境意識はさらに高まっています。「サーモテクトウォール」の価値提供できる場はどんどん広がっていき、販売の拡大とともに、地球環境保護への貢献度も強くなっていくでしょう。未来への期待を込めて、これまで以上にプロモーション活動を進めていきたいです。

新たなソリューションを生み出し、豊かな暮らしを支える社会をつくる

「サーモテクトウォール」を含む耐火物製品は、CO2を排出する高温プラントに使用されています。ただ、これからは、化石燃料からCO2フリーな燃料に転換する方向で進んでおり、その過程の中で耐火物に求められる特性・要求も変化していく可能性が高いでしょう。

このような社会の変化、お客様のニーズに応じ、「新サーモテクトウォール」を生み出していく可能性も大きくなっています。あるいは、社会的な課題を解決する全く別のコンセプトのソリューションが誕生するかもしれません。私たちの生活がどう変わっていこうと、いつの時代も、人が豊かに、安心して、笑顔で暮らせる持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。