健康・長寿社会
への対応

病気の予防や治療に欠かすことのできない医薬品の製造、製造プロセス技術の開発を受託・代行するCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託)事業。AGCは、グローバルなCDMOとして最先端の医薬品開発を手がけ、今後の成長領域へと挑戦を重ねています。デンマークにおけるCDMOの拠点であるAGCバイオロジクスの従業員に、これまでの取り組みと今後のビジョンについて話を聞きました。

世界をリードするCDMOとして、医薬品を必要とする人のもとに届け続ける

AGCのCDMOビジネスの特徴と広がり
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日本を主要拠点とする数少ないグローバルCDMOであるAGC。⽇⽶欧3極の統合的な運営で、高いレベルのcGMP(current Good Manufacturing Practice)の品質基準に準拠した⽣産体制のもと、治験から商⽤までを一貫して行っています。
また、事業拠点間でのシームレスな技術移転も行っています。 特定のニーズに合わせて製造の場所とタイミングを提案し、微生物および動物細胞、プラスミドDNA(pDNA)、細胞および遺伝子治療の開発および製造を含む幅広いサービスに取り組んでいます。

Interviewアンドレア・シーリア・ポルキア

AGCバイオロジクス(デンマーク) ゼネラルマネージャー&サイト長 CPHサイト サイト長

これまで培ってきた技術を応用し、医薬品の治験・商用生産に着手

AGCは世界をリードするCDMO企業として、医薬品のもととなる「原薬」「中間体」などの開発・製造を行っています。製薬会社やバイオベンチャーのパートナーとして、治験や商用化に向けた開発・製造を受託し、医薬品を人々の手元に届けるまでの重要な役割を担っています。

AGCのコア事業はガラス・化学事業であり、「なぜライフサイエンス事業なのか?」と疑問に思う人もいるかもしれません。世界では医療の高度化により、医薬品ニーズがますます多様になっています。AGCのさらなる成長戦略として、培ってきた技術開発力を医薬分野で活かせるのではないか。そんな考えから、AGCの持つフッ素化技術の応用に着手し、ライフサイエンス事業への進出、注力が始まりました。

その後、バイオ医薬品や細胞・遺伝子治療へと事業領域を拡大。今では、動物細胞および微生物ベースの治療用タンパク質、プラスミドDNA、ウイルスベクター、および遺伝子組換え細胞の開発と製造も行っています。
AGCのCDMOビジネスのネットワークは、欧州、アメリカ、アジアにまたがり、現在では世界中で約2,500人のメンバーが事業に携わっています。

新たなモダリティに応える、新たな製造プロセスの開発がますます重要に

医薬品におけるCDMOは、その開発から製造までのプロセスを受託する重要な役割を果たしています。なかでもAGCの強みは、動物細胞と微生物細胞の両方からタンパク質を産生する技術を有していることにあります。欧州のCDMO企業の買収などにより最先端技術を導入し、AGC内でバイオ医薬品の開発・製造プロセスを構築してきました。

製薬業界では、細胞治療、遺伝子治療、mRNA治療などの新しいモダリティ(創薬技術・手法)が常に生み出されています。それに応えるための新たな製造プロセスも常に必要とされ、私たちへの期待も高まっています。製薬ビジネスのより幅広い分野をカバーすることで、AGCはイノベーションのリーダーになることを目指しています。

デンマークのコペンハーゲンにあるAGCバイオロジクスのオフィス

新型コロナウイルスのワクチン開発にも貢献

AGCは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の阻止に向け、ワクチンおよび治療薬の開発と製造をサポートしてきました。例えば、ノババックス社が開発したワクチン候補である「NVX-CoV2373」の薬効を高める成分であるアジュバント医薬品の製造を請け負いました。 また、ドイツのBioNTech社から「Pfizer-BioNTech COVID-19ワクチン」の原料であるプラスミドDNAの製造を受託しています。

世界中にいち早くワクチンを届けるには、ワクチン開発の成功はもちろん、その後の量産体制の設計が不可欠です。AGCはワクチン量産に必要な設備を世界中に有しています。また、パンデミックは当社のサプライチェーンシステムにも悪影響を与えましたが、予定されているすべての原薬(API)材料の確保、および商用プロジェクトのための安全な在庫を確保するために、グローバル規模による継続的な委員会を立ち上げて解決に臨んだため、コロナとの闘いに大きく貢献することができたのです。

CDMOが、次なる治療イノベーションを起こすリーダーに

CDMOは、今日の医薬品の開発と製造において中心的な役割を果たしています。外部委託を担うCDMOが、開発、製造、製剤化、仕上げなど、プロセスのすべての段階で製薬会社をサポートします。なかでもAGCは、薬効成分の開発・製造に貢献しています。

私たちは、CDMOがオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の領域で次の治療イノベーションを開発するリーダーとなり得ると考えています。開発および治験や商業段階へのスケールアップにおける豊富な科学的経験を持つ開発・製造受託企業は、希少疾病を治療するためのより多くのイノベーションを生み出すのに貢献できる立場にあると思います。

今後、オーファンドラッグの領域で成功を収めたい開発者や製薬会社は、歴史的な専門知識を持ち、エンドツーエンドの臨床・商業製造サービスや、革新的なオーファンドラッグを市場に送り出すために必要な最新の材料(pDNA、mRNA)を提供できるAGCバイオロジクスのようなCDMOに注目する必要があるでしょう。

商用プロセスのスピードアップがCDMO成長のカギ

商業プロセスの製造と実行において、さらなるスピードアップが求められています。そして、製造業のデジタル化は、効率と生産性の向上を可能にする製造プロセスの進歩における重要なステップです。CDMOは、プロセスの多様性により複雑性が高いため、プロセスのデジタル化を実施する際に柔軟性を維持することが、業界特有の課題となっています。このような課題に対処するための専門知識を持つことは、CDMOに携わる人々にとって非常に重要です。

また、CDMOを成功させるためには、必要な時に必要な場所に、持続的に製品を供給しなければなりません。供給する市場の規制要件や顧客の期待に応え、それを適正な価格で実現する必要もあります。私たちは、そのために生産性と効率を大幅に向上させ、製薬会社の原価や適正な利益を考えながら、さらなる競争力を身につけなくてはなりません。

生産性と効率性を大幅に向上させるためには、「リーンシックスシグマ」(業務効率化を図る手法のひとつ)による無駄の排除と品質のばらつきの低減、費用対効果の高い技術の活用、効率性と生産性を大幅に向上させる生産能力の活用など、ベストインクラス(画期的医薬品)の開発・製造手法を導入する必要があると考えています。

AGCグループのCDMOをさらに成長させるために
Possibility